水曜どうでしょう新シリーズの放送が関東地区でも始まり毎週水曜日が来るのを首を長く長く長くしながら待ち侘びているわけだが、前々作のはじめてのアフリカあたりからのミスターどうでしょう鈴井貴之氏の加齢具合が若干気になるところである。大泉さんは相変わらずどうでしょう班の「若手」としてその拳を無駄にぶんぶんと振り回し息巻いてくれているので安心出来るのだが、みすた君をはじめフレームにはなかなか収まらない藤やん&うれしーにしたってそうである、そしてそんな彼等の爆笑珍道中を眺めている俺だって同様に年老いた…。となぜこんな事を書き出したかと言うと、冒頭のリー・カンションを見た際の第一印象がまさに「老けたなぁ…」であるからに他ならないのだが、相変わらず首が痛そうで、むしろめちゃくちゃ悪化してそうで何よりであるし、俺も毎日の風呂上がりの念入りなストレッチを怠れば翌日には首・肩・腰に強烈な鈍痛を発生させ、それがひいては頭痛にまで発展する厄介な身体を引きずって生活しているものでまるで他人事ではない。人間の肉体の耐用年数って本来であれば2、30年なのではないか…？だだそんな替のきかない身体を死ぬ迄酷使し続けなければいけないのだし、そんな身体が繰り返す「食う・寝る・出す」の様子を忠実に映し撮るしもべたるミンリャンとかカンションの共犯性にはまるで変化が無い様に思える。ただあのライムライトのオルゴールをどう理解してよいものか、ただ「老い」の象徴として見ればよいのか、それともその先の残酷な現実すらも見据えているのか…。復帰と見てよいのかそれとも訣別と見るべきかも分からないが、ただその背中には白いスクリーンの様な物を背負っていた様に思えるし、ポジティブな歩み出しと理解したい。にしてもこの作品を入り口に選んでしまった人からすれば「何を観せららているんだ…」になるんだろうな。

[流れ行く静かなる日常]　70点

窓の外を眺めながら雨風の音を聴く男、リー・カンション。体感10分くらい続くこの冒頭が本作品の全てを示している。一度は引退宣言をしたツァイ・ミンリャンも長年の盟友リー・カンションが病気に苦しんでいることを知って、それを映画にしたらしい。作中でも病気の治療中であることは朧気に明かされる。彼の患う病気については分からないが、多少なりともチラついた"死"という概念に対して、リー・カンションの生きた証をこの世に刻んでやるよ！という気概も感じなくはない。

本作品は意図的に字幕を排している。それは二人の孤独な人間は、言葉を発する機会もなければ、発したところで互いに伝わらないからだ。ということで、基本的にはボーッとしてたり料理を作ったり寝てたりと自由気ままな"時間"そのものを描いている。途中、私の記憶が抜け落ちている部分もあるのだが、彼ら二人がホテルの一室で会うシーンのキラキラした感じは眠気が吹っ飛ぶほど忘れがたい。オルゴール、良き。

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東京フィルメックス
邦題『日子』

『郊遊 ピクニック』で商業映画の監督から引退って話だったはずのツァイ・ミンリャンだが、では本作はなんなんですかね。まあそれはともかく、これも前作のドキュメンタリーである『あなたの顔』(これはしんどかったな）同様、それ以前のミンリャンにも増して一切の遠慮なく俺がやりたいことをやる感が炸裂している。セリフほとんどなし(上映前に、そのセリフすらミンリャンの意図により日本語字幕はつけられていないと説明あり）、異様な長回し＆固定多用、説明的なショット、コンテイニュイティに配慮した繋ぎも敢えて用いない。ミンリャン作品の常連、というかもはやミンリャンの分身たるリー・カンション、本作では首の痛みを癒やすために街に出る設定で、これは曲がった首が治らない1997年の『河』と類似していて続編とみなすことも不可能ではないが、そんなことよりも本作に行き渡る「絶対零度の孤独」はただ事ではない。感傷も何もない。あの甘美なチャプリンの『ライムライト』のテーマが小さなオルゴールから延々と流れても、癒やしなど薬にしたくもない。後はあの我慢大会かという長回しで捉えられるマッサージのシーンは強烈。

• #2020藤原