『ライトハウス』
原題 The Lighthouse.
映倫区分 R15+.
製作年 2019年。上映時間 109分。
ロバート・エガース監督が、ロバート・パティンソンと名優ウィレム・デフォーを主演に迎え、実話をベースに手がけたスリラー。
アメリカ・ブラジル合作。
外界と遮断された灯台を舞台に、登場人物はほぼ2人の灯台守だけで、彼らが徐々に狂気と幻想に侵されていく様を美しいモノクロームの映像で描れる。
また、物語は、1801年に実際に起こった悲劇『スモールズ灯台の悲劇』と呼ばれる事件にある程度基づいてる。
元ネタの2人の灯台守は、ともにトーマスという名前で、嵐の中、灯台に閉じ込められてしまったそうで、一人が死ぬと、もう一人は気が狂ってしまったと云われてます。
その他、作家ハーマン・メルビル、ロバート・ルイス・スティーブンソンの航海文学の古典や、H・P・ラヴクラフトの超自然的な色合いの宇宙ホラー物語、アルジャーノン・ブラックウッドやサラ・オーン・ジュエットなどの影響を受けている。

1890年代、ニューイングランドの孤島。
4週間にわたり灯台と島の管理をおこなうため、2人の灯台守が島にやってきた。
ベテランのトーマス・ウェイクと未経験の若者イーフレイム・ウィンズローは、初日からそりが合わずに衝突を繰り返す。
険悪な雰囲気の中、島を襲った嵐により、2人は島に閉じ込められてしまう。。。

2016年の長編映画デビュー作『ウィッチ』からちょうど3年後に公開されたロバート・エガースの長編映画2作目の今作品。
この2作品は、徐々に夢中になり始めているA24ちゅうインディペンデント系エンターテインメント企業からリリースされたものです。
A24がリリースする多くの作品が、深読みすれば難しいが、深読みしなければ易いストーリーの、芸術性とエンターテインメント性の絶妙なバランスを持っているのが特徴かな。
今作品では、
ダークで呪術的、そして超現実的でいて心理的といった感覚をすべて味わえました。
ダークな要素に不意に伴う狂気の笑い、加えてグロさの感覚は観終えても除けません。
19世紀末、風が吹きすさぶニューイングランドの岩だらけの島とちゅう、かなり閉塞感のある舞台設定。
四方を暗い嵐の海に囲まれ、灯台が不吉にそびえ立っている。
通常、灯台のイメージてのは、聖域や希望からくる暖かさや生命を連想させる。
しかし、今作品のタイトルである灯台は、これらのイメージを完全に覆し、精神病院を思わせる悪夢的なイメージに置き換えられてる。
たった2人の不幸な主人公を登場させ、それ自体がほとんどキャラ立ちしている。
ニューフェイスの灯台守のイーフレイム・ウィンズロー（ロバート・パティンソン）とベテランのトーマス・ウェイク（ウィレム・デフォー）は、単調さと孤独の増大から逃れようと必死になっているうちに、徐々に心を失っていく。
それが映画の終着点に向けて進むにつれて展開する恐ろしい事件のきっかけとなるのやけど。。。
主人公たちの灯台は、真っ白な外壁と透明なガラスドームで重要な光源を保護し、冷たい灰色の空間に反射させるため、最初はかなり控えめで慈悲深くさえ見える。
暗闇、
　　死、
　　　災害。
それらに対する障壁として定められた目的に確かに合致しているように思われる。
しかし、建造物の陰になった内部を深く掘り下げ、螺旋階段を上り、暗闇の中の孤独な光に向かって進むと、その本質は徐々にはるかに不吉な様相を呈していく。
催眠術のような、ほとんど眩しい光の質は、目を反発して魅了し、狂気とパラノイアに感染して、何が本当で何が嘘なのか見分けることができず、自分自身さえ忘れて、時間が経つことに対する知覚が歪んでしまう。
余談ながら、ウェイクが裸で立ち、目から光をウィンスローに照射する夢のシーンは、ドイツの画家サッシャ・シュナイダー(ドイツの画家、イラストレーター、彫刻家)が1904年に描いた『"Hypnosis"(催眠術)』を引用したものとされてます。
サシャ・シュナイダーが自らの性的志向（ゲイであること）に苦しんだ画家であることに加え、シュナイダーとほぼ同時代を舞台としたこの映画では、個人的見解では、背景は同性愛もうしろメタファーとしてあるんちゃうかと思います。
イーフレイム・ウィンズローのキャラを通してこそ、この狂気へと徐々に堕ちていく様を目撃することができ、光の本質がより明らかになる。
冒頭でウィンスローがその事実を指摘するほど、とっくに光に支配され、神に見捨てられた岩に息を引き取るまで住むよう呪われた迷い人であることが強く示唆されてる。
しかし、ウィンスローをなだめすかして、彼の "世にも奇妙な物語 "に耳を傾けさせ、酒を飲ませることができた。
しかし、灯台、そして風の吹きすさぶ音や一つ目のカモメの鳴き声など、呪われた島のあらゆるものが、その目標が達成されないようにと、彼に対抗するために共謀したように思われる。
今作品全体に多くの神話が散りばめられてて、老灯台守トーマスの話は、色んな文学、名画などの引用が多い。
主役の二人はギリシャ神話に登場する人物を表してるようで、ウェイクは、海の老人と呼ばれた予言の海の神プロテウス。
ウィンスローはプロメテウスを、タイタンでトリックスター(神話や物語の中で、神や自然界の秩序を破り、物語を展開する者)と呼ばれる人物で、神々に逆らって火（灯台の光で表現）を盗み出す者。
今作品はA24リリース作品らしく深読みすればするほど迷路に嵌まる作品で、好みが二分する作品と云っても過言じゃないと思いますが、個人的には嵌まった作品でした。

