冒頭、森の中に据え置かれたカメラがラクダと共に森に入る一人の男性を映す。男はある木にあたりをつけ、ロープを地上からかなりの高さの枝に巻きつけ、ゆっくりと木を登るが、残酷にも木の枝はミシミシと音を立て落下する一瞬前を木の上から据える。この不穏なショットで始まる物語は、カプランオールの『ユスフ三部作』のフィナーレのファースト・シーンである。このあっけない事故による死がユスフの家族の運命を変え、人生さえも変えてしまう。大人期を綴った『卵』と思春期を綴った『ミルク』を経て、遂に映画はユスフの少年期の物語へと退行する。幼いユスフ(ボラ・アルタシュ)は、手つかずの森林に囲まれた人里離れた山岳に両親と共に住んでいる。養蜂家の父、ヤクプ(エクダル・ベシクチオール)は、森深くにある高い木のてっぺんに仕掛けた特製の巣箱で黒蜂蜜の養蜂を行って生計を立てていた。ユスフにとって、森は神秘に満ちたおとぎの国で、父と森で過ごす時間が大好きだった。木漏れ日の眩しさで、目を伏せたくなるくらい高いところで仕事をしている父を、ユスフは憧憬にも似た眼差しで見つめる。

　ユスフ少年にとって父親というのは最も偉大な人物であり、尊敬すべき人物としてそこにいる。『ミルク』でも明らかだったが、ユスフは幼い頃から母親よりも父親の方が好きだったのだ。父親の仕事についていき、その働きぶりを始終眺め、食卓でも父親とアイコンタクトで会話する。その際母親の姿はどういうわけかユスフの目には入らない。幼少期からユスフ特有の感情がしっかりと芽生えていることに驚く。学校では友達に馴染めず、極度のアガリ症で吃音という病を発症し、学校に居場所がない。彼は文章の意味も発音もしっかり頭に入っているが、どういうわけか皆の前で言葉を発することが出来ない。それが父親の前では不思議とスラスラと物事を話すことが出来る。ユスフにとって父親とはこの世の中で唯一気兼ねなく話せる人間であり、彼の成長には必要不可欠な存在として描かれている。

クライマックスの祭りと大黒柱を失ったヤクプ家の対比がまた素晴らしい。祭りの喧騒と大人数の中を母親は必死にヤクプの姿を探そうとするがどこにも彼の姿はない。伏線に張られたよくできましたバッジの存在が真に慟哭する瞬間を否応なしに提示する。ヤクプの死により、ユスフ少年は言葉を取り戻すあまりにも霊的な名場面である。無邪気に躍動する幼年期の身体は、言いようもない悲しみの瞬間を目撃する。

トルコのセミフ・カプランオール監督による【ユスフ三部作】の３作目です。
第60回ベルリン国際映画祭で金熊賞（最終優秀作品賞）を受賞しています。

映画としては『卵』→『ミルク』→『蜂蜜』の順番です。
覚え方としては、採取が楽な順です。

卵はそこにあるのを拾えばいい。
ミルクは絞らなきゃいけない。
蜂蜜はだいぶ危険を犯さなければならない。

時系列的には『蜂蜜』→『ミルク』→『卵』の順になります。
それぞれ少年ユスフ→青年ユスフ→おじさんユスフです。

映画の順番だとどんどん若返っていくわけです。


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トルコ映画 ユスフ三部作 『卵』『ミルク』『蜂蜜』

四コマ映画「蜂蜜」→ http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2254


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『蜂蜜』はこの三部作の中でも特別ですね。

大自然の美しさ、ユスフの可愛さ、ロバの可愛さ。

良い映画を観たぜ！という気にさせてくれる素晴らしい映画です。


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蜂蜜を取りに森へ入っていたお父さんが帰ってこない。

でも、その説明がないんです。
別の日になってもそういえば父の姿がないな、と。

ユスフもお母さんも数日間は、お父さんが帰ってこないということを語り合おうとしません。

お母さんはユスフに心配かけまいとユスフの前では明るく気丈に振舞ってます。
でも、ユスフのいないところで友人などに相談したり、涙を流したりしてます。


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何日経ってもお父さんは帰って来ず、
流石にお母さんも憔悴しきってユスフの前でも落ち込みを隠せないようになります。

