大樹のうたの作品情報・感想・評価

「大樹のうた」に投稿された感想・評価

大学を中退して新天地へと移住した青年が、自身の不甲斐ない人生を顧みながら、若い花嫁の前途を憂えていく。生活困窮から脱出不能に陥っている青年の成長記録を綴っている、ヒューマン・ドラマ。「オプー3部作完結編」と称されている。

粛々と人間観察に勤しんでいた少年が、人生の虚無を悟っている衒学的な青年へと成長。労働の気力すら沸かない、燃え尽き症候群のニート状態になっており、ブッダの四門出遊と重なるような作劇が面白い。

両親の後ろ姿を追ってきた少年が、いよいよ親の立場になるというドラマだが、女友達すらいなかったところに、いきなり嫁さん、いきなり子供、いきなり父子家庭という急転直下。あまりにも波乱万丈なため、もはや笑えてしまうレベルに達している。

青年の「負の連鎖に嫁を取り込みたくない」という気持ちと、嫁の「自分の人生を選ぶことができない」という嘆きを繊細に交差させながら、初々しい新婚生活を描写していくのが素晴らしい。「人間も動物も死ぬときは死ぬ」という真理を悟り、三昧へと達した青年の笑顔に感涙必死。
イケオ

イケオの感想・評価

4.4
オプー三部作は一言で言えば「人生」。CLANNADを思い出した。
げん

げんの感想・評価

5.0
神々しいカットが幾つも盛り込まれている。
展開を、やはりその年齢の体感速度に合わせているのか、一番見やすくはあった、だが決して薄いわけではない。

愛情を喪失したオプーと、愛情そのものとして存在する息子、
彼らは人生の友人として歩み始める。

このレビューはネタバレを含みます

3部作3作目。

オプーの出生から大学生までを描いた一部二部。
これまでも沢山の人生の苦難を味わいながらそれでもへこたれず前を向いてきた青年時代。
本作は、大学を中退してから社会に出て将来に迷い、そんな中伴侶を見つけてこれからという第二の人生の中で、これまで以上の困難に立ち向かうお話。


三部作を通して、オプーの人生成長期を描きながら歴史あるインドの宗教観、人生観を余すことなく描きつつ、人生の苦楽を遠慮なく描く。そこには、サタジットレイの愛情深さがこぼれ落ちているように画面から感じるわけです。

映像としても、インドの田舎から都会まで美しい情景と人間模様の対比を楽しませつつ、インドの伝統的音色が小旅行させているような心地に誘います。

伴侶に関して、これまで観てきたベスト妻
は、山田洋次の藤沢周平シリーズの妻たちでしたが、今回のオプーの嫁さんも勝るとも劣らない良妻賢母。

オプーとの素晴らしき夫婦善哉っぷり。
元々良い家の出の妻との一コマ。
夫「家政婦を探す」
妻「お金がかかりますやん。やめてーな」
夫「バイト増やすがな」
妻「ほなら、実家に帰りますさかい」
夫「なしてーな」
妻「今でさえ、帰りが遅いのにさらに遅くなるなんて。許しまへん」
妻「逆に仕事減らしてくれませんか。そしたら後悔しないですむわ」
的な下りに感激。

映画としては二部が最も好きでしたが、3部作で完璧に近い傑作を観賞できてこの上なく幸せに思う。

この映画は普段手の届かない汚れを浄化してくれる、そんなような、映画です。


残り315本
オプーは結婚する。これほど満ち足りた彼の表情は3作通して初めてで、妻の可愛い我儘をニコニコしながらきいている彼は幸せそのもの。産まれた時から彼を見つめてきた観客としては感無量である^ - ^

大地のうた、大河のうた、大樹のうた。タイトルの妙には唸らされる。波乱万丈にみえる彼の人生も俯瞰すればささやかな流れのひとつなのだ。ラストシーンには胸を打たれる、しかし彼の人生はその後も続き、やがて死を迎え襷を渡すように子の人生は続くのだろう。

インドの土の匂い、悠久の歴史。訪れたことのない彼の地がオプーのお陰で少しだけ身近に感じられた。歌と踊りのないインド映画も素晴らしかった(ლ˘╰╯˘).。.:*
Tomo0116

