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バラベント
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目次

バラベントの作品紹介

バラベントのあらすじ

ブラジル北東部バイーアの漁村に生きる土着の人々を描いたシネマ・ノヴォの旗手グラウベル・ローシャの長編デビュー作。

バラベントの監督

グラウベル・ローシャ

原題
BARRAVENTO
製作年
1962年
製作国
ブラジル
上映時間
79分

『バラベント』に投稿された感想・評価

3.0
「バラベント」

冒頭、ブラジル北東部バイーヤ地方。ブラキーニュの漁師達。海と太鼓、合唱、灯台、網を引く住人、大量の魚、スーツ姿の黒人、祈祷師、因習、民間信仰、愛、生活、社会。今、1人の青年の活力を映した物語が始まる…本作はグラウベル・ローシャ監督による長編第1作に当たり、全編に響き渡る民謡、人々のバイタリティ、舞台のハイチのブードゥーに通じるカンドンブレの儀式の生々しさを前面に押し出した秀作で、第13回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭最優秀作品メダル賞を受賞した映画で、この度DVDボックスを購入して初見したが素晴らしかった。


まず、絶望的な貧困の原因であった因習を地域の政治力、そして社会的な生活を変えようとする青年の抵抗が非常に描かれていてよかった。それにやはり全編に流れてくる民謡の素晴らしさ、なんとか支配から独立を図ろうとする青年の無力ながらの行為が非常に胸を打つ。

ローシャが若干20代で撮りあげた彼の最初の映画からこんなに興味深く不均一な儀式や下層階級への関心を示していたとは恐れ入る。この作品で脚光を浴びているのは、どちらかといえばヨーロッパ人よりもアフリカ人の血が多く、漁業に従事している漁師の生活と感じる。黒人をはじめ、少数民族の文化グループの白人による搾取というほぼ普遍的な問題を引き起こしたり、政治問題以外にもブラジルの特徴であるカラフルなダンスが随所に入り込み、マクンバの儀式を垣間見ることができる貴重の映画だと思う…。


さて、物語はブラジルの北東部にはアフリカからの奴隷の最古の集積地がある。人々は祈祷師にすがり、呪いをかけ、トランスに接して、更に信仰にのめり込んでいく。アフリカからの黒人奴隷文化に漁師たちの素朴な生活が息づく海岸の村には突如白いスーツの青年が都会から帰宅する。

どうやら以前村を出た漁師仲間の1人の男性らしい。彼は漁師たちが囚われている因習、とりわけ民間信仰カンドンブレから人々を解放しようと試みる。こうした結果、徐々に村に異変が起き始める…と簡単に説明するとこんな感じで、やはり舞台がハイチだからなのか、それとも素朴な人々を見ているからなのか、このバイタリティー溢れる大地と海の中での生活を見ていると、昔に見たイタリア映画の「チコと鮫」と言う作品と、これまた同監督の「遙かなる青い海」と言う作品を彷仏させる(どちらカラー映画なのだが)。


それに都会からやってきた1人の青年がいわゆる政治的圧力が孤立していて、静かな村に都会からやってきた青年の波により、徐々に変わっていく村の現場を見ていると、日本アートシアターギルドの作品の81年の根岸吉太郎の秀作の1本である「遠雷」を見ているかのようにも感じてしまう。




本作は冒頭から非常に引き込まれる。またもや大海原の描写が映り、太鼓を叩く黒人のカットバックをしつつ、民謡がひたすら流れる中、スタッフ、キャストの名前が映される。続いてカットは浜辺に数十人の漁師たちが網を引っ張っている描写に変わる。




民族楽器と民族衣装に身を包んだ女性数人が藁で作った様な家の中で舞を踊るシーンで、白人の女性が訪れてきて、ショックを受ける表情とのカットバックが印象的。それにしても浜辺での漁師たちの褐色の肌と照りつける太陽の光に反射する神々しさったら半端ない。数年前にアカデミー賞最優秀作品賞受賞した黒人監督初めての「ムーンライト」のように、褐色の肌を持つもしくは黒色の肌を持つ人々が光に照らされる(汗ばんだ照りつける状態)の時の神々しさって本当に美しいよね。

ここでは男性の体の動きをクローズアップしたり裸体(上半身のみ)をエロティックに撮っていて、エロチシズムを感じる。網を手で作っている(作業)のシーン等すごく魅力的である。それから男女を捉えたカメラが横にゆっくりとスライドするカメラが映す海のショットがなんとも美しい。それに3人乗りの筏のような特殊な船で漕ぐ男性3人の黄昏に輝く大海原のショット(音楽付き)は本当に息を飲む美しさだ。


波に揉まれながら、住民は力合わせ数十人で漁に出る。それに今まで極力風の音などを排除していた監督が、この作品のワンシーンでは思いっきり風をなびかせる音を強調させる、と思いきや不意にまた静寂な描写が頭上ショットで捉えられる。それから妙な音楽で威張りまくってる白いスーツを着た黒人と地元の漁師の若い黒人2人が砂浜で大喧嘩するシーンは面白おかしく捉えている。



ラストの灯台のローアングルショットでフィナーレを迎えるのは余韻が残る。
4.5
ブラジルの貧しい海辺の村の生活。ドキュメンタリー調ではあるが、冒頭で現実との「類似は偶然である」と断言される「映画」である。なんにも持っていない人たちの全てが海の中に消えていくのだろうか。