ユスフはお母さんを元気付けようとして
吃音を持ってるんですが朗読を頑張ったり
苦手な牛乳を一気飲みしたりします。

ユスフの牛乳一気飲み➡︎https://twitter.com/fukui164/status/1118849254468907008


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で、これらのことを説明してくれるセリフはありません。

でも、お母さんの気持ち、ユスフの気持ち、それぞれを思いやる気持ちが、行動から見えてくるのです。

はい、そうです！
これが映画です！
ありがとうございます！



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トルコ映画 ユスフ三部作 『卵』『ミルク』『蜂蜜』

四コマ映画「蜂蜜」→ http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2254

Filmarksをはじめてかれこれ8ヶ月が経ちました 早いものですな
あの夏の日に鑑賞した映画に興奮して一気に仕上げたレビューから数えて200本！
とても皆様に読んでいただけるような代物ではありませんが、いいね♡やコメントを沢山の方から
いただき本当にありがとうございます 映画愛に溢れた方と触れ合えた事が何より嬉しい事でございました♡
どうかこれからもご贔屓のほどをお願いいたしまする(*￣∀￣)ゞｴﾍﾍ

さて、トルコの映画を見た事ありますか？大分前にケーブルテレビの映画紹介で知った『蜂蜜』という映画に興味を持ち鑑賞に至りました 第60回ベルリン国際映画祭金熊賞受賞作で現代トルコ映画界を代表するセミフ・カプランオールという名前の監督作品です
今作はユスフ三部作とよばれてい
る『ミルク』と『卵』に続く最終章でカプランオール監督の自伝的映画でユスフの成長を描く連作ですが私は今作の『蜂蜜』しか見ていません

ユスフはまだ幼くでつぶらな瞳が印象的な男の子で、養蜂家のお父さんが大好き 学校に行く朝は
伝書鳩が道案内で小さい身体で大きい鞄を背中に背負って走って行く後ろ姿が可愛い
手つかずの森林に囲まれた人里離れた山岳に両親と共に住んでいるユスフは学校までの長い道のりを黙々と鳩を追いかけながら通います このシーンを見た時は驚きました この土地では人間が自然に寄り添って、頼って生きているのです

幼いユスフがとにかく可愛くて彼の仕草や行動を眺めてるだけでも
飽きません
学校ではきちんと質問に答えられると先生によくできましたのご褒美のバッジを貰えます
クラスメートは皆んなの前で先生に褒められてとても得意顔
ユスフはまだ答えられなくて
そのバッジが入った透明なガラスの入れ物を恨めしそうに見上げる

そんな平和な日常を淡々と描きながらある日ユスフの家族に不幸な事件が起こります
時に自然は理不尽に静かな暮らしに影を落とします ユスフの大好きなお父さんが 忽然といなくなった蜂を探しに遠くの森まで朝方出掛けたまま帰ってこないのです
その日を境にユスフは話す事ができなくなります

幼いユスフの日常と
人里離れた森林に囲まれた厳しい
暮らしや養蜂家の職業の過酷さを描きます
この映画は山で生きてる人々の寄り添い助け合う姿や
信仰、アララト山の祭りなどの文化も知ることができます

音楽やナレーションなどを一切省いてるので
静寂に包まれる心地よさを味わえます
固定カメラで映し出す山々や
林へと続く道に
降り注ぐ光の木漏れ日
身体一杯に浴びるような映像にうっとりします

ユスフはあの後声とお父さんを取り戻すことができたのでしょうか
ユスフがお父さんと一緒に
森深くにある高い木のてっぺんに仕掛けた特製の巣箱で採れた蜂蜜を小さな指ですくって舐めると
甘い味が口一杯に広がって思わず笑みがこぼれます
その時のユスフの顔が忘れられません