Tomo0116の感想・評価

4.0
サタジットレイ監督のオプー三部作最終章。インド社会(特に女性差別)と人生の皮肉がうまくメッセージとして映画に込められておりとても深い意味があると感じた。ハッピーエンドなところも良かった。
オプー三部作 3作目の作品

波瀾万丈だとか落差が激しいとか、色々書きたいんですけど、私の言葉では安っぽすぎて作品に失礼。
上手く言葉にならないです。

ひとことで言えば

彼が気付くことの出来た喜び

これに尽きますね。ラストは涙が止まりませんでした。

この素晴らしい作品に出会えたことに感謝です。

3作続けてもう1度見たくなりました。
ち

ちの感想・評価

4.2
愛する者を失い続ける人生の痛み。幸福からの転落と再び見つけた希望。初夜のシーンなど、人と人が互いを認め合い歩み寄ることの幸福を捉えていると思う。冒頭の室内、室外(雨)、室内、階段、外の流れるような展開は好きですね。サタジット・レイ三部作の後半二作品は演出が素朴なので評価はそれほどされていないようだけれど、それでも十分に映画として的確であるように思えます。
pika

pikaの感想・評価

4.0
オプー3部作③
オプーの成長が生々しいほどリアル!笑
現代にもゴロゴロいそうだけど何だか昭和の学生みたいな、夢で人生を食いつぶさんばかりなモラトリアムっぷりで冒頭からめちゃくちゃ面白いのに、そっからまさかまさかの衝撃展開!まさかオプー3部作で胸キュン恋愛ドラマを味わえるとは!愛らしすぎてニヤニヤが止まらないし隅々魅力的でクソたまらん!

演出の凄さもあるんだけど気にしてられないくらいのめり込んでオプー一家の行く末に一喜一憂するというのか、映画であると言うのをスッカリ忘れて伝記ドキュメントを見ているような、この後もまた見ていたいし延々見てられるくらい面白かった!

後半の展開は現代の奥様方からしたらボッコボコにしたくなるクズっぷりであるけれども、そうなってしまったオプーの弱さや脆さや絶望に感情を寄せられる極上の演出なのでラストシーンでホロリと胸を打つ。
赤貧過ぎる設定であったり文化の違う国の数十年前のドラマであるけれども、今も昔も国も文化も変わらぬ家族愛や、人間の成長という部分で山あり谷ありなダメさや魅力が、他人事ではなく自分のことのように投影できたりして引いて見られぬ味わいの深い面白さだった。
束の間の幸せと不遇な人生を味わったオプー三部作の最終章で、まさにシリーズの締めにこれ以上ないというくらいの作品。

序盤は瑞々しい人物描写が多い反面景色の描写が少なくて若干不安になったものの、それも杞憂に終わり友人の村に訪れたところからはいつもの美しい描写が多数見られて安心したし、しかも序盤の人物メインの描写が都会と田舎の対比にも感じられ、此の期に及んでサタジット・レイを見縊っていた自分に猛省した。

そんな美しい描写の連続だが、そこには美しさだけでなく侘しさや寂寥感がこれまで以上に感じられるものとなっており、主人公の部屋で泣く花嫁が外の嬰児を見つけて見入る場面や放浪する主人公が歩く風景はとても心に沁みたのだけど、特に陽光を見つめて小説を書いた紙を放り捨てる主人公の佇まいは心に残って堪らない姿となっていた。

終盤の黒澤明ばりのヒューマニズムが炸裂する展開もシリーズを締めくくるのに相応しいもので、この作品単体の終わり方としても良かったのだけど同時に過去作品で起こったことや印象的なシーンの数々が脳内に去来して胸が一杯になった。

そして見終わったら日本独特の侘び寂びの情緒を日本人以上に理解しているんじゃないかと思えるほど卓越したサタジット・レイの感性に感服する他なく、つくづく良い監督だと感動至極だったのだけど、現代においてこういう侘び寂びの感じられる映画を撮る監督っていうのはアキ・カウリスマキやシャルナス・バルタス等少数しか思いつかないから、世界中の映画監督はもっとサタジット・レイの作品を見て勉強するべきなんじゃないかと心底思う。
>|