かつてのプノンペンに音楽が溢れていた時代のことについて話す人たちの顔は、多くが楽しく幸せそうで、豊かで満ちたりた生活を送っている人の顔のように見えた。現在のカンボジアの安定と繁栄を物語っているのだろう。それだけに、彼等が自分の身の上に起こった出来事を告白した時はショックだった。それぞれ、親兄弟子供親戚の多くを、あるいは悉くを失っていた。そんな恐ろしい経験をした人たちのようには見えなかったのに…絶句だった。クメールルージュの治世中に、国民の4分の1の命が失われたとされる中、「カンボジアのミュージシャン、ダンサー、教師、楽器製作者の90%」が殺されたと推定されるそうだ。(出典:英語版Wikipedia,Music of Cambodia)
とてもつらい。カンボジアロックがまるで違ったものに聞こえてくる。一体これほどの短期間にこんなすさまじい殺戮がなされたことが他にあるんだろうか…当事者本人の口から話が聞けるミュージシャンがほとんどいないのも心が痛む。しかしその時代を生き抜いてここで口を開いてくれた人たちにとても感謝したい。 華やかなる50年代から次第にきな臭さを増す70年代半ばまで、フランス・カリブ・アメリカといった影響源の変遷を社会情勢と絡めて丁寧に辿る良作だった。各時代の主要ミュージシャンもおさえられるが名前が全く覚えられない。"You've got a friend"がこんなに皮肉に響くのは初めて見た。