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君の見る世界をなぞるの作品紹介

君の見る世界をなぞるのあらすじ

南仏の裕福な家庭で育った16歳のエンゾは、学校に馴染めず、建築現場で働いている。そこで出会ったウクライナ出身の青年ヴラドに心を寄せるが、彼は兵役で戦争へと向かわねばならない。家族に対する葛藤、将来への不安、大切な人が奪われる戦争の現実。自分の感情を制御できぬまま、エンゾが過ごす夏は静かに流れていく。

君の見る世界をなぞるの監督

ロバン・カンピヨ

原題
Enzo
製作年
2025年
製作国・地域
フランスベルギーイタリア
上映時間
102分
ジャンル
ドラマ
配給会社
樂舎

『君の見る世界をなぞる』に投稿された感想・評価

kuu
3.6
『君の見る世界をなぞる』 
原題または英題 Enzo
製作年 2025年。上映時間 102分。
映倫区分 PG12
製作国 フランス・ベルギー・イタリア合作

陽光降り注ぐ南フランスを舞台に、現代という複雑な時代に生きる思春期の少年の葛藤と恋をみずみずしくつづった青春ドラマ。

多感な16歳という不安定な季節に差し掛かった少年が、自らの立ち位置を模索しながら、社会の静かな断層へと足を踏み入れてゆく。何不自由ない日常に覚える息苦しさや、既存の枠組みから少しずつ踏み外していく少年の葛藤は、けっして彼だけの特別な病理じゃない。日常のすぐ裏側に潜む歪みや階級の隔たり、そして遠い空の下で蠢く悲劇の影。それらの無慈悲な線引きが、一人の青年の純粋な憧憬や揺れる恋心と重なり合い、逃れようのない現実の輪郭を優しく、けどくっきりと浮き彫りにしてゆく。
 
物語の向こう側に刻まれた背景もまた、この物語に深い重厚感をもたらしています。生前に構想を温めていた巨匠の意志を深く汲み取り、固い絆で結ばれた盟友がその足跡をそっとなぞるようにして命を吹き込んだ過程は、作品そのものが抱く継承というテーマと美しく響き合っています。ドキュメンタリー調のリアリズムで表現者たちの剥き出しの存在感を捉える手腕や、画面全体に漂う静かな熱量は、実に見事なものでした。
 
物語の舞台となる建築現場は、単なる労働の場を超えて、極めて多層的なメタファーとして息づいているんじゃないかな。鉄骨が剥き出しになり、絶えず組み替えられていく未完成の空間は、まだ自らの形を定められずにあがく青年の脆い心そのもの。けれどそれと同時に、その現場は冷酷な階級社会の小さな姿でもある。国籍や貧富の差によって見えない壁が築かれ、個人の力では逃れられない不条理な構造が静かに建設されていく過程を、その無機質な空間は冷徹に示している。
 
エンゾがヴラドと云う他者に抱く憧れや揺れる感情は、単なる初恋や思春期の衝動にとどまらない。恵まれた環境に生を受けながらも満たされない青年が、己の殻を打ち破り、自分以外の誰かの世界をなぞることでしか自らの存在証明を獲得できないと云う、切実な自己探求のプロセス。彼が追いかける他者の眼差しは、あまりに安全すぎた世界から飛び出し、痛みを伴う確かな現実へとつながるための、かけがえのない架け橋として機能してました。
 
物語の起伏がどこまでも淡々としており、特定の登場人物の心情描写において踏み込み不足を感じる面があるのも確かで、劇的なカタルシスや解かりやすい救済を期待すると、その静けさに物足りなさを覚えるかもしれない。しかし、その答えを安易に出さない余白こそが、強い余韻を残す。曖昧な感情の揺揺や答えのない不条理を誤魔化さず、未完成のまま提示する誠実さこそが本作の真骨頂と云えます。
 
他者の視線を追いかけ、その人物が見ているであろう世界を自らの肌で体感しようとする少年の姿は、あまりにも切なく、そして眩しい。冷酷な社会構造という不可避な壁に突き当たりながらも、自らを誰かの世界へと重ね合わせようとする一瞬の煌めきは、移ろいやすい青春の普遍的な美しさを力強く物語っている。


