生首情痴事件の作品情報・感想・評価

生首情痴事件1967年製作の映画)

製作国:

上映時間:72分

ジャンル:

3.7

「生首情痴事件」に投稿された感想・評価

三角窓

三角窓の感想・評価

5.0
最高に気が狂ってて最高!
凄まじいな。
フィルムの状態は悪いし画面は暗いしで見えにくくて何が起こっているのか判りづらい部分もあるけど、それを差し引いても物凄く面白かった。
愛人と共謀して妻を亡き者にし財産を分捕ろうとする男とその策略の顛末という恐ろしいほどチープな三文ミステリ的なお話に奇妙な凄みを与えてる謎の緊張感が漲っていて、その緊張感が怖さや怪奇的なるホラーの強度とも違うベクトルに向かって存在してる本当に変な映画。
冒頭から入浴シーンと濡場というサービスショットから始まり大丈夫かなと一抹の不安を抱えるものの、その杞憂もどんどん可笑しな方向へと捻じ曲がってゆく快感。
幽霊の映像とか笑っちゃうぐらい安っぽいし幽霊からの主観ショットや幽霊越しのショットとか訳わかんない位置からのショットも変なんだけど物凄く引き込まれる。
方法として定着して陳腐化または形骸化した表現だとしても、はっとさせる効果を失わない。
どうしてそこカラーにしたし? って思う部分で爆笑するし緊張感と無縁の映像にさえ奇妙な幻惑感というかアシッデリックな魅力がある。

狂気と虚無が爆発するラストの薄ら寒さったらないですよ! めっちゃくちゃ滑稽で格好良い静けさが部屋の中に宙吊りにされて静止してる。

男が妻の死を確認した後に愛人宅を訪れて会話などひとつもしなかったにも関わらず「首だけが見つからない」と、この時点では男も言った覚えがなく、映画を見てる側の誰も聞いた覚えのないセリフを愛人の女だけが知っていて「あなたが言った」と言い張るシーンの凄まじさが秀逸。
会話だけで映画の中に幽霊を発生させてしまっていて、見てる私たちはそれを目撃者としてではなく聴取者としてのみ幽霊を発見させられる。
そのむかし大蔵映画という映画会社があって,ユニークな作品を作っていた。設立第一回作品の『太平洋戦争と姫ゆり部隊』(たしか70mmの大作ではなかったか)を除き殆どが成人映画だったが,当時の成人映画はにっかつを筆頭にわかい才能が鎬を削る活気ある工房だったので,大蔵映画製作のピンク映画にも見逃せないものがいくつかはあったと思われる。だがここが製作した作品は現在殆ど観ることができない。
映画が劣悪な保存状況によって失われてしまう不幸は映画大国らしからぬ日本の悪い現象であるが,本作はその中から奇跡的にこんにち日の目を見た一篇である。本作がVHSでリリースされた当時は他に五六作の発売が予告されていたのに,実際に流通に乗ったのは本作を含め三作に留まった。おそらくオリジナルネガが見つからなかったか,損傷が激しくソフトとして金を取れるレベルではなかったのだろう。しかもリリースから漏れたうちの一作はかつての大映のスター,梅若正二が主演した『怪談異人幽霊』であり,話題性にも富んでいただけに残念なことこの上ない。
当時リリースされようとしていた一連の作品は,大蔵貢社長お得意の闇鍋映画の一つである「怪談+ポルノ」という複合ジャンルのシリーズで,そのタイトルも『生首情痴事件』『怪談バラバラ幽霊』と物凄い。こういう外連味溢れる名付けのセンスは新東宝時代から変わらない。
1967年に本作が製作されたということに私は一つの驚きを覚える。『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』や『ローズマリーの赤ちゃん』が68年の公開だということを念頭に置くからだが,本作の渇いた恐怖感覚はまったく時代を先取りしている。時は全共闘酣の時代,暗鬱な時勢に影響されているのは間違いないが,それを鑑みてもこの硬質さは異様だ。意図的にドキュメンタリー・タッチを狙っているならばともかく,厳然たる劇映画でこの徹底ぶりは何だろう。
低予算のピンク映画だからといって馬鹿にしてはいけない。ここには成長途上にある映画の夢が痛いほどに満ちている。あらゆる藝術媒体が繁栄と豊満を経験しやがて枯渇と掉尾を過ぎた現代。吹き均される砂のように,酷使され消費される現代人の感性を陶酔さすべき熱気がこの時代の映画にはあった。表現とは技術でなく(無論それも必要不可欠だが)叫びである。与えられた題を定石に沿って加工するのでなく,作家の思想をそこに形象化するのだ。藝術とは本来そういうものである。