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ダホメ
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『ダホメ』に投稿された感想・評価

Omizu
3.7
【第74回ベルリン映画祭 金熊賞】
『アトランティックス』が高い評価を得たマティ・ディオップ監督のドキュメンタリー映画。ベルリン映画祭コンペに出品され、金熊賞を受賞した。

東京国際映画祭で一応観たんだけど寝てしまったのでMUBIで再鑑賞。変換される美術品をめぐるドキュメンタリーで、普通によく出来ていて感心した。美術品自体に語らせるという変わった切り口、現地の人々の返還美術品についての議論といったものを力強く構成している。

非常に意義深いドキュメンタリーであり、植民地としてのベナンのアイデンティティーをも問う深い内容になっていた。美術品にどんな意義があるのか、そして今後どんな意味を持たせるのかという問いについて議論していくのが興味深い。

ディオップ監督の落ち着いた語り口がとてもよく、金熊賞をとった意味がよく分かる。一ドキュメンタリーとして非常に優れているし、ディオップ監督作としても重要な作品になっている。
4.4
17〜19世紀にアフリカに実在したダホメ王国が所有していた美術品のごく一部が、2021年にフランスから返還された出来事を巡るドキュメンタリー作品。一昨年公開のヴィオラ・デイヴィス主演「ウーマン・キング」や「ブラックパンサー」のワカンダの女戦士たち(ドーラ・ミラージュ)のモデルにもなっている、あのダホメ王国。

タイトルこそ「ダホメ」とあるが、王国の歴史や興亡を直球で描くのではなく、あくまで21年の出来事に対して現代のアフリカ人(ベナン人)がどう捉えるか、さらにはそこから敷衍して現代も欧米と大きな格差を強いられている政治・経済の問題や歴史・文化の正当性について語られる……というかなり興味深いアプローチで驚き。

良い意味で裏切られるし、そもそも現代のドキュメンタリー映画って欧米圏など先進国視点の物が多いので、興味深い触れ込みのタイトルから気を衒ってこうした構成にするのはかなり巧い。自分が今のベナン人だったら、また当時のダホメの人だったら、この出来事をどう思うか、ずっと逡巡していたし、きっとどちらの立場でも納得はしきれない(主に政治的な意味で)。

1時間強の尺ながら、素晴らしいドキュメンタリー作品だった。必見。
4.7
【文化の奪取を通じた"歴史を創るエンパワーメント"&"利害の不透明な支配の危険性"】【東京国際映画祭】
■あらすじ
1900年にフランスに征服されるまで、現在の西アフリカ・ベナン共和国の地に存在したダホメ王国。
カンヌ映画祭グランプリを受賞した『アトランティックス』(19)で鮮烈なデビューを飾ったマティ・ディオップの長編第2作『ダホメ』は、2021年11月にかつてフランスがダホメ王国から略奪した美術品の一部がベナンに返還されたプロセスを追うとともに、この返還をどう受けとめるかについて議論するベナンのアボメイ・カラヴィ大学の学生たちをとらえたドキュメンタリー。

祖国に戻ることになった彫像のモノローグで映画を進めるなど、フィクション的な演出も盛り込まれている。
ベルリン映画祭コンペティションで上映され、最高賞の金熊賞を受賞した。

■みどころ
大傑作!!
略奪された美術品がフランスから一部返還された事に対するベナン共和国の人々、美術品それぞれの想いを追ったお話。

フランスがダホメ王国から略奪した700点の美術品のうち26点がベナン共和国に返還される。
それに対して、ベナン共和国の様々な役職の人間と"26番"と呼ばれる美術品に宿る"誰か"の2者の目線で
①美術品を返還された事への考え
②美術品の返還の受け止め方と今後の展望
について語るドキュメンタリー映画である。

130年もの空白期間の末に美術品が本来あった場所に返還される事に対してフランス→ベナン共和国への移送のみならず、ベナン共和国側でも美術館の改修、美術品の鑑定など様々な手続きが施される。
そして厳重に管理・鑑定の末に美術館へ保存され、多くのベナン人に観られる存在になる。
やがて話は一気に変わり、本作は様々な場所において美術品を返還される事に対する議論が行われる。
美術品を返還される事に対する意味について、歴史的観点だけでなく政治的観点・文化的観点・教育的観点・外交的観点など多種多様な目線で老若男女問わず議論されていく。
そして、それとは独立して"26番"は今回の動きに対して独自の理論・残留思念を我々観客に述べる。
この2者による議論・思念を通じて"美術品返還"の意義を解き明かすが…


