ビル・ダグラスの3部作は、不遇のジェイミーが少年から青年になるまでをモノクロで描く傑作だった。その中でも第1部は最も台詞が少なく、最も映像の美しさが際立っていた。あらゆるショットがバッシバシきまっていて、ついつい見とれてしまう。

ジェイミー少年の逆境は、貧困だけではない。母親は気が狂って病院から出られず、父親はよそで暮らす赤の他人、血の繋がっていない兄とは喧嘩ばかりで、愛する祖母は徐々に弱っている。ジェイミーの孤独は、どんどん彼自身を蝕んでいく。

見ていて本当に悲痛な気持ちにさせられるのだが、熱湯で温めたカップを祖母の凍える手に握らせるシーンや、橋の上で両手を掲げて機関車の白煙を浴びるシーンに、ほんの少しだけ心を救われる。どうか幸せになってくれ…！

1945年のイギリス。貧しい村で暮らす少年は兄と祖母と共に暮らしているがその家庭状況はほぼ崩壊しきっており、少年の唯一の心の支えはドイツ人の捕虜であった...というお話

ロベール・ブレッソンを思い起こさせるような冷めた映像とカット割りが面白い。無情な様子を淡々と描いていくあのテンポ感。
明確なストーリーラインが無く少年の生活を映すだけの映画ながらも一つ一つのサブプロットは面白く、カップや鳥籠などの小道具の用い方も中々のもの。歪んだ鳥籠を持っているカットはとにかく良いし、蒸気機関車の煙を浴びるあの場面と最後の映像は神がかっていると言っても過言では無い。
45分程度の短さもまた良く、地味な作品ながらも魅力的な要素が詰まっていて面白かった！しかもこれ三部作の一作目なのか...次も期待！

• #MUBI

真に素晴らしい映画とは台詞の情報が無くても映像表現のみで良さがわかるものだと、確かクレール・ドニの美しき仕事の感想でも書いた気がするが、この作品もサイレント期のロシア映画よろしく叙情的な映像に十分すぎるほどの雄弁性がある映画となっている

貧しい街に暮らす老婆とその孫たちの生活は、良いことなんてほとんどないし作品全体に哀愁しか漂っていないのだけど、映像も描写も美しいものばかりなために終始見入ってしまう

演出スタイルもロベール・ブレッソンやサタジット・レイを髣髴とさせる整然たるもので好みにドハマりだったのだけど、ほとんど初監督の作品でここまで洗練された映画を作り出す手腕には感嘆して止まなかった

ビル・ダグラスという監督は寡作のまま亡くなり、日本で知名度のほぼない監督だけど、彼の才能はもっと評価されてしかるべきだ

• #死ぬ前に見たい映画500