アキ・カウリスマキ監督作品を観るのは、『希望の彼方』『枯れ葉』に次いで3作目だけど、いずれも絶望にいる人の希望を描くのが上手い。

この『コントラクト・キラー』は35年前の作品。だけど、人々が孤独化している現代でも通じる内容。

ロンドンで事務職をしているフランス男。まじめに働くも社交性がなくてリストラの対象になってしまう。
家族も友達もいない孤独な男、唯一の生きがいの仕事まで奪われる。
仕方なく自殺を試みるもうまく自殺できない。
そこで、殺し屋の組織に自身の殺人を依頼する。
その後、自宅アパートの前にあるパブにはじめていく。そこで出会った女に恋してしまい、死にたくなくなる。
主人公の男はどうする…というブラックコメディ。

実際はかなりくだらないレベルのブラックコメディだと思うけど、アキ・カウリスマキ監督が描くと不思議と味わい深い映画になる。

主人公の男も、女も、殺し屋も、ちょっとずつマヌケで憎めない感じがするところも良い。

がっつりハマり中、アキ・カウリスマキ監督作品。

今回はイギリスが舞台。

15年働いた会社をリストラになった主人公。
真面目ゆえ自殺を試みるが上手く行かず、殺し屋に自分の殺人を依頼する。
しかしある女性と恋に落ち 再び生きる希望を見つけるが、コントラクト・キラー(契約殺し屋)は直ぐそこに来ていた…。
…って、ざっくりストーリー。

相変わらずの、のんびりおとぼけ感で多くを語らず、ハデさも無い不思議な作風だが、そこはハマると抜けられないアキ・カウ作品。

とぼけたギャグとイカした劇伴楽曲～♪
今回はリトル・ウィリー・ジョンやロイ・ブラウン等のR&B系多し！
皆大好き、タランティーノ作品とはある意味 対な真逆の雰囲気。

主人公と彼女のやり取りにホッコリしながら、ケネス・コリー演じる殺し屋のエピソードとラストには、色々な想像しつつちょっとしんみり…。


そして 何が一番驚いたかって、劇中 小汚ないパブのシーンでの小さなステージで演ってるのは何とジョー・ストラマー！！！🤯
それも、ジャンベ？とギターだけのシンプルさ！👍️

…ストーリーに関係無いのに10回位繰り返し観て、意味も無いのに泣けてきちゃった～…😭

『アフロ・キューバン・ビ・バップ』のエンディング曲も最高～🎼

やっぱ、アキ・カウ作品は自分に波長がドンピシャと改めて思わせてもらった作品でした～♪

　由緒正しき英国建築、水道局の登録部では今日も事務員たちが仕事に追われていた。受話器を握りしめたまま、座りながら卒倒したおじさんの斜め後ろで、アンリ（ジャン・ピエール・レオ）は黙々とデスクワークをこなす。昼休み、食堂は満員で同僚たちが楽しそうに食事をしているが、アンリだけは一人黙々と飯を食べていた。仕事が終わると列車に乗り家に帰る。部屋に着いたらやかんを火にかけ、梯子を使って屋上に上がる。彼の趣味は観葉植物の水やりだった。妻も子もいない男一人の寂れた暮らしぶり。退屈な仕事に追われるばかりの男はある日、上司に呼ばれる。職場が民営に移行する矢先、真っ先に首を切られるのは、フランス人であるアンリだった。退職金もなく、人を小馬鹿にしたようなおんぼろの金時計だけで職場を追われた男は、ホームセンターで縄と釘を買う。アパルトマンの契約を打ち切り、男は柱に釘を打ち縄を括るが無情にも釘は彼の重みに耐えきれず、未遂に終わる。翌日アンリは、殺し屋に自分を殺してくれるよう依頼する。殺し屋のボスは心底驚いて何度も確認するが、男の決心はそう簡単に揺らがない。

　世の中の全てが嫌になり、強引に命を絶とうとした男はその翌日、皮肉にも酒場で不意に運命の女に出会ってしまう。マーガレット（マージ・クラーク）はショートカットの花売りで、疲れ切った表情が印象的だが、男はどういうわけか女の顔に天使を見る。その瞬間、死にたかったはずの男は死ぬのが嫌になるのだ。男の心象風景はまさに喜劇と悲劇が波打つ。カウリスマキの映画はこれまではフィンランドの俳優ばかりだったが、今回はトリュフォーの分身とまで言われたアントワーヌ・ドワネルを演じたジャン＝ピエール・レオが無表情でこれ以上ないくらいの道化師ぶりを発揮する。男は女と結ばれた日から、殺し屋の恐怖から逃げ続ける羽目になる。だが殺す側の2人もボスの命を受けたものの、上り調子になるばかりの賞金首の姿に殺しを躊躇するばかりだ。それどころか殺し屋のベテランは末期がんで余命一ヶ月となり、自分の命と向き合わざるを得ない。宝石強盗の現場に落ち合った男は、代理で濡れ衣を着せられる始末。追う側と追われる側の悲劇は喜劇の様相を呈し、オフビートなコメディへと帰結する。人生は思い通りには行かないが、それでも何とかなるさというカウリスマキの人生観が心地良い。