『カッコーの巣の上で』
原題 One Flew Over the Cuckoo's Nest.
映倫区分 G.
製作年 1975年。上映時間 133分。
60年代の精神病院を舞台に、体制の中で抗う男の姿を通して人間の尊厳と社会の不条理を問うK・キージーのベストセラーを、チェコから亡命してきたM・フォアマンが映画化した人間ドラマ。

フォアマンが描いた今作品は、将に我々自身の巣と云える。
我々貧しい精神異常者の住む世界は、ある種の抑圧者の官僚的支配と別の種の経済的圧力にさらされ、ここでは自由という装いで現れる幸福の約束を永遠に追い求め、常にミス・ラチェッドの苦い小さな錠剤を飲み込まなければならない。

今作品は、ハリウッドで公開された映画の中で最も痛烈な社会風刺でしたし、悲劇的なドラマの中にほろ苦い喜劇が散りばめられていることは間違いない。
人里離れた精神病院が社会のメタファーとして使われ、そこに住む奇妙な住人たちは、官僚的な圧制に甘んじている。
我々の社会の象徴とされている。
もし、我々が皆、ランドル・P・マクマーフィーのように反抗したら、世界は変わっているかな。
そして、ランドルのような自由な精神が飼いならされるたびに、我々は自分自身の自由の断片を失うんやろか。
国家の安定が予見され、アメリカ人が自分たちを取り巻く環境に戸惑っていた時期に公開された今作品は、蓄積された怒りをジャック・ニコルソンちゅうキャラを通して放出することに成功していると思います。
『まあ、やってはみたんやけどね。』と、重い排水口を持ち上げようとしたランドルは、病院の仲間に語りかける。
奮闘するも、巨大なセメントの板を持ち上げることはできず、おそらく人生で初めて失敗という厳しい現実に直面する。
ランドルは、未成年者に対する法定強姦罪と暴行罪で有罪判決を受け、精神リハビリテーションセンターに送られた。
彼は心神喪失を訴えたが、施設の職員たちは彼が刑務所に送られるのを避けるために病気を装っていると確信している。
ランドルは、ビーニー帽をかぶり、自信に満ちた顔で微笑みながら、薄汚れた常人の服を着て研究所に6週間の滞在をしにやってくる。
看護師長のミルドレッド・ラチェッド（ルイーズ・フレッチャー、余談ながら、看護師長ラチェッドの過去を描いたスピンオフドラマ【ラチェッド】（2020）がNetflixにあります。)は、ランドルの反抗的な性格をすぐに見極める。
無関心な患者たちの間で絶えず反乱を起こし、ほとんどの患者がランドルの大胆不敵な態度に驚いている。
彼は看護婦ラチェッドと戦い、日々の出来事のつまらなさに挑戦し、日々のスケジュールやプログラムに疑問を持ち、船旅に逃避し、夜中に乱痴気騒ぎをする。
ランドルは、その不遜な態度から、"死んでいる "と評されたブロムデンチーフ（ウィル・サンプソン）と親しくなる。
もちろん、彼はそうではなく、ランドルとの関係は、やがて今作品の本質を決定付けることになる。
そしてフィナーレでは、この物語が本当はチーフの視点を通して語られており、ランドルこそが物語の残りの部分とつながっていることに気づかされる。
(原作小説では主人公はチーフで、彼が語り手となって、彼の目線で物語が進んでいきます。)
この他にも、堅物で風変わりなハーディング（ウィリアム・レッドフィールド）、吃音のビリー・ビビット（ブラッド・ドゥーリフ）、無邪気で子供っぽいマティーニ（ダニー・デヴィート）、テーバー（クリストファー・ロイド）らがいる。
今作品の決定的な場面で、自分たちが狂っていると思い込んでいたこと、そして、自分たちが巣の外の街を徘徊する変人たちに劣らず普通であることを説明するマクマーフィーが、生きる喜びに目を開かせ、その感染力のある野生的な性質に不思議と引き付けられることに気づく。
今作品は、現代の精神医療を批判するものではない。
むしろフォアマンは、社会についての記念碑的な寓話をより高く目指し、そうすることで喜劇とドラマの傑作を作り上げてると思います。
風刺的なユーモアで知られるチェコ出身のフォアマン監督は、芸術的なカメラショットや影響力のあるエフェクトを使う代わりに、病院にいる別の患者の視点に立つことで、物語にシャープな切れ味を与えてたし、毎日のセミナーに参加し、船旅に抜け出し、徹夜でパーティーを開き、辛辣なラチェッド看護師に捕まる。
彼女は映画の終盤で患者の自殺を目撃するが、すぐに全員が日常生活を続けるように主張する。
マクマーフィは彼女の無知と予定調和に憤慨し、彼の進める行動は、やがて自らの運命を決定付けることになる。
今作品がいまだに好まれ視聴されてんのは、ニコルソンに負うところが大きいかな。
彼のキャリアを決定づけた演技は、マクマーフィーを演じるだけでなく、マクマーフィーそのものやから、今もって超えられないのだって書いても書きすぎではないかな。
ビーニー帽に色褪せたジーンズ、そして社会から見捨てられた男の一般的なシニカルなエッジで、ニコルソンはマクマーフィを完璧に演じてます。彼は、映画界初のアンチヒーローであり（1年後には同じく象徴的な『タクシー・ドライバー』トラビス・ビックルが登場）、ベトナム戦争に裏切られたと感じた市民が頼るべき場所を失い、最後は自己破壊の渦に巻き込まれたアメリカの過去の時間と時代を、今もなお貴重に捉えている。
今作品は、'75年のアカデミー賞主要5部門すべてを受賞し、『ある夜のできごと』(1934年)以来の監督賞、主演女優賞、脚色賞、作品賞の総なめという快挙を達成した。
もちろん、個人的には今作品はそのすべてに値する作品であり、35年経った今でも素晴らしい映画作品の傑作であることは云うまでもないかな。

