旅と本が好きだというアラン•コルノー監督の異色作。
イタリアの作家アントニオ•タブッキの同名小説の映画化。

特典映像で監督がたっぷり語っている様子を見れただけで多幸感でスコアupになっているかもしれません。なんかチャーミング（話しながらも組んだ足のズボンの裾から手を入れて脛を掻くという自然体でした）
とにかく監督がインドという国、人、文化、宗教の全てに魅せられて、小説の世界を実写化するのに夢中だったことを目を輝かせて語っていました。
お得意のフィルム•ノワールから少し抜け出したい気持ちもあり、矛先を変えて別世界に踏み込んだ意欲作とのこと。


◉ストーリー
ロシニョール（ジャン＝ユーグ•アングラード）はインドで失踪した友人を捜しに初めての国を訪れる。各地を彷徨い、旅しながら、目に入るもの全てに今まで感じたことのない感情で心がざわ付き揺らいでいく。
そこには貧民窟があり、不気味な容姿の女占い師、鼠が走り回る不衛生な病院、空港の夜のロビーは翌日の便を待つために、まるで死体のように布を掛けて何十人も並んで床に横たわり眠る人々...
しかし夜景は美しく、神聖な寺院では息が止まるほどに清められる心身。
結局は友人を捜しながら自分のアイデンティティを探す旅、自己を顧みる旅となる...



サラリと観ると面白くないと感じるかも知れない。ただ、若いジャン＝ユーグ•アングラード（撮影時32歳）の演技に惹き込まれる。



◎特典映像（撮影より10年以上？も後のインタビュー）
『ベティ•ブルー』の2年後の作品となったジャン＝ユーグ•アングラードは思い出しながら語っている。
「当時はまだ若く、監督からの指示は漠然としていたため演技することに悩み、インドに馴染めずで、精神的に辛い撮影だった【とは言えWikiで調べたら、この作品で出会ったインド人女優（ジャケ写の女性かな）と後に結婚してた】ただ、年齢を重ねた今、この作品があったからこそ俳優としての表現の基盤となり、その後の自分の糧となったため、コルノー監督には感謝しかない」
その言葉を聞いて内容が更に特別なものに変わった気がした。


コルノー監督らしさは感じないながらも、インド好きな方にもオススメしたい良作でした。

ぐあぁなんじゃこりゃわけわからん！
だけど、わからん、眠かったで済ませるのは、ちょっと違うような…
インドだからか！？
特典映像として予告編が入っていたのですけど、

「夜、熟睡しない人間は多かれ少なかれ罪を犯している。彼らは何をするか。夜を現存させているのだ。ーーモリス・ブランショ」

って予告編からわけがわからない！でもなぜか惹かれる！
インドだからだな！
友人を探して、ボンベイの売春窟から高級ホテル、病院、列車、寺院を旅する主人公。
そこで出会う、階級もいろいろな人々。
これは原作を読みたくなるなあ。
インドって何かそういう、不思議な部分の説得力ありますよね。

37年前のインド。アパートもホテルも病院も暗く薄汚れ、密集し、人が溢れていて、怖ささえ感じるけど、こんなマンマな映像が観れるのは貴重だと思う。異国情緒たっぷりで、楽しめました。内容は、若干難しい部分もあるけど、ラストに「あれ？」って、ぼんやり気付けるので、納得出来ます。勿論、内容も悪く無いけど、やっぱり当時の外国人から見たリアルインドの記録が凄いです。

主人公ロシニョールはインドで消息が解らなくなった、友人グザヴィエを探しにボンベイにやって来た。彼が会っていた娼婦ヴィムラから貰った手紙を手がかりに足跡を辿る旅となるのですが…。



ネタバレ　　↓
(長いのでスルーして下さい)


ロシニョールは、ヴィムラからグザヴィエは病気でモンスーンの時期に病院へ行ったと言う事とマドラスの神智学協会へ手紙を書いていた事を聞きます。
まず、病院を訪ねます。病院の外の壁沿いの道では、沢山の人々が寝たり、生活している。友人を探している事を医師に話すと、お薦めしないが病室内を見て探せば？と言う。薄暗く不衛生な共同病室に入ると広い空間に無数のベッドが50cm間隔くらいにズラッと並ぶ。イメージは野戦病院。重篤な感じの患者やその家族がいる。グザヴィエは居ない。
ボンベイのヴィクトリア駅では、駅構内で人々が床に寝て、列車を待っている。列車でマドラスへ向かい、車内で、ペーター·シュレミールという偽名を使う男と出会い会話した。
その後、神智学協会を訪ねるとグザヴィエからの手紙を読んでくれた。
「予期せぬ事が起こり、協会へ戻れません。私は夜歌う鳥になります。」とゴアの消印だった。
ゴアへ向かう途中、待合室で障碍のある女占い師に、ロシニョールは自分の事を占って貰います。彼女は、彼自身が存在していないので何も見えず、占う事が出来ないと言う。
カラングートの海岸で出会った少女にグザヴィエの特徴を話すとホテルへ行けと言われ、フロントマンやウェイターにグザヴィエの事を聞く。ゴアの高級ホテルへ行けと言われ、レストランへ行くと美女と出会い食事をします。
彼女に自分自身の事を聞かれ、友人が行くえ不明の私を捜しているが、彼は私を見つけられないと話し、今夜と同じ様に食事をしていた自分を見ている男がいて、その男と一緒に食事をしていたのは貴女だったと言う。(面倒臭い言い回し)
食事を終え代金を払おうとすると、すでに誰かが支払っていた。いったい、誰が？ 何故？
ロシニョールが探していたのは、実は失踪した自分自身だった事に気づくのだった。

良く解んなかったのは、寝台車で出会う元医師の男との会話や神智学協会の博士との会話で、無知な私には良く解んなかった。
が、本作の目玉は障碍のある女占い師だと思います。監督は、ボンベイに沢山いるむごい見た目の人の中から最もむごい人を見つけたと言う。若い女性で羽の様に軽く、身長約70cm、盲目で口がきけず、耳も聞こえない。運勢を語る事で実際に30人を養っていたらしい。観て衝撃を受けました。貧しい家族を彼女が養ってるらしいが、観てて苦しくなりました。それでも考え方を変えれば、小さな彼女が家族を救ってるのは凄い。家族が彼女を大切にしていると信じたい。もしかすると神の遣いと言う捉え方かも。
とにかく、リアルインドのインパクトが凄過ぎて、ハンマーで頭を殴られた様だった。内容は、難しくしてる部分もあるけど、結局、ロシニョールは、自分を探していたって話。気になったのは、主人公は生きてるんだろうか？既に死んでる様にも思えた。原作読んでれば解るのかな？
地元の食堂もかなり汚なかった。無理だぁ～(^^;

＊のんchan、ありがとう☆