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私たちの世界
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目次

私たちの世界の作品紹介

私たちの世界のあらすじ

2007年、独立前夜のコソボ。いとこ同士のふたりの女性ゾエとヴォルタは、親の決めた相手と結婚するぐらいしか未来のない退屈な田舎での生活を捨て、より自由な生活を求めて車で首都プリシュティナに向かう。ふたりはプリシュティナ大学に入ろうとするが、志望した英文科に入れず、不本意ながら経済学科に入学する。だが、そこで待ちうけていたのは大学内部のさらなる混乱だった。そんななか、ふたりは体制に反抗的な若者たちのグループと知り合う。『燃ゆる女の肖像』(19)に主演したコソボ人女優ルアナ・バイラミの監督第2作である本作は、独立を控えたコソボの混乱を若者たちの視点から描いた青春映画だ。ヴェネチア映画祭オリゾンティ・エクストラ部門で上映。

私たちの世界の監督

ルアナ・バイラミ

原題
Bota Jonë/Phantom Youth
製作年
2023年
製作国
コソボフランス
上映時間
95分
ジャンル
ドラマ

『私たちの世界』に投稿された感想・評価

Nove
3.7
コソボ独立の街、田舎から家出同然で出てきた、いとこ同士の二人。幼い頃から姉妹のように過ごしていた二人は、大学で英語を学んで今までの生活から抜け出すこと望んでいる。
しかし、大学に来てみると、希望する英文科には入れれず、講義をする教師もいない。
若者たちは、行き場のない怒りを大学にぶつけるが、何も解決しない。
仲の良い二人も、それぞれ別々の行動が多くなる。
先が見えない状況で、UNも助けにはならない。
違う道を歩みだす二人は、お互いに理解しあえなくなる。
「家族だから貴方を守る」
「私は夢を追いかけたい」
どちらが正しいではない。
選択は各自の自由で、そこで何をするかが大切だ。
しかし、その夢は大きな力によって立ちふさがれていく。
この状況を映像だけで、理解した積もりにはなれない。
ただ分かるのは、世界には生まれた国によって、大きな困難を背負っている若者がたくさんいるということである。
ラストカットの鋭さが、先の見えない明日とリンクする。

東京国際映画祭2023にて
3.9
【夢と「自分の人生に向き合う事」の違い】【東京国際映画祭】
■あらすじ
自らのルーツであるコソボを舞台にふたりの女子大学生の関係を描く。ヴェネチア映画祭オリゾンティ エクストラ部門で上映。

■みどころ
2人の女子大生が暴動の耐えないコソボを舞台に学生生活を迎えるお話。

あるホームビデオから本作は始まる。
そこには幼少期のゾエとヴォルタを映すが、その後にコソボでの暴動シーンに変わる。
ホームビデオは「絶対に夢を見るな」という意味深なメッセージを残して終わる。
ゾエとヴォルタは村を出て通訳者として金稼ぎたいっすわーとかアメリカ人と結婚するわーなどの些細な話をしていた。
やがて大学へ進学するも、大学は学びたかった英語が定員いっぱいで無理と断ったり申請している内容と異なったり、挙句の果てには教室に来たのに講師が来ていないと突っぱねる杜撰な対応を受けてしまう。
コソボの暴動は大学で無関係なゾエとヴォルタにペンキで汚れる被害、学びたかった大学で学べない形で裏切ってしまう。
そんな2人は寮生活を始めてから3年生のクラスメートと仲良くなり、先輩らと先輩彼氏と大学生活を送るが

・街は廃墟だらけ
・テレビは壊れかけてる
・ラジオからは暴動の暗い話しか出ない
・大学卒業しても就職は安定しない

という情報が蔓延している。

やがてゾイはクラブで踊って人を引き付ける先輩に憧れ、ヴォルタは友人とツーリングをして違う目的を歩んでいくが…

本作はコソボの暴動を舞台に大学で学んで就職を目指す話で、「この世界の片隅に」のような映画である。
とはいえ「この世界の片隅に」と違って基本的に陰鬱な展開で、学べないことへのストレスや状況悪化するコソボの状況のストレスで日々疲弊していくゾエ・ボルタらの生活を観ることになる。

この映画では「夢を観てはいけない」「人生は選択よりも向き合い方の方が大切」という言説を解くシーンが多いが、この映画では
(1)辛い状況下において何を拠り所にしていくか?が幼少期に同じ場所へ住んだ仲であっても異なること
(2)拠り所の違いによって衝突を起こすが、善悪がないにも関わらず善悪らしきものが発生すること

を映していて、そこが芳醇な映画だと感じました。

ヴォルタは一緒に過ごしたゾエを家族として大切にする・守る事を幸福と感じている。それはコソボの不安定で鬱屈している世界だからこそ身近な人との時間を大切にしたいという日々の生活を俯瞰して、出来る事をする判断を取っている。
対してゾエは大学生活で出会った先輩を通じて、彼女のようなダンサーに憧れて少しずつ彼女に近づこうとしている。それはコソボの不安定で鬱屈している世界に対する彼女なりの向き合い方で上手く付き合う判断を取っている。

そんな答えのない価値観の違いの善悪らしきものへの付き合い方、状況の悪い中であっても「笑って過ごそうよ」という生存バイアス、状況を打破しようと動こうとする姿を鋭く映した一作である。
そこには夢を追う事と「現実をどのように向き合うか?」が必ずしも一致しない事を見せるし、一致しないとしても目指す事の善悪は存在するか?を映していて見入りました。
3.5
TIFF2023の1本目。

『燃ゆる女の肖像』に出演した女優、ルアナ・バイラミの監督作品。
自らのルーツであるコソボを舞台にふたりの女子大学生の関係を描いている。


テーマが重く、作品全体として特に後半は重い空気が漂っていたように思う。

何度も煽って本音を大きな声で言わせるシーンは印象的だった。

冒頭のホームビデオのシーンをラストにも持ってきて、あの頃は良かったというニュアンスを持ってくるのは田舎での生活を捨ててきた彼女たちの選択に対して皮肉のようなものを感じた。
全てがうまくいくことなんてないって思うと悲しい。

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