好意を寄せる夢遊病のルームメイトを介抱するうちに、二人の間に生まれる言葉にできない感情。すごい、めちゃくちゃロマンチックで美しい……！ ラブロマンスともブロマンスとも言い難い掴みどころの無いストーリーにどんどんのめり込んでしまって、不思議と温かな気持ちになっている。フィルム調の温かみのある質感も堪らないな。

ブリリア ショートショートシアター オンライン：Nov. 19, 2025 PRIZE。
夢遊病が題材。
この月はLGBTQの特集なので、“スイッチが入った瞬間”を描いたってこと？

ケア映画の新地平

どうしてもケアは親子愛やパートナーとの恋/性愛などと不可分に語られることが多い。
しかし本作は、主人公の少年が寄宿学校の寮で同室になり、夢遊病で夜な夜な徘徊するようになってしまったジュリアンに対してどのようにケアできるかが語られており、ケア映画の新たな境地を目撃したように思える。

以下、ネタバレを含みます。

恋/性愛に結びつかないからこそ、眼差しを向ける≒配慮することの不快ーそれは愛に傾倒する危うさがあるからーが語られることになるし、当然のようにジュリアンは主人公の少年のケアを無視して、女の子を連れ込む。

しかしこのようなケアを取り巻く問題ーケアの非対称性に起因する献身の不利益、無視などーは、どのような関係性にも孕んでいることであり、逆説的に本作が普遍性を獲得している証左でもある。

映像表現としても優れており、「眠る」という運動を停止するアクションが、夢遊病と風や雪という気候と相まってドラマと化しているし、少年の寄り添いとジュリアンの「送り返し」は彼らがケアを相互に行う関係へと変化したことを物語っている。

夢遊病に対して動揺するジュリアンもよかったな。
間違っても本作をBL映画として解釈/消費してはならない。

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