家族でのピクニックのビデオ映像をじっくりと見ている若い父親。すぐに彼の幼い娘が行方不明になっているということが分かる。このビデオは、若い両親が持っている娘の最新の映像のようだ。程なくして、行方不明の娘の映像が入ったDVDが家族の玄関先に届き始める。誰かがこの家族を長い間監視しており、おそらく娘を取り戻す鍵を握っていることが明らかになる……。ヨー・シュウホァの『幻土』に続く新作長編『黙視録』は、こうして犯罪スリラーとして幕を開ける。シンガポール警察が所有する膨大な数のCCTV映像が駆使され、比較的あっけなく事件は解決するのだが、すでにその頃にはこの作品はスリラーの枠組みをあっさりと超え、現代の孤立と監視文化についての、巧妙で、陰鬱で、瞑想的で、最終的には不可解さを含んだより多層的な物語へと変質を遂げ始めている。大量監視の時代に見る、見られるということはどういうことなのか。私たちの身近にあるこの大きな問いを考察することで、この作品は人間の孤独や脆さを見つめている。ベネチア映画祭コンペティション部門で上映。
シンガポールを舞台に、ある中国人移民労働者の失踪事件から明らかになっていく、 この男の過去とは?フィルム・ノワールと社会派リアリズムが奇跡的に融合した物語。
ヒョソプは、まだ一作もまともな小説を発表していない哀れな小説家である。後輩が勤める出版社を訪れ、自分の原稿が無価値であることを確認する。 その夜、友人たちと飲みに行った彼は、評論家と喧嘩し…
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>>続きを読むハノイで旅行ガイド兼通訳として働くズエンと、タクシー運転手のハイは、出会って三ヶ月で結婚を決めた。式のあと酔いつぶれ、夫婦の寝室へ担ぎ込まれる新郎ハイを、ズエンはただ見つめることしか出来な…
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©AKANGA FILM ASIA_GRACE BAEY