レインウォッチャーさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

蛇の卵(1977年製作の映画)

3.5

ヒトラー台頭前夜のベルリンを舞台に、異邦人の目を通して徐々に積もっていく社会不安を見つめたような作品。

劇中当時のドイツはWWI敗戦の影響で困窮、スーパーインフレが起こっていたような状況。当然、街の
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ラストサマー(1997年製作の映画)

3.0

観た直後のはずなんだけれど、ちょうど去年の夏に何食べたか覚えてないように内容を思い出せnyaい。
でもなぜだか後味は悪くなく、《揺れ》動くこの《胸》の切なさだけが残る。記憶が深い《谷間》に吸い込まれて
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ネクスト・ゴール・ウィンズ(2023年製作の映画)

3.5

《1ゴール》。
米領南サモアの超絶弱小代表チームと、地位を追われて嫌々彼らを率いることになった鬼監督トーマス・ロンゲン(M・ファスビンダー)。彼らが求めたたったの《1ゴール》、それは呪いでもあり、救済
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セフレの品格(プライド) 決意(2023年製作の映画)

3.5

前章『初恋』に続く後半。
みんな大好き『ベビわる』の禰豆子(混線)こと髙石あかりさんが参戦!!したことで、ヌル甘かった(決して悪くない意味で)前章から比してドロドラマティックな重さと緊張感がもたらされ
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セフレの品格(プライド) 初恋(2023年製作の映画)

4.0

なんてエロメロ、なのに爽やか。
美味しいケーキ屋さんの生クリームみたいにしつこさ控えめで、気づいたら半ホール、え、もう半分あるの?うれし、みたいな。

なにがって、やっぱり抄子(行平あい佳)がどこまで
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マダム・ウェブ(2024年製作の映画)

2.5

H~i、よいこのみんな~!『マダム・ウェブ』楽しめたかな~?

えっ、なになに…?「マーベル初の本格ミステリー・サスペンス」、どこがやねん?脚本ひどすぎ…?

え~っ、そんなぁ!What a pity
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悪魔がはらわたでいけにえで私(2023年製作の映画)

2.0

2点満点できっちり2点の映画だったわけだけれど、「ひょっとするかも」と足を運んでしまうのが映画パチンカーの悲しき性なのであります。

ここに、《狂気》や《危険》はない。これを作った人はたぶん普通に賢い
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ジャンヌ・ダルク(1999年製作の映画)

3.5

あの愉快で奇怪な『フィフス・エレメント』から僅か2年後、L・ベッソンさんが驚くほどマジメに(失礼)正面から祖国史と向き合った大作。

いやあ、てっきりわたくし、聖女ジャンヌ・ダルクにニキータやマチルダ
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ニキータ(1990年製作の映画)

3.0

前半ハードボイルド・マイフェアレディ、からの後半ブラッディ・ローマの休日。

散漫…だわねって印象が残る。
ヤク中のチンピラから華麗な殺し屋に仕立て上げられるニキータ(A・パリロー)、彼女のキャラが強
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レオン 完全版(1994年製作の映画)

4.0

もしも《美少女学概論》の教科書があったなら、表紙はこのマチルダ(N・ポートマン)の他に考えられない。

それほどのショックがこの映画にはあり、『LEON』以前/以後という楔を90年代に突き刺した。頬を
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フィフス・エレメント(1997年製作の映画)

4.0

突然ながら、わたしは「何も考えずに観られる映画」という表現を避けている。ずっと無思考なことなんてないし、尻を捲るようで癪だからだ。(※1)
しかし稀に、本当に「何も考えずに」…ていうか「考えたってしか
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ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ(2023年製作の映画)

3.0

🐻※原作ゲーム無知勢です※🐰

近頃のブラムハウスは、『グレムリン』と『SAW』の間くらいに位置する「図書室のこわいはなしの棚に置けるホラー」的ラインを意識的につくろうとしてるのかnya、と思ってる。
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探偵物語(1983年製作の映画)

3.0

主演:薬師丸ひろ子&原作:赤川次郎、の座組は『セーラー服と機関銃』に次いで二本目。赤川次郎は昔に何冊か読んだ記憶がありますけれど、だいたい「テキトーな話」てのが悪口にならない作家さんですよね(悪口です>>続きを読む

セーラー服と機関銃(1981年製作の映画)

3.5

わたしは、「銃をぶっ放して "快感" 」という断片だけがかろうじてTVに気配を残していたくらいの世代。
今で言えばミームに近いそのネタを確認するライト考古学的モチベと、往年のアイドル映画としての触れ込
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ボーはおそれている(2023年製作の映画)

4.0

四捨五入すると『ヘレディタリー "2" 』。

表現方法は異なるようで、同じことを逆サイから語ってるのだと受け取った。そして『 "2" 』らしく、ボーは、アリ・アスターは、いやわたしたち《男》は、一歩
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ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)

4.5

テン年代以降のホラーといえば?みたいなセレクトがあれば、ほぼ確で上位に鎮座している映画であり、『ヘレディタリー』以前/以降というひとつの分水嶺を打ち込んだリビングレジェンド。愛してる。

ジェイソンや
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Here(2023年製作の映画)

4.0

祖国への帰郷を計画中の青年と、苔の研究者の女性とが出会う。
監督前作にあたる『ゴースト・トロピック』でも《物語未満》と書いたのだけれど、更に削ぎ落されている印象。2人は出会った、しかしSo what?
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ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)

4.0

Get Lost。終電を寝過ごして終点まで行ってしまったおかあちゃんが、寒空の下ひとり歩いて帰ることになる話。
そんなごくごくシンプルな、《物語未満》に寄り添う。なんだかとても贅沢な時間の使い方を許し
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瞳をとじて(2023年製作の映画)