🔸Film Diary🔸
▪️本年鑑賞数 :2022-035
▪️死ぬまでに観たい映画1001本-※※※

🖋『スパイダーマンNWH』でも怪演を見せてくれた名優ウィレム・デフォーが、新生『バットマン』の主人公に抜擢されたロバート・パディンソンと共に凄い狂演を魅せてくれる作品です。最初から先後まで2人の灯台での密室劇、迎えのこない孤島で徐々に狂気に満ちていく2人とその惨劇を描いただけの物語ですが、とにかくそのロバート・エガース監督の演出と映像のこだわりで、とても不穏で恐ろしい作品に仕上げてしまうのがほんと凄い！！と思わせるサスペンススリラーです。

🖋 とにかく前述のウィレム・デフォーとロバート・パティンソンの圧倒的な狂気のパフォーマンスが半端ないです。二人の魅力的な俳優による孤島の舞台での演技合戦は見るものを惹きつけてやみません。ウィレム・デフォー演じる灯台守りの主、トーマスの変人ぶり、新人の灯台守りウィンズロー演じるロバート・パディンソンの狂っていく演技は不快感すら感じるほどの演技です。この不快感がある意味爽快なんですね。アルコールと取り残された不安が入り混じり、だんだんと現実と幻想が入り乱れ、悪夢に没入していくその様と時折投げ込まれる汽笛の不快な音が見事に入り混じって不穏で怖ろしい世界を創り出しています。

🖋また映像でもこだわりが。モノクロでほぼ正方形の画面のビスタサイズが1900代前半の古典的な白黒の怪奇映画のような雰囲気を醸し出しています。あえて鮮明にしない映像と相まって、闇の暗さを観客が覗き込むような窮屈さがこれまた不穏な空気を助長しています。

🖋本作、『ミッドサマー』『mid90s』 のA24製作で、『ウィッチ』のロバート・エガース監督作品、なおかつウィレム・デフォーとロバート・パティンソン の二大主役という見どころいっぱいの新感覚のサスペンススリラーです。“人間の狂気と恐怖』を描いた作品、ほんと不穏で恐ろしい空気感の作品で、ラストカットもなかなか鮮烈でした。

🖋海鳥や人魚などの多くのメタファーやギリシャ神話のプロメテウスとプロテウスなどの伝説も盛り込まれているので、この辺りがもう少し理解ができればより深く鑑賞できる作品なのかもしれません。一度の鑑賞ではそこまでは難しいのが少し残念かも。

😨Story:（参考: 公式サイト）
1890年代、ニューイングランドの孤島に2人の灯台守がやって来る。 彼らにはこれから4週間に渡って、灯台と島の管理を行う仕事が任されていた。 だが、年かさのベテラン、トーマス・ウェイクと未経験の若者イーフレイム･ウィンズローは、そりが合わずに初日から衝突を繰り返す。 険悪な雰囲気の中、やってきた嵐のせいで2人は島に孤立状態になってしまう。