本作の特徴として美術品という有形文化財が返還される事に対する物質的意義に留まらず、象徴的意味合・返還されるまでの歴史や転換点を人・美術品の残留思念で交錯していくところにある。
そこには歴史的特異点をトリガーに文化を取り戻す本髄だけでなく美術品を返還。取り戻す事そのものの様々な意味を解き明かす深みを浮彫にしていて、そこが素晴らしかった。
美術品を返還する事に対して物質的意味だけでなく言語、宗教、外交、教育と継承などのツール/概念的意味まで拡張した議論をする世界観の広がり、美術品の語り(≒監督の狙い)が独立する意匠性も面白い試みであると同時に観るものを考えさせるきっかけにもなっていると思う。
つまり美術品を返還される出来事は今後の美術品を奪取する歴史的転換点に留まらない。
①美術品の返還に対する追撃のムーブメント
②美術品を保存するという歴史を保護する教育・言語・世代継承の重要性
③自国の外交をより鍛えて、かつて支配したフランスと向き合う政治・外交の一致団結・芽生え
…という歴史の一部に足を踏み入れて、歴史の一部として自国で更に拡げていこうというパワフルさを展開する所にこそ本作の素晴らしさが詰まっていると思う。


けれども本作はそういった自国の歴史、歴史を変えようとするムーブメントを支援する側面だけに留まらない。
ベナン共和国側だけでなく、美術品を返還したフランス側の論理をも見せる。
フランス側の論理を提示することで、ベナン共和国の置かれた環境が"誰によって成り立っているか?"という事を逆説的に展開する危険性を警鐘する作りになっていてそこに圧倒されました。

というのも、この映画では冒頭にフランス内に置かれているエッフェル塔のレプリカを映すシーンから始まる。
そのレプリカはいかにも観光客向けのお土産って感じで照明の光具合から見ても安っぽさが凄い。その安っぽいお土産を見せたのちにダホメ王国の返還工程、ベナン人との議論に橋渡しされているのだ。

ここに現地の人々が問題意識する歴史・教育・外交という言語の外側にはフランスの力学が存在し、現代の時制においてはフランスというかつて支配した側の息が根付いている事を示唆している。
それは主要言語と現地言語の教育的普及、経済的な存在といった美術の保護とはかけ離れた概念であり、美術品を返還する動き出しも含めて略奪した側の意思に基づく操作だと言える。

この操作はフランス側の戦略に基づく打算的姿勢でもあり、同時にエッフェル塔のレプリカを最初に魅せる事でフランスの操作によって文化を観光的に消費される危険性を警鐘しているのだと思う。
この作劇によって本作は
①ベナン共和国で生活している人々の想い
②美術品に潜む残留思念
③フランス側の論理
の異なる意思・狙いが存在し、それが平行線なのかどこかで交わるのか?すら分からない事が問題だと逆説的に示唆する演出が素晴らしかった。
その演出によって美術品を
①文化的消費の目に晒されるリスク
②歴史・教育・言語・外交などの複層的主題の維持・防衛・新たな文化財の奪取
の2面で語る動線にもなっていてよく出来ていると思う。

その一方で本作は"26番"に語らせるフィクションを盛り込むことで、人間が鑑定・議論で掘り起こせていない"歴史"という神のみぞ知るゾーンが存在するあざとさも内包している。
それが他の議題に拡げる拡散性を現出していて、本作の歴史を掘り起こす深淵さに繋がっているとも言える。

そんな超複層的な作劇を極限まで短くした尺の中で叩きつける本作にとにかく圧倒されました。
そして東京国際映画祭で最後に観た映画にして最高の映画体験の一つになりました。

オススメです!


P.S.
今年も東京国際映画祭に参加しました。
本作『ダホメ』をもって私の第37回東京国際映画祭は終幕です。

今年は様々な毛色の作品を鑑賞したが、その中で
『ダホメ』
『Flow』
『煙突の中の雀』
『エマニュエル』
『キル・ザ・ジョッキー』

の5本は特に素晴らしかったです。参加された皆さんは素晴らしい映画に出会えたでしょうか?

2024年も残り僅かですが引き続き良い映画鑑賞を続けていきましょう。
改めて今年も東京国際映画祭お疲れ様でした。参加出来て良かったです。

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