4.0

題の通り《眼差し》がキーになる映画で、劇中ではたびたび人物がこちらを真っ直ぐ見据え、そのうちの何人かが瞳を閉ざす。
その理由は各々別々でありつつ、わたしたちが「みて」いるものが映画であることを思い出さ
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間奏曲はパリで(2013年製作の映画)

3.5

要するに「雨降って地固まる(か?)」的な小噺なんだけれど、苦味もしっかり。

畜産稼業の日常を離れて過ごしたパリでの2日間は、あくまでも短い間奏曲。また、続いていく主の舞台へと戻らなければならない。そ
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ユー・ガット・メール(1998年製作の映画)

4.0

遠い昔、『ゴッドファーザー』のうんちくがまだギリ許されていた銀河系で…

監督/脚本のN・エフロンと主演M・ライアンの鉄壁ロマコメタッグは『恋人たちの予感』『めぐり逢えたら』に次いで3回目(※1)、ま
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めぐり逢えたら(1993年製作の映画)

3.5

映画史上、最も優しい男がここにいる。

…は?トム・ハンクス?ノンノン、違いますよ。当て馬役のウォルター(B・プルマン)に決まってるじゃあないですか。
なにせ彼はメグ・ライアンの鼻にコークスクリューを
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回路(2000年製作の映画)

4.0

いきなり当たり前すぎることを書くけれど、「インターネットとはコミュニケーションである」。
いかなるタップ/クリックも、リクエスト(要求)を送ってレスポンス(応答)が返ってくるのを待つ。この本質は対面で
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CURE キュア(1997年製作の映画)

4.5

人を怖がらせる方法は数あれど、黒沢清という人は《空間》そのものを恐怖に変えてしまう。

日常のありふれた室内でも、密に設計された構図・照明・音響…によって、おぞましい空間に仕立て上げる。「ここに居たく
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恋愛の抜けたロマンス(2021年製作の映画)

3.5

恋愛に疲れた男女が気楽な関係を求めてマッチングアプリで出会う、そつなくキュートで程よくえっち、ピンクのわたあめソーダみたいな食感のラブコメ。

2人のキャラクターや出会いの背景などにイマっぽさはありつ
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仮面ライダー555(ファイズ) 20th パラダイス・リゲインド(2024年製作の映画)

3.5

劇中で、俺たちの草加雅人がこんな風なことを口にする。

「人は変わるときもある、だが変わらない者もいる」。

まあこのときの奴の真意は置いといて、これほどこの《再会映画》に相応しい言葉もないんじゃあな
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劇場版 仮面ライダー555(ファイズ) パラダイス・ロスト(2003年製作の映画)

3.5

平成ライダーシリーズの一角、『仮面ライダー555』の劇場版。

当時('03年)は、『エヴァ』や『バトロワ』等が蔓延させた《世紀末風邪》がまだ日本全土で治りきっていなかった時代。だって、ノストラダムス
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鏡の中の女(1975年製作の映画)

4.0

どんな映画が好き?と訊かれたら、日中の素面であれば「えっとおォー『魔女宅』とかでスかねェーッ」とスウェーバックで回避を入れるわたしであるけれども、その実「誰かが段々おかしくなる映画」こそ好物である。>>続きを読む

ある結婚の風景(1974年製作の映画)

3.5

なんでも、《腐敗》と《発酵》は本質的に同じ現象なのだ、ときく。時間をかけて微生物が物質を変化させるのは同じで、その成果物が人間に都合が良いか(食べられるか)どうかだけなのだ、と。

もしかすると、夫婦
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コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)

4.5

大切なものは、いつも静けさの中にある。
言葉にされないもの、できないものたちが、確かな形をとらないまま心のうちに沈んでいく。言葉は浮きでもあると同時に枷でもあって、時にはその深さに手が届かない。

A
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ボブという名の猫2 幸せのギフト(2020年製作の映画)

3.5

2月2日は「ほぼねこの日」。(※1)

基本的には「前作の残り汁で飯を食う」タイプの続編(※2)であり果たしてこれが語られる必要があったのかはなんとも言えないのだけれどわたしはボブの姿を見ると自動的に
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ベッキー、キレる(2023年製作の映画)

2.5

じゃあ、わたしもキレる。

日本では配信スルーとなった続編、雑すぎる邦題はいったん置いといても、これはWhat the…?AIが考えたん?いや、今やAIならもうちょい賢かったりして。

たぶん、ただ女
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サン・セバスチャンへ、ようこそ(2020年製作の映画)

3.0

人生の意義と夫婦生活、いずれにも悩む初老の男が、旅先で愛するクラシック映画の世界に迷い込む…
という、『ミッドナイト・イン・パリ』とほぼ同じレシピのコメディ。主人公が小説家志望だったり、公私ともに脅か
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カイロの紫のバラ(1985年製作の映画)

4.5

画面の向こうのあのキャラと触れ合えたら…あるいは、自分があちら側へ行けたら。
映画やアニメ好きなら誰もが一度は頭をよぎったはずの願いを直球で叶えてみた、スウィート&ビター(3:7)なラブコメ…でありつ
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スターダスト・メモリー(1980年製作の映画)

4.0

のっけからフェリーニLOVE全開、オマージュ超えてパロディ、カヴァー曲よりカラオケ?なW・アレン流『8 1/2』。
ところが豈図らんや、観ていくとただの憧れ・おふざけに終わらない、彼なりのやり方で《呪
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僕らの世界が交わるまで(2022年製作の映画)

3.5

ひょっとすると、イタイタシさとイトオシさの間にあるものが《愛》なのか…も?

エヴリン(J・ムーア)とジギー(F・ウルフハード)は、典型的な世代の溝を抱えた母子に見える。DVシェルターを切り盛りする母
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