二つの季節しかないニッポン🇯🇵 😅



『あれ？ 春は？ 終わった？』
『あれ？ 秋は？ 終わった？』

近年、毎年こんな事を言っているような気がする。
でもそれは日本だけではないようで。

というワケで。

自身 超久々、トルコ🇹🇷の作品です。

カンヌ国際映画祭にて女優賞を受賞した本作。
トルコ人俳優 初の快挙だそうで。🏆
監督は10年前に鑑賞したパルムドール受賞作「雪の轍」の巨匠ヌリ・ビルゲ・ジェイラン。
「雪の轍」でこの監督のファンになったので。
秋のミニシアターにピッタリな198分の濃厚な作品。
存分に 酔わせて ください・・・


さて本作。　⚠️ネタバレあり⚠️


トルコ人の風習なのか？
まぁ、よく紅茶 飲むね！😅
劇中 何回飲んでたことか！☕️

すぐに思いつくのは「ファーゴ」、そして同じ年にパルムドールを獲った「落下の解剖学」、そしてこの監督の「雪の轍」。
やっぱり『冬&雪』が舞台の作品って絵になるね！
とても大好きなスチュエーション。
本作もまさに壮大、圧巻、圧倒的！
一瞬も飽きることのない超濃厚な198分を味合わせてもらいました。

閉鎖的な村で起こる人間の恐ろしさ、おぞましさ、愚かさ。
繋がりたいと願っているが、信念は曲げたくない。
人間とは？ 人生とは？ 生きるとは？
深く考えさせられた作品でした。

主人公は小学校の美術の教師の男。
同じ同僚とシェアして暮らす独身貴族。
視野を広げたく義足の女性と出会い交流を始める。
同僚も誘い3人の友情が冬の舞台で展開される。
美術の教師はひいきにしていた女子生徒にハメられ思わぬ事態に。
それを機に男女3人の友情も少しずつ壊れていく・・・

何気ない行動。　何気ない一言。

それが思わぬ事態を招き人生を崩壊させる怖さ。
男の行動、言動から一瞬も目が離せない見事な演出。

男の友人から気になる人へと変わる義足の女性を演じたメルヴェ・ディスダルが今回カンヌで女優賞を受賞。
てっきり教師をハメたあの女の子が女優賞を獲ったのかと思った。

ヌリ監督が得意とする重圧で濃厚な会話劇は今回も健在。
お互いに一歩も引かない会話のやりとり！
今回も必見です！

残念だったのは。

このタイトルなのに『冬』と『夏』の比率が悪すぎる。
『夏』のシーン あんだけ？

でも人間の『内なる恐怖』を描く時はやっぱり舞台は『冬』の方がいい！
監督もそこに気付いたんでしょう。

きっと誰にでも起こりうる物語。
夏 でも 冬でも。 田舎でも都会でも。

自分らしく生きるとはどうゆうことなのか？

人はそこに

『残るべきなのか？』『去るべきなのか？』

ラストの男の悟ったような表情が印象深い・・・

私もFilmarks 9年目。

そろそろ・・・・・・・


2024年 10月17日 10:30〜
新宿武蔵野観screen 1
💺133席
客入り　30人以上！

さすがにシニアばっかり。😅
上映時間198分。
途中退場してオシッコする人続出！😅

順次ロードショー公開されるとはいえ現在 全国で7館でしか上映されていない。
まぁ、この長さでは興行的に厳しいか😥

【複雑だが単純】

トルコは長らく日本の友好国だ。

日露戦争で日本がロシアに勝利し、トルコに対しても脅威だったロシアの力を削いだということがきっかけだった。

この作品は、”3時間を超える””会話が中心”の作品だが、配信になって自宅で3時間だと寝ちゃうかもしれないから、可能であればこの機会に是非多くの人に映画館で観てもらいたいと思う。

この作品は非常にエッセンスが詰まっていて、個々の登場人物の為人を云々するような作品じゃないし、この小さな村に起こった小さな出来事をスコープに、トルコや、ひいては僕たちの世界をも考えるような作品になっているように思うからだ。

この「二つの季節しかない村」の舞台となった村のあるアナトリア半島を含む地域は小アジアとも呼ばれ、東西文明が交差した場所として歴史の教科書で習うことが多い。

更に、アナトリアは、古くは青銅器時代に鉄の製錬に成功したヒッタイトの興った文明発祥の重要な地でもある。
また、ギリシャ文明の影響も大きく、サメット、ケナン、ヌライの3人が終盤に記念写真を撮っていたのはギリシャ様式の遺跡のある場所だ。また、ギリシャのスパルタと争ったトロイアはアナトリア半島の西端にある都市国家だ。
そして、その後、ローマ帝国、東ローマ帝国、オスマン帝国の支配を受け複雑な歴史を重ねることになった。

現在、アナトリア半島を占めるトルコは直前のオスマン帝国支配の影響もありイスラム教徒が圧倒的に多いが、民主的選挙が実施される民主主義国家で、NATO加盟国でもあり、財政の問題や死刑制度を維持していることなどから、なかなか上手くいきそうにないがEU加盟申請もしている、ある意味特殊な国家だ。

ただ、個人的には、古い歴史や様々な歴史的困難を経て、トルコには誇り高い人が多いのではないかと思ったりする。

この映画には副タイトルの英題があって、「About Dry Grasses」。
ただ、オリジナルタイトルは「Kuru Otlar Ustune」と云って、意味は「二つの季節の物語」らしい。

