Kuutaさんの映画レビュー・感想・評価 - 17ページ目

スウィング・キッズ(2018年製作の映画)

3.8

プロパガンダ

朝鮮戦争下の韓国の捕虜収容所・巨済島で、右も左もなく踊った若者の話。

壁に分断された世界において、人々は「左右」の移動が封じられている。閉鎖空間で生きているのは「上下」関係だけに見え
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女は女である(1961年製作の映画)

3.5

ハリウッドにオマージュを捧げた踊らないミュージカル映画。基本ずっとハイテンポでアンナ・カリーナが歌いたいと思えば歌うし、ライトの色も変わる。ジャンプカットも室内の移動撮影も流石に才気走っている。赤と青>>続きを読む

魔術師(1958年製作の映画)

3.8

奇術師の一行がある街を訪れ、科学者や警察官にインチキだと馬鹿にされつつネタを披露するという話。理性vs信仰、権力vs芸術の二項対立が巧みな光の演出で描かれていく。ベルイマンには珍しいコメディ。かなり見>>続きを読む

東京オリンピック(1965年製作の映画)

3.8

失敗した。これは良い環境で見るべきだった。市川崑による1964年東京五輪の記録映画。

聖火が日本にやって来る場面に始まり、開会式、競技、閉会式とシンプルな構成。平和のための祭典と、そこに参加した人々
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ジュディ 虹の彼方に(2019年製作の映画)

3.3

ジュディ・ガーランドが亡くなる半年前に行われた、ロンドン公演を軸にした伝記映画。見せ場となる歌のシーンはどれも良いが、それ以外は突き抜けた印象を受けなかった。私が彼女のリアルタイム世代ではない事、また>>続きを読む

アイネクライネナハトムジーク(2019年製作の映画)

3.8

今泉力哉作品。撮影、演出、脚本、全てが高品質にまとまった良作。

人生は小さな偶然の積み重ねで出来ていて、それを事後的に解釈する事で幸せかどうかを判断している。10年を一瞬で飛ばしてしまう脚本が非常に
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映画 ひつじのショーン UFOフィーバー!(2019年製作の映画)

3.8

クレイアニメの職人集団、アードマンの作品。ショーンの農場に子供の宇宙人がやって来るドタバタコメディ。映像だけで90分を見せ切る技量は流石の安定感。農場主が荒唐無稽な計画語る場面の手際の良さ、アイデア満>>続きを読む

美しい星(2017年製作の映画)

3.6

若干理屈っぽく、映画として弛緩した場面もあるものの、基本的にとても刺激的なSFだった。

実態が掴めずに終わってしまうタイプのお話だが、解釈しかけては白紙に戻すを繰り返している私自身が「信仰」に振り回
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イップ・マン 序章(2008年製作の映画)

3.3

日本兵の動きが全然空手っぽくないと思ったが、そもそも中国武術の描写からしてどう考えてもリアルではない、という前提を忘れていた。

昨年末から完結編が中国で公開中だが、向こうは映画館が休業続きで大変らし
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1917 命をかけた伝令(2019年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

IMAXで鑑賞。製作のきっかけの一つはBrexitだったらしい。フェイクニュースが溢れる時代に「正しい情報を伝える苦闘」をテーマに持ってきたのは慧眼だと思う。

特にラストの塹壕の前を走るシーン。国家
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ロード・トゥ・パーディション(2002年製作の映画)

3.0

アカデミー撮影賞を取っただけあって、映像は素晴らしい。でも、それだけな感じ。ゴッドファーザーの真似事をやっているが、脚本も演技もあまりに淡白で、画面の強さに内容が伴っていない。私のサム・メンデスへのネ>>続きを読む

映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ(2016年製作の映画)

3.5

石井裕也監督。「舟を編む」は未見で、個人的には「川の底からこんにちは」以来の鑑賞。

久しぶりに会う友達に対する「生きてた?」って言い回しは、この世代特有のものなんだろうか。観終えて一番に思った感想。
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アンダルシアの犬(1928年製作の映画)

-

よーわからんかったけど、蟻の所から似たシルエットがモンタージュされるのは普通の映画っぽいなと思った。

おっぱいがお尻に置き換わる所で「人間が二足歩行になったことで、体の前に付いているおっぱいが本来の
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サンライズ(1927年製作の映画)

4.6

言わずとしれた名作。不倫していた夫が妻と仲直りするサイレント映画。話としては田舎から都会に出て、田舎に戻ってくるだけ。地名も人名も明かされない寓話的でシンプルな筋書きなんだけど、様々な二項対立を乗り越>>続きを読む

ざくろの色(1971年製作の映画)

4.7

不勉強を恥じるばかりですが、基本的に欧米の娯楽映画ばっかり観てきた人間としては、大変なカルチャーショックを受けました。凄い…。

構図とアクション、編集、音響が揃えば映画って十分面白いんだなと。前衛的
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黒水仙(1946年製作の映画)

4.1

こちらもミッドサマー繋がり。親切にもアリアスターは製作にあたって影響の大きかった作品を10本も挙げており、観られる映画から潰していこうと思う。

舞台はイギリス植民地時代のインド。ヒマラヤにある元ハー
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C'est La Vie(原題)(2016年製作の映画)

3.3

2016年の7作目。これで短編は終わり。火事で両親を亡くして精神的にも病んだホームレスがひたすら持論を展開する。5作目のBasicallyの対になっているような作品。

セラヴィというタイトル通り?人
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The Turtle's Head(原題)(2014年製作の映画)