🔸Database🔸
・邦題 :『ライトハウス』
・原題 :『The Lighthouse』
・製作国 : アメリカ・ブラジル
・初公開 : 2019
・日本公開 : 2021/07/09
・上映時間 : 109分
・受賞 : ※※※
・監督 : ロバート・エガース
・脚本 : ロバート・エガース、マックス・エガース
・原作 : ※※※
・撮影 : ジェアリン・ブラシュケ
・音楽 : マーク・コーヴェン
・出演 : ロバート・パティンソン、ウィレム・デフォー

🔸Overview （参考:映画. com）🔸
「ウィッチ」のロバート・エガース監督が、「TENET テネット」のロバート・パティンソンと名優ウィレム・デフォーを主演に迎え、実話をベースに手がけたスリラー。外界と遮断された灯台を舞台に、登場人物はほぼ2人の灯台守だけで、彼らが徐々に狂気と幻想に侵されていく様を美しいモノクロームの映像で描いた。1890年代、ニューイングランドの孤島。4週間にわたり灯台と島の管理をおこなうため、2人の灯台守が島にやってきた。ベテランのトーマス・ウェイクと未経験の若者イーフレイム・ウィンズローは、初日からそりが合わずに衝突を繰り返す。険悪な雰囲気の中、島を襲った嵐により、2人は島に閉じ込められてしまう。

今年初め。
アカデミー賞ノミネートが発表される前に『どんな作品が候補になるか？』という特集で 本作も有力とされていて『オスカー最有力？』なんて囁かれていたのだが、結局は 1部門もノミネートされず静かに消えていってしまった本作。
日本での劇場公開も半ば諦めていたのだが ここへ来てなんと公開決定！
配給を手掛けた（株）トランスフォーマーさん。感謝します。

本作の予告編を劇場で見たときは あまりの尺の短さに驚き 逆に気になってしまった。
『多くは語れない』という事なのか・・・

私の昨年のNo. 1作品 「異端の鳥」を思わせるような雰囲気。
いや、もうまさに『異端の鳥2』でした！😝

19世紀末。
孤島にそびえ立つ灯台。
二人の灯台守がこの地に訪れる。
60代？くらいのベテランと 20代？ くらいの未経験の若者の灯台守、ふたりぼっちで島と灯台の管理を行う仕事に就く。
世代の違い からなのか初日から そりが合わない ふたり。
衝突を繰り返す日々。若者は我慢の限界。
彼は、いや 二人は少しずつ壊れていく・・・

Filmarks内で賛否両論が巻き起こっているのでしょうかね？
このレビューを書き終えた後 皆様のレビューを読むのが楽しみです😝。
ダメな人はダメでしょうね！こうゆうタイプの作品。
私は 大好物 です！ 何よりモノクロでこの奇っ怪な作品を表現しているのがいい。
スタイル的には素晴らしい作品なのですが タイトルにもあるようにビジュアルは強烈なのに中身はライト(軽い)は作品でした😝（笑）。
えっ！「ライトハウス」って そーゆう意味じゃなかったの？😝
と、冗談を言いたくなるくらい もう少し凝ったタイトル無かったかな？
タイトルにインパクトがあって この内容だったらもっと評価が高かったかもしれない。

気持ちは分かるし、伝わる。
二人きり、ツライ仕事、まずい食事、悪天候。
酒だけは大量にある。誰だって ああなるだろう。
約100年前の話だが 今でもこんな体験している『若者 & 爺さん』結構いるのではないか！
リアリティは びんびん に伝わってくるのになんか『深み』が無い。
幻想的な映像がサブリミナル的に導入されるが 作品に深みを与えるほどのインパクトに繋がっていないのが、ちと残念。
とは言え 終始ニヤつきながら鑑賞してました。

ウィレム・デフォーとロバート・パティンソンの鬼気迫る怪演は必見！
本作に出演を決めた勇気に敬意を表したい。

映画館の暗闇で観るには もってこい な作品だと思います。
但し カップル、友人と見るような作品ではないかも。
お一人鑑賞 をオススメします。


2021年 7月15日
WHITE CINE QUINTO
💺108席
客入り 30人前後。

5月20日に惜しくも閉館してしまった 4スクリーンのミニシアター『UP LINK渋谷』。
この頃なにかと忙しくて最終上映に足を運べなかったので 今更だが 跡地を訪問。
当然だが、跡形もなく建物のみが静かに残されていた。
超マニアックな作品の上映が多く数回しか お世話になってなかった映画館だったが もっと行っておけばよかったと後悔。
ひとまず 長い間お疲れ様でした。