カフェの女主人テレーズには16年間消息を絶っている夫がいる
ある日夫アルベールにそっくりな男を見かけるが彼は記憶を失くしていた
最初はおそるおそるといった感じで男の後を追い行動を見つめるテレーズ
さりげなく話しかけた後少し距離を置いて歩く
テレーズの距離の取り方がいいなと思った
男の方もどことなく紳士的
何度か会うにつれ夫だと信じて疑わなくなっていくテレーズ
食事して踊っていい感じになってるのを見ると“夫” であったことにこだわらなくても二人で新しい恋をしたらいいのになって思った
テレーズは熟年と言えるくらいの歳だけど熱を帯びた目で男を見つめはにかんで微笑むところは恋する少女のよう
それに対して男の居心地悪そうな顔
テレーズは男の後頭部の傷に気付きもう二度と記憶を取り戻す事はないと絶望しかける
去り行く男にテレーズは思わず「アルベール!」と叫んでしまう
様子を伺っていた顔見知りの人たちもそれに呼応するように口々に名前を呼ぶ
そして男は立ち止まり両手を上げる
一連の流れが舞台演劇のように劇的
もしかしたら男はつらい記憶を呼び戻したのかもしれない
忘れている方が幸せなこともある
でもテレーズにとっては一縷の望みが見えた瞬間
ラストのテレーズの希望に満ちた顔が怖くもあり哀れでもある