曳き船の作品情報・感想・評価

「曳き船」に投稿された感想・評価

半兵衛

半兵衛の感想・評価

4.5
妻がいながら不倫する男…一見すると昼メロでよく出てくる安い展開だが、それを80分という短い時間の中に凝縮して、濃い演出とキャスティング、フランス流の上品な世界観で煮詰めた結果、超高級なウイスキーのような匂いを嗅ぐだけでクラクラしてしまいそうな、しかし決して下品ではない気品ある濃厚さが全編に漂う映画に。

グレミヨンの映画は初めて見るが、主人公の人物やその周囲の説明を冒頭たった10分で説明してしまう巧みな演出っぷりには舌をまくし、主人公の奥さんが病気を気にして医者に見てもらうくだりでは扉の影ひとつで不穏な雰囲気を醸し出し、そしてすぐに不倫に走る主人公と女に話が移ることでその不穏さが増幅されていく。しかも二人のいる世界にはより大きな影がつきまとい(夜の闇、砂浜に浮かぶ雲の影など)、この映画の結末を暗示させているのが凄い。

そして主人公やその妻、愛人との結末の苦さ。この苦さは大人になればなるほど身に染みてくる。前半で出てくる船員とその妻の不倫疑惑の結末も効いてくる。

主人公が働く曳き船=遭難した船を救助する船のシーンの迫力も凄まじく、70年前とは思えない迫力。一方で当時の特撮では難しかったと思われる大嵐の中でボートを漕ぐシーンなどは巧みにカットされ、その代わりジャン・ギャバンをはじめとする出演者の熱演や、船で起こる様々なドラマを挿入してカバーしている。
朝田

朝田の感想・評価

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面白い。なんじゃこりゃあと唖然とした。始まって間もなくいきなり特撮を用いた密室スリラーと化し、不倫ドラマへと移行し苦い余韻を残すラストへと移行していく。とにかくカメラワークとカット割りに無駄が無い。人物のアクションを的確に捉えては繋いでいく。終盤のジャンギャバンの虚無感を抱えた表情が素晴らし過ぎる。
orangeloop

orangeloopの感想・評価

3.8
「Remorques」 
フランスの港町ブレスト
遭難船のへ向かう曳き船サイクロン号
海の男の仕事ですね すごいカッコイイ

船長アンドレと難破した船ミルバ号に
乗っていたカトリーヌ

すぐに二人は恋に落ちる
浜辺を歩く 海辺の家で密会する
ミシェル・モルガンの
謎めいた美しさが醸し出ている
「狂熱の孤独」での彼女も素敵です
ジャン・ギャバンは絵になります
無口で不器用な男が似合います
mingo

mingoの感想・評価

4.1
はまりゅうお気に入りというかゴリゴリに影響を受けまくったクローズアップしかりグレミヨン演出に舌を巻く。ドキュメントと幻視的世界観の詩的リアリズムの融合。「浮気はしない、本気だ」という台詞の嘘臭さに隠された真意を果たして読めるか?と試されているようでグレミヨンはタチが悪い。ポールヴェッキアリの映画作家ランキングで10位がルノワールなのに対してグレミヨンが1位なことは必然、ルノワールの良さが未だに1ミリもわからん。ちなみに脚本にカイヤットおるけど彼の脚色はボツってプレヴェールの台詞回しが採用されたらしい。
SH

SHの感想・評価

3.7
主人公アンドレ(ジャン・ギャバン)は船の船長。嵐などで航行不能になった船を救助し引っ張って帰ってくる仕事。

船が操縦不能になるのは大抵、夜分で海が荒れているときなので危険が伴う仕事。そんな仕事があったんだ。

アンドレと妻イヴォンヌ、救助した船の船長の妻であるカトリーヌの3人のお話。お互いを想う優しい感情が描かれるメロドラマ。

誰もいない砂浜をアンドレとカトリーヌが歩くシーンがあったけど作品全体がどことなく郷愁的で寂しげなところがあって良かった。

ジャック・プレヴェールが脚本に参加しており、気の利いたセリフも良し。
Mizuna

Mizunaの感想・評価

3.2
奥さんの最期でも依然として鳴り止まない救助信号に嫌気がさすアンドレを見て嫌気がさす私
yt

ytの感想・評価

3.5
雨に反射する光が白黒でより強調されている綺麗なコントラスト
そんな美しい水や光と荒れ狂う海上のコントラスト

20167
Ingmar

Ingmarの感想・評価

4.4
作品の出来とは関係ないが、この映画の舞台となったフランスのBRESTという港町に行った事がある。BRESTはこの映画が撮られた後ドイツに占領され、その後の連合軍の空襲で旧市街は原型を留めないほどめちゃめちゃに破壊されてしまう。
現在は小綺麗な街に生まれ変わっているが、船のシーンが多いので当時の街の風景をあまり観ることができないのが残念。
pier

pierの感想・評価

3.7
この先ずっと、罪悪感と虚無感を背負って生きて行く人生になるのか。
浮気はしない、本気だという台詞。
言動は少々軽いが、渋みと重みを感じるから不思議。
菩薩

菩薩の感想・評価

4.1
東武伊勢崎線曳舟駅周辺の再活発により立ち退きを余儀なくされる地元商店の苦悩の日々に密着し、現代社会に於いて公益の名の元に切り捨てられていく個人の悲哀に寄り添うドキュメンタリー、では全く無く、ミニチュア特撮メロヒーロードラマとでも言いたくなる濱口竜介もお気に入りの一本。

海難救助船の船長をしているギャバンが、助けた船に搭乗していた自分の妻とは正反対の気質を持つ女性に惹かれてヤラかしてしまうお話。ギャバンには彼の帰りを今や遅しと不安に苛まれながらも待つ愛すべき妻がおり、しかも夫には自分が重病であることは秘匿している涙ちょちょ切れる健気さだと言うのに、引き綱が赤い糸にでも化けてしまったのか彼女の事は顧みずに、大変ロマンチックな逢瀬を重ねやがる(ここが綺麗過ぎる)。

ミニチュアもさることながら、時化で大荒れ大揺れの船内を再現するゆらゆら撮影が見事過ぎて普通に酔う。助けられた側の船長(ギャバンの不倫相手の旦那)が史上稀に見るクズ野郎であるが、海上からのSOSには直ちに飛び付くくせに、目の前のSOSにはまるで気付けなかったギャバンもまぁまぁどころで無くシンプルにクズ。ラストの雨・風、吹き荒ぶ嵐をしかと見据えるギャバンの死んだ目!カッコいいのだが虚しさ漂う締め方にハッとする。僕は浮気はしない、本気だから、じゃねえよ。二人の刹那的な愛を証明するアイテムはヒトデだが、ギャバンはヒトデナシであった、とさ。

お後がよろしくねぇ…。
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