3.0

2014年の6作目。
ノワール風のオープニングから連なる、約10分間の下ネタコメディ。精神的に追い詰められ、周りの全てがどうでも良くなってしまうラストカットはアリアスターらしいけど、そういう分析もはば
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Basically(原題)(2014年製作の映画)

3.4

2014年の5作目。
LAの裕福な家庭で暮らす若い女優の独白。作り込まれた画面の中で色んな人が色んな行動を取っており、ミッドサマー風。アホな自分語りだけかなと思っていると、実は恋人との死別がトラウマっ
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Munchausen(原題)(2013年製作の映画)

3.4

2013年の4作目。
台詞なし。母親が息子を1人で送り出す話。ほんの出来心がきっかけで最悪の展開に。窓枠を使ったジャンプカット、室内での長回し、照明の変化を使ったテンポの良い心情描写。カップケーキから
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Beau(原題)(2011年製作の映画)

3.5

2011年の3作目。
鍵を無くした男が不安で狂っていく約6分の短編。小気味いい編集、不安感を醸し出す斜めのショット、嫌な赤と重々しい青のコントラスト、的確な音による煽り、ベルイマン的な顔のドアップ。笑
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The Strange Thing About the Johnsons(原題)(2011年製作の映画)

3.5

2011年の2作目。既に完成されている。

何気なく扉を開けた事で生じた家族の歪み。母親の「Everything is under control」が伏線になっている。まずいものを見ている時に家族が来
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TDF Really Works(原題)(2011年製作の映画)

2.0

ミッドサマー熱が止まらずアリアスターの短編を一気見してしまった。デビュー作は2分間の通販CM風。監督本人が笑顔で出演。これはひどい。

オズの魔法使(1939年製作の映画)

4.3

トトかわいすぎワロタ

この歴史的名作をカラーリングが似ているという理由でミッドサマーから連想したのはなんか申し訳なくなるが、ライオンのマントとか、エメラルドの都の手前に広がる一面のポピーとか、やっぱ
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ミッドサマー(2019年製作の映画)

4.1

アリアスター同じ映画しか撮れない疑惑

先行上映にて。ヘレディタリー同様、細部への妄執がエライことになっており、もう一度見るつもりで早々に考える事を放棄。昨日からフローレンスピューがただ飯を食う動画と
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37セカンズ(2019年製作の映画)

3.7

松崎健夫氏絶賛の新人監督。三幕構成に多層的な画面作りに、オーソドックスにきちんとした映画、というのが一番の印象。今後どんな風に進化していくのだろうか。

導入の巧さに舌を巻く。駅の職員の補助を借りて電
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GODZILLA ゴジラ(1998年製作の映画)

3.3

レビュー600本目。500本目を初代ゴジラにしたので、今回はハリウッド版をチョイス。観るのは高校生以来。

前半は原子怪獣現るのリメイク、後半はジュラシックパーク。ゴジラ要素はあくまで資金集めの看板、
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原子怪獣現わる(1953年製作の映画)

3.4

核実験で蘇った恐竜がマンハッタンを襲う。色んな映画の原点にある作品。ゴジラとの比較で観ると、日米の違いが出ていて面白い。

いきなりオチになってしまうが、怪獣の倒し方が「放射性同位体を打ち込む」なのが
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(1959年製作の映画)

4.0

ジョジョラビットもいいけれど

第二次大戦末期のドイツ。16歳の少年7人。貧富の差や思春期らしい悩みはあれど、普通の子供として暮らしている。軍隊から召集がかかり、軍国少年の彼らは大喜びで支度する。「靴
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エル・スール(1982年製作の映画)

4.0

父の心の見えなさと移り変わる娘エストレリャの心境を、陰影の効いた撮影で描く。窓からの光と冬の張り詰めた空気感。朝日に照らされていくエストレリャの表情、ベッドの母に寄り添う父。冒頭から宗教画のような構図>>続きを読む

晩春(1949年製作の映画)

4.4

キムギヨンの「下女」では自宅の一階が日常、二階が非日常として対比的に描かれていたが、今作もちょっと似た構造だったなと思い出して再鑑賞。小津作品は情報量が多過ぎて感想が全く書き切れない。

東西の中間に
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下女(1960年製作の映画)

4.2

金持ち一家に入り込んだ貧しい下女が、家の夫を奥さんと奪い合うドロドロ話。階段の高低使いで有名な一作。

娘と息子のあやとりをじーっと写しているオープニングから嫌な雰囲気が漂っている。絡み合っては形が更
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ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密(2019年製作の映画)

4.0

今の映画業界で、完全オリジナル脚本のミステリー映画を撮ってくれるだけでも評価せずには居られない。内容もとても良く練られている。面白かった。

古典的ミステリーの形式に楽しく乗っかりながらも、脚本のベー
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キャッツ(2019年製作の映画)

3.1

曲がどれも素敵なだけに、その料理の仕方に疑問。もっと良くなったのに、と思った。トムフーパーってレミゼもこんなダメだったっけ?

ど頭から揺れるカメラに酔いそうになり、いきなりテンションが下がる。ファン
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諦めるな:新しいギャラクシー・クエスト・ドキュメンタリー(2019年製作の映画)

3.0

「正直なトレイラー」で知られるScreen Junkiesが、名作「ギャラクシークエスト」のスタッフや出演者のインタビュー、この映画のファンの様子をまとめたドキュメンタリー。映画のメイキング集ではない>>続きを読む

クワイエット・プレイス(2018年製作の映画)

3.5

全てが嫌な方に嵌っていく息苦しさはホラー映画の醍醐味だと思うが、今作は日常の風景に「音を出せない」という条件を加えるだけで絶望的な状況を作り出している。

とはいえ、向こうも望んでこんな所に来たんじゃ
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