フランス巨匠 エリック・ロメール監督作品

「六つの教訓語」シリーズの第3作

敬虔なカトリック信者である主人公の男が、女医と学生という対照的な2人の女性の間で揺れ動く心情を、美しい映像と会話劇で描く

かねてからの願いだったロメール作品の中で最も観たかった作品であり、このためだけにブルーレイボックスを買ったと言っても過言ではないほどめちゃくちゃ楽しみにしていた作品

結論から言うと、ようやく観られたという感動を余裕で上回るほどの圧倒的な面白さで、暫定ですが個人的にはロメール最高傑作であり、映画史に残るレベルのマスターピース
どんな頭脳があればこんな天才的な脚本が作れるのだろうか

こういった何が起こるわけでもないのに、思わず酔いしれてしまうほど上品でウィットな会話劇は永遠に観ていられる
というか観ていたくなるほどあまりにも洗練された緻密な映画作りにはもはや感心してしまう

基本的にロメールの映画はカラー映像でこそ映えるような作りだと思いますが、本作はそれを大きく覆してくる
とにかくひとつの映画としての完成度が高く、美しくスタイリッシュなモノクロ映像に雪景色なんか映させるのはもはや反則レベル
特にジャケになってるシーンなんかは、あまりにも構図が美しすぎて鳥肌が立ってしまうし、ここだけでも100点満点

宗教的や哲学的な話をするので割と取っ付きにくいストーリーかと思いきや、全くそんな事はないので会話劇が好きなら誰でも楽しめるはず(音量が極端に小さい事だけは気になったけど)

まあとにかくこの主人公の男が、なんとも言えないアホなキャラクターなんだけど憎めないしめちゃくちゃ面白い
熱心なカトリック信者という建前があるはずなのに割とガバガバで、禁欲的とか言ってるくせに無理に正当化しながら矛盾しまくりの行動も滑稽でむちゃくちゃ笑える

特に、毛布にくるまって無表情でソファーに座ってる姿なんかめちゃくちゃシュールで吹き出すほど笑ってしまった

ロメールのセンスと才能が遺憾なく発揮されている作品なので、ファンであれば超絶必見の1本かと

〈 Rotten Tomatoes 🍅95% 🍿87% 〉
〈 IMDb 8.0 / Metascore - / Letterboxd 4.1 〉

2021 自宅鑑賞 No.255 Blu-ray

• #－AllTimeBest－

エリック・ロメール、やっと二作目。

哲学、宗教、恋愛感、、もう最初から最後まで、男と女の会話劇。ハタミからは、かなりめんどくさい会話の数々。でもなぜか惹きつけられる。会話というよりバトル？男と女の駆け引き？これがこの監督の真骨頂なのかな？とにかくお洒落です。

街角で突然ナンパしても、フランス男はさすがに上手い。まあ、ナンパするのが、若きジャン・ルイ・トランティニャンなんだから、あたりまえか、、。

フランスの街、クレルモン。どんな街か知らないけれど、雪の街が美しい。撮影はネストール・アルメンドロス！

この物語は一人称で語られます。

クリスマス間近のある日曜日…タイヤ会社の技師である"私"は14年ぶりに再会した旧友に誘われるままにモード家を訪れます。モードは離婚経験のある美しく知的な女医。旧友は"私"を残して帰り、"私"とモードの2人きりに…ただ、"私"には、意中に気になる女性がいたのです。

"私"と旧友、そしてモードの、哲学的であったり、人生観や宗教観を交えた会話がとても興味を引きます。
数学の確率論やパスカルの"賭け"の引用…小難しいことは知らなくても、それが逆に滑稽に思えてきます。

そして、敬虔なカトリック教徒である"私"の心の中に女性に対する欲望が見え隠れしているのに、信仰心に縛られて素直になれない様子がじれったくもあり面白おかしいです。

モードは無神論者で自由で妖艶…
意中の彼女フランソワーズは対照的に、敬虔なカトリック教徒で清楚…
2人の女性の間で揺れ動く優柔不断な独身男の"私"…

極めてありふれた構図ではありますが…エンディングで気付かされる人物の関係図の巧みさに感動します。

男にとって、自身がこだわり続けてきた理屈よりも相手の感情を優先した末に出たラストの言葉はお見事！