【死を考える③】

※ヨルゴス・ランティモス特集③

「キネッタ」で”死”を演じる野心的な作品を撮ったのだが、この「アルプス」では、更に想像の向こう側にある死んだ人が、さも生きていたように演じるという作品にチャレンジしている。

途中「死は始まり」と云ったセリフがあるが、それは終わりと始まりを曖昧にすると同時に、演じるものと演じられるものの境界も曖昧にしていく。

ヨルゴス・ランティモスは人生とは演じることと同義と言っていたらしい。

僕たちは実は理想の自分を自分自身が演じ、常に曖昧なところで生きているのかもしれない。

「キネッタ」のレビューでも書いたが、ギリシャは、キリスト教のひとつギリシャ正教が大勢の国であるものの、もともとはギリシャ神話からわかる通り、多神教の国で、おそらく死や生に対する考え方や理解も他の国とは異なるのかもしれないと改めて考えたりした。

2021年259作目

人間関係のパフォーマンス。

ずーっと観たかった本作！
JAIHOで配信してやっと観れました。
面白かったです。

他作品同様に監督の得意技である
ディストピア的な世界を持つ作品ですが、
本作の世界観は現代社会において
大体の人同士の人間関係は、
パフォーマンスで終わってしまうことの
メタファーであると思いました。

頑張りましたが全然まとまらず…
長文になってしまいましたが、
お付き合いいただけると幸いです。(笑)

まずタイトルのアルプスは組織名です。
アルプスは家族を亡くした遺族のために、
故人になりきり喪失の哀しみを癒す
サービスを提供しています。

セリフでも説明がありますが
組織がアルプスと名乗っているのは、
アルプスが他の山脈に取って
代わることが出来るからであり、
※故人に取って代わるように
メンバーを表すものではないのです。

つまりこの世界線での人間関係は、
取って代わっても問題無い程度で、
パフォーマンスをしてるだけに
過ぎないのです。(分かんないけど)

だからこそ依頼者はそれで満足し、
彼らは依頼者の物語に宿り続け、
パフォーマンスを行います。(たぶん)

一方組織としては重罪があり、
それは対象の故人から離れることです。
少しでもエゴ出してしまった際には
キャラと物語が無くなってしまう状態、
つまりパフォーマンスが出来なくなり
彼らは死んでしまうのです。(きっと)

登場人物の中の看護師と体操選手に
注目して観ていくと分かり易いです。

一番印象的だったのは、
最初のシーンと最後のシーンでの
体操選手とトレーナーのやり取りで、
本作の全てを集約していると思います。
(ここは意図的にだからそのはず)

ヨルゴスランティモス監督の
登場人物の描き方は特徴的ですよね。
籠の中の乙女は人工的な世界から
登場人物が逃げるのに対して
アルプスは逆に人工的な世界を
広めていこうとしています。

このディストピア的世界の面白さは
ロブスターで爆発しましたが
本作が籠の中の乙女とロブスターの
間の作品ということを知った上で見ると、
更に楽しめるかもしれません。

ただ籠の中の乙女もロブスターも、
直感的に理解出来る内容なのに対して、
本作はそうではないのが難点です。

人間がいかに自分の欲するものだけを
相互交流から得ようとする生き物か、
そして人間関係のパフォーマンスの中で
アイデンティティに苦しむ姿を、
コメディと悲劇、温もりと暴力などを
交錯させ見事に描いた作品でした。

監督のファンはぜひ！

"私がお宅に癒しに伺います。最初の4回は無料です"

【STORY】
　愛する人を亡くした人々の喪失感を癒すため、故人を演じる謎の集団“アルプス”の話。


【感想】
《9/3から観れる作品3貫》3貫目

　ずっと観たくて、海外版をいつか輸入しようかとまで迷っていた今作がついに日本で観れた！JAIHOに感謝ですね！

　やっぱりランティモス監督は天才でイかれてるわ！これまたとんでもないぶっ飛びブラックコメディ。
　「アップライトはもう言ったよ」って誰か突っ込んでくれ。ツッコミがあると期待するシーンでツッコミを省く監督の意地悪さ。モヤモヤする！！

　全然話噛み合わないし。何がしたいんだこいつら！笑

　世に溢れる親切の押し付け、偽善的なくだらない言葉達への皮肉かな。すごいの観れた。

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観た回数:1回
直近の鑑賞:JAIHO(21.09.05)

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