作品としては面白い。ただ色々と問題があるというか、議論はされ続けるであろう作品ですね。

ドイツの敗戦が濃厚になり、自信を失ってしまったヒトラーを、ゲッペルスが収容所から連れ出したユダヤ人俳優が再び自信を取り戻させるために指導をする。

ジャンルとしてはコメディ映画ですが、題材が題材なんでね…。

『ヒトラー　最期の12日間』のようなシリアスな映画ではなく
なんとコメディなのであります。
でもね、やっぱり笑えないのよ、手放しではね。

宣伝相ゲッベルスは
来る新年の1月1日に
ヒトラー総統の大演説によって国民の戦意を劇的に高揚させようという起死回生の計画を思いつく。

しかし肝心のヒトラーは鬱状態で、
執務室に独りで引きこもっている有様。

たった5日間でヒトラーに全盛期のカリスマ性を取り戻させるという 困難な任務を託されたのは、
元俳優のユダヤ人教授だった…。

ユダヤ人大虐殺の張本人にでユダヤ人が演説を教えるって？
しかも名前が同じ「アドルフ」
で、なんなの？
ヒトラーって寝小便たれ？（笑）
最後までなんだか複雑な感じで観てしまいました。

グリュンバウム教授役は
「善き人のソナタ」のウルリッヒ・ミューエ。
この映画が遺作となってしまった。
最期の演技を胸に刻んでお別れを・・・。


静岡シネギャラリーにて。
2009.1/7 (02) 通算1114

• #tulpen2009

敗戦直前のヒトラーが薬物の乱用で精神衰弱状態にあった事は知られているが、同じ時期にヒトラーの演説を演技指導していた人物がいた事はあまり知られていない。本作は、その人物が残した手記を元にした作品である。更に、指導者がユダヤ人であったという設定を加えコメディに仕上げるというなかなか際どい作風。リアリティだけを追い求める実話物とは、敢えて一線を置いている点に注目したい。

主演は「善き人のためのソナタ」で反乱分子を監視する軍人を演じたウルリッヒ・ミューエ。支配する側から、今度は支配される側のユダヤ人を演じているのもユニークであるが、両作品に通じるのは政治的な立場を超えた人の繋がりから、差別と平等についてのメッセージを投げかけている事。ユダヤ人である主人公が、時には暴力を使ってヒトラーを指導するシーンは、考えさせられると同時に笑ってしまうという、なかなかカオスな構図であった。

歴史を遡ると、実はチャップリンの「独裁者」も似たアプローチを試みた作品であった。本作のクライマックスには、その「独裁者」を思い起こさせるシーンが登場する。コメディ・テイストを持つ点で「ジョジョ・ラビット」にも通じるが、本作はドイツ製作という事で、戦勝国側が作る同種の作品とは決定的に違う辛味を持っていると思う。