第48回アカデミー作品賞受賞。

ジャックニコルソンってやっぱりスゲー❗️と彼の躍動に震わせられる。

仮病で刑務所から移ってきた彼だが、抑圧され無気力状態の患者たちを見て変革を起こそうとする。

しかし婦長役のルイーズフレッチャー、怖かったなぁ。見事主演女優賞受賞。

でも、人間性を取り戻した彼らの姿を見て、人生讃歌の大感動を期待したのだが😭

心に忘れ得ない刻印を残される作品。
真の傑作‼️

【名作を観ようシリーズNo.62】
《一羽はカッコーの巣の上を飛んでいった…》

前回のレビュー作品”僕のワンダフル・ライフ〟でたくさんのいいねとコメントをいただき感謝します！ありがとうございました！
気持ちを新たに、これからも皆さんと共に映画ライフを楽しみたいと思います。ちょいちょい作品に関係ないような感傷的なレビューもあると思いますが、お付き合いくだされば幸いです。
今後とも宜しくお願いします。
　　　m(_ _)m


この名作、友人に勧められレンタルDVDで初鑑賞。

ジャック・ニコルソンの迫真の演技が光っている！
凄まじい表現力…！まさに怪演！
やはりジャック・ニコルソン、ただものではない…

刑務所での強制労働を逃れるため、精神病を装い精神病院へと逃れてきたマクマーフィー（ジャック・ニコルソン）。
自由人で気ままな彼は他の患者を惹きつけ、リーダー的存在になっていく。
そして、患者同士で連帯感が生まれ…
そんな彼は問題児とみなされ、規律を重んじる婦長と対立していく…という物語。

最後の宴のシーンは躍動感に溢れ、楽しい気分にさせてくれる。
その後に意外な展開が待っているとは…
リアルだけど、こんな展開アリ⁉︎
この作品、展開が読みにくいのも魅力なのかもしれない。
マクマーフィーとインディアンの大男チーフとの”友情〟が、胸に沁みる…

黄金の50年代〜60年代と打って変わって、暗くてジメジメした70年代のアメリカの雰囲気が作品からもよく伝わってくる。なんか疲れてるアメリカ…
ちなみに”カッコー〟とは、精神病院の蔑称らしく…（汗）

観終わると余韻が残る作品です。