【第25回東京フィルメックス　コンペティション部門出品】
リン・ジェンジエ監督の長編デビュー作。サンダンス映画祭でプレミアされ、ベルリン映画祭パノラマ部門にも出品された。

これは面白かった！闖入者ものの新たな秀作と言っていいだろう。決まった構図の画面を意識しすぎな部分はあるが、映像にこだわりを感じるなかなかの良作。

円というモチーフが随所に散りばめられている。その意味とは何だろう。始まりも終わりもない円、完璧に見える家族を象徴するモチーフであろうか。比較的裕福な中流家庭に侵食するシュオ、家族の和に割り込もうとする存在がその円を壊していく。

闖入者ものというジャンルは昔からあるが、中国を舞台にするとこうなるか、という発見がある。

家族それぞれの思惑と願いが丁寧に描かれていく。そのストーリーテリングが素晴らしい。飽きるひまなくシュオが侵食していく様子を描いていく。そのテンポ感もいい。

ウェイとシュオの関係も秀逸。シュオはウェイになりたかったのかな。『リプリー（太陽がいっぱい）』のような危うさを感じる関係性が面白い。憎悪と愛情は紙一重。

最後にウェイが見つめるものは何だろう。余韻を残す終わり方も秀逸。あまり期待していなかったが今のところ『黙視録』と本作がトップ。非常に示唆に富み面白い作品だった。

• #第25回東京フィルメックス
• #第74回ベルリン国際映画祭

不穏な好青年💦

物語のキッカケは弱い気がしたが、スルスル〜っと家族の一員になる過程はスリリング！
この青年のバックボーンが、本人からしか語られないばっかりに嘘なのかも…と云う疑心暗鬼が不気味さを出していた。
ただ、スリラー映画特有の切れ味はあまり感じなかった💦
まぁ、映画の着地からして、そうゆうモノではなかったのかな〜と。

• #東京フィルメックス

家族という共同体に入り込む異分子によって、保たれていた平穏が崩壊する話。あるいは元から崩壊していたことに気づく話。東京フィルメックスにて。

なんかあらすじで色々言い過ぎな感はあって、ストーリーというよりは語り口が面白い映画だった。都市の高速道路を人体を流れる血液に、入り込んだストレンジャーをウイルスと重ねて見せる映像がオリジナルで良い。
「醤油ありますか？」に対するアンサーがあるとかないとかじゃなくて「濃口？薄口？生醤油？お刺身用？」なのが嫌味すぎて笑う。

父親の家父長的な振る舞いは妻に自らの意思と好みを忘れさせ、一人息子は本当にやりたいことを抑圧されている。異分子との交流によって彼ら自身がそれに気づきはじめるわけで、パラサイトとかに比べると宿主自体が主役の話なんだと思った。

あとあれ、明かりを消す→移動する→明かりをつける　の繰り返しで関係性を表すのとかすごい良かったです。