愛憎半ばなのかもしれない。グラウベル・ローシャは白人。撮影時はまだ20歳だった。既に左翼活動家として文筆を奮っていたようだ。

大きな空のあまりの明るさに、大きな海のあまりの呑気さに胸が痛くなるほどたっぷりと、その漁村の生活空間をモノクロームで映し出す。ジャック・ターナーの『私はゾンビと歩いた!』(1943)よりも本当らしさが少ないだろう。信じられないほどに、空と海だけなのだから。



DVD。画質は十分に良い。音質も悪くない。
TnT
4.1
 ブラジルの土着的な領域に踏み込んだ、半分ドキュメンタリーチックなまでに感じた映画だった。外部からは決して語れない内部からの視点が、その土着的な文化に潜む闇をあぶり出す。そして人物にこれでもかと迫るカメラと人物の関係からも、当事者だから踏み込める距離感のような気概を感じる。黒人の肌のツヤと陰影が本当に芸術的。また、とにかくどの風景も映えてしまうというか、あの日差しと入道雲とヤシの葉を、あれだけ美しく描けるのはすごい。

 今作品はネオリアリズモやヌーヴェルヴァーグなど同時代の映画に影響を受けた作品で、後にリオデジャネイロ中心に起こるシネマ・ノーヴォ運動の先駆け的作品らしい。日本も松竹ヌーヴェルバーグがあったりと、この時代は国を超えて革命的な思想が広まっていたんだなぁと感心。監督のグラウベル・ローシャはゴダールとも関わりがあって「東風」に出ているとか、いずれ鑑賞したいです。

 そんなローシャによる今作品は、ある漁村を中心に進んでいく。閉鎖的で、外部を感じさせる唯一の存在が都会から戻ってきたフィルミノという男のみ。彼がこの村にいわば救世主的な役割を果たすのだが、そう一筋縄ではいかない。保守派な村の人々の諦めや、呪術によって村を支配する親方、また、都会に出て果たして仕事が得られるかという話も。またこのフィルミノとう人物像が救世主にしてはアウトローすぎて、果たして本当に救世主なのかという疑問さえ残る。自立と伝統と貧困の悪循環の間で揺れるのが今作品なのだ。
 
 また、アフリカから連れてこられた祖先を持つ黒人たちの、その呪いに近い運命。奴隷として生き続けるしかないのか?彼らの声を映画にする功績がすごいです。この問題に切り込んでこなかった映画界に一石を投じる。

 人物へのアップ、踊り、肉体の躍動。それらは黒人の体に根源的に潜むパワーであり、それらは私たち観客を圧倒する。モノクロで映し出される彼らの肌が非常に美しい陰影で映える。存在感、それはもはや大地を撮るように人物を撮る。しばし彼らの肉体は、大地と同義として現前となる。踊る人々を俯瞰で撮るのは、彼らが全体となる瞬間である(その円環で踊るつながりの強さが、絆でもあり、反対に保守的な姿にも見える)。逆に俯瞰で人物を撮るとき、そのスケール感は異常なまでにことらに迫る、さながら山を見上げるかのよう。またコタという非常に豊満な女性が、今作品では大地の女神と同義だと思われるほどに力強く色気のある姿で映し出される(特にあの会話が波にかき消されるキスシーンは、彼らを波打ち際の岩として捉えていると錯覚する)。ブラジルのサンバなどの躍動が彼らにはある。

 また、海にいかだで乗り込む、魚を捕まえる網を引っ張るなどの行為は、演技ではなく本物のようだった。あの儀式の踊りとかも非常に真実味があるというか。また網を直す手つきは本物で、ここが単なるフィクションではない、実際の問題であることを見せていると思った。

 それでいて、モノクロで描かれる灼熱のビーチはどこか空虚、「ソナチネ」に感じる虚無感を持つ。空の雄大さ、影の伸び、非常に鮮明に映る風景も、モノクロのせいか謎に虚無。彼らの躍動する踊りさえも空騒ぎかと思い違ってしまうほど。閉塞感がすごいのだ。また、フィルミノが海を見るシーンがすごかった。俯瞰で映し出される黒々とした海と白い浜とそこに同化する白いスーツのフィルミノの存在の小ささ。あの黒い海は、まさに彼らの先行きの見えなさを暗示するかのよう。「ソナチネ」以上に大胆な撮られ方が多い今作品は、やはり各々の土地柄が反映されているように思える。

 奇跡や呪術の奇妙さ、物語は寓意的な、神話的な話にもなっている。実際、今作品において呪術が果たして本物だったかどうかは判明されない。政治的な物語以上にそうした自然との関わりが強固な彼らの生活が伺える。監督が、この呪術的な考えを放棄しろと言い切っているようには思えなかった。コタがアルーアンと結ばれる時、それはほぼ神話的だったし、そうした側面を否定することはできないのだと言いたいのかもしれない。だからこそ、今作品はその天地が逆さまになるという「バラベント」の訪れを予感させるに留まる。

 曲がコロコロ変わり、編集もかなり荒っぽい、それがよい。一見粗雑とまで思われてしまうこの編集のリズムは、むしろ彼ら固有のリズムだとも思える。あの多様な楽曲を耳にするだけでなく、映像の編集にもそれが刻み込まれていると思う。この映画は、やたらと本当にブラジルの海岸にいるかのような体感を呼び起こし、久々にそうした空気感まで伝わる映画だと思った。暑い国特有のあの倦怠感、現地に行くことができない今味わえるだけで貴重な体験だ。

 ラストの曲がよい。「おお、神よ。もし金さえで回らなきゃ、誰も飢え死にしないだろう」。彼らは希望と絶望が入り混じる中で、それでも歌うのだった。彼らの歌はまさに綿花畑で歌い継がれたブルースなのだ。

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