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メフィスト
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『メフィスト』に投稿された感想・評価

["ただの役者"という絶望、ブランダウアー三部作①] 60点

主演のクラウス・マリア・ブランダウアーの名を冠したトリロジーの幕開けを飾る本作品は一昔前まではアカデミー外国語映画賞を受賞した唯一のハンガリー映画だった。それによって英語圏で最も知られたハンガリー映画の一つとなり、権威に弱い日本に上陸したのは想像の通りだが、そのままテレビで何度か放映された後そっ閉じされてしまった。理由は簡単に分かる。本作品が非常に退屈な文芸映画だからだ。

本作品はグスタフ・グリュンドゲンスという実在の俳優をモデルにトーマス・マンの息子クラウスが書き上げた同名小説を元に製作された。主人公ヘンドリックは共産主義的な考えを持っていたが、自らの自己顕示欲と権力欲に溺れた彼はリベラリストの義父を頼ってベルリン国立劇場に呼ばれることになり、そこで彼は『ファウスト』に登場するメフィストフェレス=メフィストを演じて喝采を浴びる。ヘンドリックの前では共産主義的な考えは自己顕示欲に負け、ナチスに取り入って遂にはベルリン国立劇場の総監督に就任する。

しかし、彼が純粋な自己顕示欲の権化であったかと言われるとそういうわけでもなく、役者も一人の人間でありその軸を中心に様々な仮面を付けて役柄に化けることで時代に依らず人の心を動かせると思っている節がある。つまり自分が見せるものを皆も見たいと考えていたようだ。こうして自己欺瞞まで獲得していたヘンドリックは自身がメフィストであるかのように州首相(プロイセン州首相ということはゲーリングか)に取り入り、ハムレットを用いて第三帝国を礼賛する。どう考えても州首相がメフィストであり、第三帝国に魂を売り渡すヘンドリックはファウストの側であるのだが本人がそれに気が付くのはだいぶ先になる。

ナチスに魂を売り渡したヘンドリックは、それでも自分は"表現者"であると考えていたようだが、彼が被る"役柄"という仮面の下にヘンドリックという人間は存在せず、仮面がヘンドリックそのものになってしまうことに気が付かなかった。その時点で彼は"表現者"ではなく"体現者"となり、自分を見失った"第三帝国の記号"でしかなくなってしまった。そして、仮面が自分そのものになったと気がついたとき、彼は"自分は役者でしか無い"という事実を認識せざるを得なくなる。大光量のスポットライトを浴びて追い詰められたヘンドリックが呟くこの小さな言葉が彼の心を一瞬で食い尽くした絶望なんだろう。

良くも悪くも非常に真面目な映画だった。確かに賞レースには向いてるが。
Omizu
3.5
【第54回アカデミー賞 外国語映画賞受賞】
『太陽の雫』『華麗なる恋の舞台で』などのサボー・イシュトヴァーン監督作品。カンヌ映画祭で脚本賞を受賞、アカデミー賞では前年の『コンフィデンス/信頼』に続き二年連続で外国語映画賞にノミネートされ受賞を果たした。

メフィストを当たり役とした役者ヘンドリック・ヘーフゲンが、当時台頭してきたナチスに巻き込まれていく様を描いている。

ヘンドリックのモデルはグスタフ・グリュンドゲンスという実在の役者で、映画と同じくメフィストを得意とした。しかしナチスの高官ゲーリングがパトロンとなっていたことで汚名を残している。

イシュトヴァーンの美学溢れる壮麗な世界観、そしてナチスが台頭してくる不穏なドイツ国内をダークに描いている。

ナチスに迎合して地位を保つか、自由のために亡命するか。いくらでも逃げるチャンスはあったのに、あまりに自己顕示欲が強すぎるが故に迎合していってしまう。

ヘンドリックはゲーリングに幾度も「メフィスト」と呼ばれる。出世欲の固まりであるヘンドリックもメフィストだが、彼を好き勝手に扱うナチスのナンバー2ゲーリングもメフィストである。

