歴史ものとしてとてもおもしろかったです。
原題:Plan A
絵にとても力がありました。
恨み骨髄、主人公の顔が怖かった。
今作は、強制収容所から解放された後も、ユダヤ人は決して安泰じゃなかったという歴史的事実を背景として描かれます。
確かに、戦争が終わったからといって、ドイツ人大衆のメンタリティが早々に変わるものではないですよね。
主人公が収容所から自宅に帰ってくるとそこはドイツ人に奪われていました。
主人公は乱暴に追い払われてしまいます。
ホロコーストを生き延びたユダヤ人たちが、復讐を企てるのも不思議ではない。
第二次世界大戦後、いくつかユダヤ人の組織が生まれました。
実際に存在した組織、人物も実名で登場します。
その中でも、最も過激なグループは、「目には目を、600万人のユダヤ人が殺されたなら、ドイツ人も600人殺す」という目的で集まっていました。
彼らは、自分達の復讐計画をPlan Aと呼びます。
主人公は、国際世論を意識した穏健派に参加していましたものの、実態を探るという命のもと、過激グループに潜入することになります。
収容所で妻子を殺された主人公は、過激グループ“ナカム“に同情的。
ただ、次第に、復讐の正当性、無辜の人々に対する道徳的な責任に揺さぶられます。
復讐が本当に痛みを和らげ、正義をもたらすのかという問いに、ナカムの他のメンバーも葛藤します。
現代の我々は、Plan Aが実行されなかった世界線を知ってますが、それなりに実現性のある計画だったのですね。
本作の公開は2020年。
歴史の中の復讐、倫理や道義について問いかけてきます。
今作はメッセージ色が強すぎるんじゃないかと思ってましたが、その後のハマスのイスラエルへの奇襲と現在も続いている紛争をみるにつけ、色々胸に迫ってきます。