藻尾井逞育

薄氷の殺人の藻尾井逞育のレビュー・感想・評価

薄氷の殺人(2014年製作の映画)
4.0
「彼女と関わると死ぬ」
「ただやることを探してるだけ。でなきゃ完全な負け犬だ」「今さら勝ち組になれると思う?」
「何が見える?」「白昼の花火」

中国・華北地方で切断された死体の断片が次々に発見され、刑事ジャンが捜査に当たるが、容疑者の兄弟が逮捕時に射殺されたため詳細は誰にもわからなくなってしまう。5年後、しがない警備員となっていたジャンは以前の事件と手口が類似した猟奇殺人が発生したことを知り、独自に調査を開始。やがて、被害者たちはいずれもウーという未亡人と近しい関係だったことを突き止めるが……。

中国発のフィルムノワール、クライムサスペンス作品です。中国北部の地方都市(哈爾濱だそうです)を舞台に、元刑事の男が未解決の猟奇殺人事件の真相に迫っていく姿をスリリングかつリアルに描いていきます。

2つの時間と事件を、トンネルを抜ける映像で繋いで見せる手腕は秀逸です。暑い夏の季節から一気に冬へと移行し、さらにカメラの視線も、主人公のものから主人公が客体にとって代わって見せたり、この監督、なかなかシビれます⁈まさに「国境の長いトンネルを抜けると雪国だった…」って感じなんですが、日本人がイメージする純白な雪が降り積もった雪景色とは違い、大陸の冬は極端に寒いのか、雪も薄く氷のように踏み固められてはりついて、あまりキレイではありません⁈暗闇の中、そのうす汚れた雪にどぎつい赤や黄色のネオンが反射して、独特なノワールな世界観を作り出しています。観覧車のシーン、赤いネオンの光が二人の横顔を闇から浮かび上がらせては消えていく撮影は、二人の心の闇の深さを表現していますね。あとこの監督、手や目線の動きだけで、おっぱいを出さなくてもとんでもなくエッチな雰囲気を伝えてきます⁈うーん、ノワールだなぁ⁈

みんな大好き♡グイ・ルンメイ!今回はファム・ファタール、相手を破滅させる宿命の女に挑戦です。ちょうど花火のように、夜の闇では妖しく輝くけれども、明るい白昼の下ではいられない宿命の女という難しい役柄を魅力的に演じています。最後の白昼の花火を誰が打ち上げたのかを見せない演出で、観る者に不思議な余韻を与えます。でも、南国台湾出身のグイ・ルンメイさん、今回の大陸の凍てつく寒さの中での撮影は大変だったでしょうね⁈