ヘンドリックは最後に「彼らは何を求めている?俺はただの役者なのに」と言う。彼自身悪魔のように振る舞っていたが、結局はただの操り人形であることに気付いてしまう。

メフィストという古典を取り込みつつ、一人の役者がズブズブとナチスの沼にはまり込んでいく様子をじっくりと描いた真面目な作品。
5.0
第54回アカデミー賞外国語映画賞。
イシュトヴァン・サボー監督作。

1920~30年代のドイツを舞台に、舞台俳優ヘンドリック・へーフゲンが辿る運命を描いたドラマ。

ナチズム・ファシズムの台頭を描いた作品には『地獄に堕ちた勇者ども』『暗殺の森』『蝶の舌』など傑作揃いだが、本作もこれらの作品同様に、ナチスの台頭とそれに翻弄される一人の舞台俳優の姿を描き出す。ナチスによる虐殺や迫害の実態を視覚的に残酷な描写で描くことはある意味簡単だが、本作はそれらが本格的に始める前の二次大戦勃発前1920~30年代のドイツが舞台。ナチスが勢力を増しつつある時代の“不穏”な空気がたまらなく不気味で、時代の流れとともに鉤十字のシンボルマークが街中で存在感を増していったり、ヒトラーの姿を映さずラジオから聞こえる肉声だけでナチスによるドイツ支配の訪れを表現した演出が印象的。まさに“見えない恐怖”が舞台俳優を少しずつしかし確実に取り囲んでいく様に圧倒されてしまう。

舞台俳優・ヘンドリックの心境の変化と、ドイツ国内情勢の変化をリンクさせて描く。ヘンドリックは元々共産主義者で、ヒトラーを呼び捨てにし侮辱する。コミュニストらしく労働者を題材にした劇が売りの野心家だ。しかし、ナチスが台頭を始めるとヘンドリックはそれまでの態度を一変させ、ナチスを支持し、ナチス高官とも親交を結ぶようになる。
ただの舞台俳優が、知らず知らずのうちにナチスに利用されていく恐怖。国立劇場の総監督に任命され誇りと自信に満ち溢れるヘンドリックだが、結局はナチスが目的を果たすための一つの駒に過ぎない。本作で最も恐ろしいのは、ヘンドリックがナチスのために働くよう強制されたわけでは決してないこと。あくまでヘンドリックは自らの判断で行動している。ナチスが政権を掌握し、危機を感じた妻や友人たちが次々とドイツから脱出していく中で、ヘンドリックだけはベルリンに残ることを決意する。ドイツから亡命した愛人に会うためパリを訪れた際も、結局は彼女に別れを告げひとりベルリンへ戻ってしまう。
“俳優としての地位の約束”を餌に、純粋に芸術を追求する者でさえも容赦なくナチズムの渦に取り入れてしまうという狡猾さ。ナチスの本当の恐怖(州首相の恫喝に震える)が垣間見えた際には時すでに遅し。ナチスが望むドイツ文化の独善的な在り方を実践させるために、ナチスが自由に“使える”存在としての舞台俳優・ヘンドリックが見事生み出されているのだ。

また、「ファウスト」のメフィスト(悪魔)に扮したヘンドリックの白塗りメイクが恐ろしく印象的。舞台上では化粧の白が良く映え、メフィストの真っ白な顔面だけが浮かび上がっているように見える。メフィストが台頭するナチスを象徴する存在ならば、ヘンドリックはメフィストを演じることで、ナチズムの魔性に心を蝕まれていくことになる。

そして、主人公ヘンドリックを演じたクラウス・マリア・ブランダウアーが怪演。ちょっとオネエな感じがしないこともないが、メフィストを演じる際の風貌は圧倒的な異彩を放つ。舞台俳優として最大の名誉を噛みしめる中、最後に精神を極度に混乱させていく姿も圧巻だ。

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