エンニオ・デ・コンチーニ監督作。

1973年に制作された英伊合作の歴史映画の隠れた佳作で、ナチス・ドイツ総統：アドルフ・ヒトラーの最期を描きます。

ドイツの敗戦が間近に迫った1945年４月、ベルリンにある地下壕を拠点に指揮を執るナチス総統：アドルフ・ヒトラーの最期の10日間を緻密な調査に基づき再現した“歴史＋人間ドラマ”です。ソ連軍による首都ベルリン包囲が進行する中、愛人のエヴァ・ブラウンや宣伝相ゲッベルスら少数の側近らと共に地下壕に閉じこもって戦況の確認と軍事命令を行い続ける総統ヒトラーの最期の足掻きと自決の決行までを映し出していきます。

本作の内容に最も近い『ヒトラー ～最期の12日間～』(2004)や変わり種の『モレク神』(1999)や『帰ってきたヒトラー』(2015)のように、独裁者ヒトラーの虚像と実像を、彼が妻と共に命を絶った地下壕での最期の10日間に焦点を絞って克明に描き出したヒトラー映画の埋もれた佳作となっています。執務室や通信室、寝室、会議室等が設けられた地下壕での閉塞的で異様な生活風景＆作戦会議が地上で絶え間なく鳴り響く砲撃音と共に興味津々に再現されていますし、実際の戦争(ホロコースト含む)の記録映像＆写真の挿入が一層の現実性を画面に付与しています。

ソ連軍がベルリンに到達し敗戦が決定的となった最終段階でも勝機を諦めないヒトラーの意地と非論理的思考、そして総統に付き従う最側近たちの盲目的な崇拝と服従心が集団的狂気の世界を形成する異彩の密室映画で、英国の名優：アレック・ギネスが総統ヒトラーに成り切る名演を見せています。

ヒトラーを描いた映画といえば、まず思い浮かぶのは０４年の『ヒトラー〜最後の１２日間』。

こちらは７３年に撮られているが、こちらはあまり知られていない。

『ヒトラー〜最後の１２日間』とは、視点や着眼点は大きく異なっているが、基本的に地下壕内のみで展開する。

『戦場にかける橋』のアレック・ギネスがヒトラーを熱演、独裁者の狂気を体現してる一方、者は全体的に時系列に沿って地下壕内の出来事を追っただけという印象も強く、『ヒトラー〜最後の１２日間』とは違い、ドラマ的にはいまひとつ深みや広がりに欠けている。

最終的にはヒトラーの自決で終盤を迎えるが、ヒトラーの死を知らされた側近たちが、あれだけ事前に「私たちもすぐに後を追って死にます！」と言って毒薬カプセルを受け取っていたにも関わらず、最後に、それまで地下壕内で禁じられていたタバコや葉巻を安堵の表情を浮かべながら吸うのは笑えてしまう。

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とても良かった。
ヒトラーが徐々に狂気じみていくところ。なのに最後まで彼を信じる愛人。