実は、この”二つの季節”という表現は巧みなレトリックのような気がしている。

二項対立というより、様々な対比を通じて、一見簡単そうに見えることも、これらが複雑に絡みあって解きほぐすのが決して容易ではないさまを見せているのではないのか。

そして、ただ、もとをただせば単純なのだと。

（以下ネタバレ）

アナトリアの辺境に位置する貧しく小さな村。

近代的な首都のアンカラや、2000年以上の歴史を持ち多くの帝国の帝都として興亡を繰り返したボスポラス海峡を跨ぐ大都市イスタンブールと対比されているのだ。

教育や教養が要求される教師という仕事に就いても尚、貧しく誇りの持てない状況。
もし、大都市で働いていたら......というサメットやケナンの葛藤。

女子生徒セヴィムらに訴えられたこと。先生と生徒、男性と女性という関係から考える違和感。

決して男性や先生優位なんてことや従属する関係などではないのに、慎重さや合理性が欠如したサメットやケナンの行動。
ここで面白いのは、校長がルールを諭そうとしても、様々な解釈や屁理屈を重ねて抗議するサメットやケナンのさまだ。
日本を含む先進国の民主主義国家だって法律を勝手に解釈して理屈をこねるやつはいっぱいいて、それは大概男性だったりする。

そして女性解放や社会主義を主張する右足の膝から下を失った義足のヌライの登場は、サメットとケナンの関係に変化をもたらすと同時に、ヌライに対する対応とセヴィムに対する対応の差を映画を観ている人にクローズアップさせているように思う。同じ女性に対してなのにということだ。

滑稽なのは、ヌライの活動に対して理解を示そうとするところだ。セヴィムに対しては感情的だったのに。

2人に募るヌライに対する恋愛感情。

ヌライとの関係を密かに深めようとするケナンとサメット。

ジェラシーをテコにサメットがヌライと一晩を過ごし、口止めされているにも関わらず自慢げに話してしまうさまは、男には世界共通のことのように思える。
男の友情なんて、こと女性に関してはあってないようなものなのだ。

こうして3人の関係も含めて様々なことが終わってしまうが、もうひとつ重要なのは、サメットのセヴィムに対する想いを話すラストの場面だ。

映画のストーリーとしては、お土産のコンパクトを渡す冒頭の場面から一周した感じがあるのと同時に、イスラム教世界を含む男性優位の社会の成熟しかかった女性に対する目、そして、そうした女子生徒でも男性を手玉に取るような行動を取ることもあるということ。

ここに描かれたことは実は世界中のあちこちに多くあるようなことだと皮肉たっぷりに見せいているのではないかと思う。

メルベ・ディズダルはヌライ役でカンヌの最優秀女優賞を獲得している。

やっぱり長い映画なので配信だと寝ちゃう人がいるかもしれないと思う。

是非映画館で集中して観てみて下さい。

僕のおすすめ。

原題は『ドライハーブ』それを上手く惹きつける邦題にしているので、確かに今二つの季節しかない異常を感じる地球だからこそ敏感になり、これは観るべきものかも？とトルコの監督ヌリ•ビルゲ•ジェイランの世界（198分）を初体験しました。

まるで絵画を見ているのような季節風景の長回し、膨大なる台詞劇、聞き慣れないトルコ語の応酬、辺鄙な村、素朴な暮らし、合言葉は紅茶、しかしスマホを持つ現代。

鑑賞後にすぐにレビューを書けない作品だった。深い。人間の持つ嫌な部分を見せつけられて苦々しく重くなる。一晩寝ても明確に心に残ってより浮かんで来るし、作品として優れているのは理解出来る。しかし主人公を好きになれないと198分が長い。


トルコ東部の雪深い村の小学校に赴任し4年が経つ美術教師サメット。一見穏やかで村人からも尊敬されているが、内面は裏腹。凄く人間の小さな男。自信過剰で承認欲求が強く、なぜ自分がこんな田舎に4年もいるのかを常に不満一杯で暮らす独身男。

美少女の生徒セヴィムに目をかけ特に可愛がり、休暇の土産に彼女だけにコンパクト型の鏡なんか渡すから後に自業自得の災難が降りかかる。

同僚のケナンと同居しているが、ある時、2人に思いもよらぬ生徒からの告発が起きる。その犯人探しに必死になるが...

知人の紹介もあり、美人の英語教師ヌライに近付くサメットだが、彼女はテロに巻き込まれ片足が義足で心を閉ざしているのだった。

ヌライは明るいケナンに気持ちが向いているよう。サメットがそれを知ったある日、ヌライから2人でと夕食に招待される。しかし、サメットはケナンには告げずに抜け駆けして1人でヌライ宅を訪れる。

夕食後、政治的思想論や自己の求める理想的生き方をまるで言葉の闘争の如く言い合うシーンは一番の見せ場。プライドの塊で中身は薄っぺらなサメットと社会派で自分を持っているヌライは相反するのだが、サメットは本心を見破られないよう必死、心の中はヌライを抱くことしかなく...男と女になる夜でもあった。

あまりにも棘が刺さるようなヌライの言葉や睨み付けるような眼差しや雰囲気を私は好きになれないが、身体に自信がないから言葉で鎧を付けていたのか？しかし好きでもない男に容易く女になるのも釈然としないかな？
このシーン時に監督の遊びなのか？言わば観客に一息吐かせる？サメットが頭を冷やす？のを一緒に体験させられる（劇中から抜け出てセットの裏側を撮す）シーンが面白い。

ようやく季節が変わり、サメットは念願の異動になるが、その前にセヴィムに本心を聞き出したく迫るシーンの臨場感。
結局、サメットは自己憐憫のままか？そこを逸脱しステップアップする時だったのか。
セヴィムの美しい顔のアップはいつまでも観ていたかった。

尺長をお得意とする監督だが、人間の持つ細かな機微、人間の嫌らしさ、狡賢さ、滑稽さ、素朴さ、無意味、生きる力、どんな状況であっても人生は続くということを、この尺だからこそ伝わってくるのだろう。見応えは十二分でした。