開始5分で同列右端のジジイがいびきをかき出したので死ねばいいのにと思いながら観た。ヒッチコック、ラングを彷彿とさせる…は確かにそうなのだろうが、展開が早過ぎて早過ぎて…そもそもこの手の映画が苦手な名前と顔覚えられないマンとしてはなかなか厳しかったが、ちょうど話がひと段落する度にスパイのおじさんがこちら側に向かって「今こんな感じす」と話しかけてくれるので事なきを得た。単独で敵国ドイツに乗り込みダミー会社を作り軍内部に潜り込み諜報活動を進める。敵も敵で共産勢力のパルチザン内に諜報員を送り込む撹乱作戦に打って出る。次々に連絡員が挙げられ残り3人の内1人は敵である事が確定している四面楚歌状態、それでも国家存亡の危機を救うべく奮闘する態度も声もデカいスパイおじさん。金庫こじ開けようとしたら警報鳴っててんやわんやになるが、しれっと後から来た風を装って逆に親玉を捕獲するとこめちゃくちゃ面白い。最後は尺が尽きたか金が尽きたか知らんがだいぶ突然終わった。

硬派なスパイ・サスペンスとして、やはりヒッチコックやラングら同時代の巨匠への目配せは感じられる。バルネットらしいかといわれると微妙だが、十分に面白い。奥行きを活かしたショットもいちいち芸術的だし、唐突な終わりを遂げる怒涛のラストシークエンスも勢いがあって好きだった。

【詳述は、『地の塩』欄で】敢えて共産主義賛歌やドイツ軍批判には触れず、キビキビしたスポーツライク?な描写の純度·力学·速度·爽快感に、改めて感心。それでもドイツ軍ばかりか、ロシアにも反旗を翻してた、ウクライナの実情が、しっくり踏まえられてる。