南フランスの裕福な家庭に育った16歳のエンゾ。学校になじめず建築現場で働く彼は、そこで出会ったウクライナ出身の青年ヴラドに心を寄せるが、彼は兵役のため戦争へ行かなければならない。順調な日々を過ごす家族に対する不信感、将来への不安、そして親しい人が奪われていく戦争の現実。自分の感情を制御できないまま、エンゾが過ごす夏は静かに流れていく。

もとは「パリ20区、僕たちのクラス」のローラン・カンテ監督が立ち上げた企画だったが、がん闘病中だったカンテ監督が2024年に逝去したことから、彼の盟友で「BPM ビート・パー・ミニット」で知られるロバン・カンピヨ監督が遺志を継ぎ完成させた。元競泳選手である新人俳優エロワ・ポユが主人公エンゾの心の揺らぎを繊細に演じ、エンゾの両親役で「シチリアーノ 裏切りの美学」のピエルフランチェスコ・ファビーノと「天使が見た夢」のエロディ・ブシェーズが共演。エンゾが淡い憧れを抱く労働者ヴラド役には、実際に建築現場で働いていたアマチュア俳優マクシム・スリビンスキーを起用した。
第78回カンヌ国際映画祭監督週間オープニング作品
ローラン・カンテ監督が逝去された後、盟友のロバン・カンピヨ監督が映像化した作品。

南フランスに住む16歳の主人公・エンゾは、裕福な家庭で生活しているが、馴染めず、建設現場で働いている。そこで出会った、ウクライナ移民のヴラドに出会い惹かれる物語。
思春期の淡い恋心は、繊細に描かれていて、好感ですが、それだけでなく、富裕層である家族と自分、社会とのギャップに悩む姿も描かれている。
少し気になるのは、ウクライナ問題を絡めている点。
戦争地域と非戦争国とのギャップをみせるのは理解できますが、設定に無理を感じてしまう。隣接するポーランドやルーマニア、せめてドイツならリアリティを感じますが、なぜ南フランスとの組み合わせなのかに疑問が残ってしまった。『ハワの手習い』の時は、監督自身がフランスとの繋がりがあって事情が理解できましたが。。
2026年8月22日@京都シネマ
3.9
極端に言うと胸毛に目覚めちゃった話。とにかく画面一面を覆うほどの胸毛がすごい。フランスらしい超自然主義。なぜが途中からゲイ要素入っていたけど安易な美しき青春クィア映画を期待して観ると、完全に火傷する。南仏マルセイユの眩しすぎる太陽の下で描かれる美しくも全然甘ったるくない超絶リアルな16歳の少年エンゾの、思春期の迷走と崩壊を、まるでドキュメンタリーのように生々しく切り取った強烈な一本。
まず主演2人の存在感はすごい。演技未経験とは信じられない。特にウクライナ人労働者・ヴラドの瞳は、初期のポール・ニューマンを彷彿とさせる圧倒的な引力がある。
「期待外れ」と怒る声が出るほどのリアルな筋書きだがフランス映画好きからしたら期待通り。誇張や幻想がまったくないリアルを描き切った点が大変好感。本作には分かりやすい劇的な展開や、甘いキスシーンすら一切ない。パッションの矛先は「暴力」や「自傷」に向かい、性的マイノリティの物語を期待した層からは「釣りだ」と批判されるほどの泥臭さがある。
圧倒的映像美と息苦しさのコントラストが絶妙。絵画のように美しい南仏の景色の中で、恵まれた家族から孤立し、建設現場で精神をすり減らしていく少年の姿がエグいほど刺さる。
ロバン・カンピヨ監督の過去作『BPM プロミス・ドゥ・ザ・ライフ』ほどの完璧なまとまりや、カタルシスのある結末はないかもしれない。でも、この「答えの出ない痛々しさ」は、かつて自分が何者か分からずにもがいていた”あの頃”の記憶を、容赦なくえぐってくる。綺麗に整えられたフィクションではなく、誰かの人生を覗き見してしまったような、静かで深い余韻が残る映画。大変得意な作品でした。#君の見る世界をなぞる

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