狼の時刻の作品情報・感想・評価

「狼の時刻」に投稿された感想・評価

キューブリック版『シャイニング』のバスルームに佇む裸の女性ふくめて気味の悪い演出の元ネタだらけ。向こう岸に渡ってしまった頭のおかしな人にしか見ることができない(体験できない)地獄の底をねちっこく延々と映していくベルイマン。ファッションとしてのカルト映画とかそんな生半可なものではなくて、開いてはいけないパンドラの箱を覗き見しているうちにキチガイがこちら側に転移して日常に戻れなくなってしまう恐ろしさがこのフィルムには確かにある。男も女も狂っていて、島の住人は死人のようで誰もが狂っている。不条理な暴力、滲み出る肉慾。これだけ「恐怖」に振り切ったベルイマン映画は他にないと思う。あの異様な人形劇、なんなんだろう…。
1000

1000の感想・評価

4.2
さえないおっさんが変な奴らに絡まれて、デヴィッド・ボウイにされちゃう話。ベルイマンの隠れた名作。
Moeka

Moekaの感想・評価

4.0
ゴダールの『軽蔑』を想起させる、これから始まる世界は“映画”であると観客に思い出させるスタートを切る。映画内で起こる悪夢的一連の流れはベルイマンの精神世界と見て間違いはないように思う。パートナーで女優のリヴが役と同じくこの時期ベルイマンの子供を宿していたというエピソードはなかなか強いwww 自身の創作に対する欺瞞や疑問、魔笛の人形劇も挿入されるようにひたすら芸術家としての苦悶が鬱々と描かれているのは印象的だが、この映画と違ってベルイマンは自戒しつつ映画を撮りつづけたという事実が心強い。夜明けがすぐか、また永劫に夜が続くかもわからず、受胎と死の時間を意味するタイトル。身を削って芸術に身を捧ぐというのはこの時間を耐え続けることなのではとも考える。
あぺ

あぺの感想・評価

3.8
そこまで恐怖は感じなかったけど、恐怖を湧き立たせるライティングは絶品だった
たく

たくの感想・評価

3.3
休日の朝から観る映画じゃなかった(笑)

ある画家が孤島で行方不明になった経緯を一緒に暮らしてた妻の証言で追っていく話で、現実と幻想の境目が分からない。
そもそも全て妻の証言で、手掛かりとなる夫の日記も存在しないってのが怪しい。

衝動的にドアップになるカメラとか幻想シーンの重力反転とか、ベルイマンの攻めの演出が良かったね。

アルマが「愛する夫婦は似てくる」って話すくだりは「仮面/ペルソナ」思い出す。
なんとも言えず恐ろしい作品だと思いましたが、ベルイマン自身の頭の中を映し出したような極めて私的な作品ということで確かに納得です。奥さんと一緒に本土から離れた孤島で芸術に没頭する孤独な画家、しかし創作の苦悶のなかで露悪的なブルジョワの雑音や性的な煩悶に晒されて身を滅ぼしていきます。ブルジョワ城主が壁や天井を歩くシーンに戦慄を覚えました。そして冒頭の船で島にやってくるシーンで海岸の波をじっくり映すベルイマン、ここにはサイレント映画的な感性が表れているんでしょう。
y

yの感想・評価

4.7
非の打ち所が無い面白い映画。

「野いちご」や、この「狼の時刻」、ポランスキー監督の「反発」を見た時
デビッドリンチは影響を受けたかなぁと思った。

リンチ監督は観客の意表を突くとか、シンボル(印)を入れたり謎解きもさせたりしているものもあるけど?
狼の時刻は難解にするために、何が現実で何が幻想なのかはっきりさせないのではないと思う。
監督がしたいのは謎解きを観客にさせることでは無く、
幻想を見た人の追体験をさせた映画だから、どこが現実でどこが幻想か分からないので成功なんだと。夫も最後は妻も何が現実で何が幻想なのか分からなくなっている。見直しても答えが出ないので正解だし、監督は成功していると思う。

不気味な不穏な音、野いちごでも使われていたけど、この作品も上手に使っている。

マックス・フォンシドー、リブ・ウルマンいつもながら上手い。
「恥」もこの二人で夫婦で演じていたけど、どんな役でもござれ感が凄い。特にリブ・ウルマン。
人を深掘りする監督さんなので演じる方もやりがいがありそう。

終盤のお城の一室でマックス・フォンシドーが見た光景の不気味で前衛的なこと!
あの時代に凄い。
オリジナルにあふれ、本作品も「監督、頭良すぎる」と感動。

興行収入や知名度と映画の善し悪しは違うなぁと思わずにいられない。
Marisa

Marisaの感想・評価

4.2
妻の視点で、夫の日記に書いてあることなどを観る映画。話が変わって、観てる私達に伝わってる可能性もある。
“Hour of the wolf” = 夜中から日の出の間、もっとも死が多く、睡眠が深く、悪夢がリアルな時間帯。
夫は不眠症でリアルな悪夢をみるのだが、劇中の出来事が現実なのか幻覚なのか明らかではなかったり、最後まで明確でない部分が多い。そこに自分なりの解釈と意味を付け加えるとなんかいいホラーになった気がする。
画家で夫のユーハン・ボイル(マックス・フォン・シドー)が突如姿を消した。妻アルマ(リヴ・ウルマン)がユーハンの身を案じるモノローグから話は始まる。

一人称の語り部の場合、本当にそれが事実であるのか疑わしい。
実際アルマの挙動は不審だし、顔は疲労の色が濃く、どこかぼんやりしている。

そんな感じのメタ構造で話はスタート。

序盤は、林檎の花が咲く頃で、穏やかな日々。
ある時アルマは見知らぬ貴婦人に夫の日記を読むように唆され、読んでしまう。
そこには夫の幻覚、妄想がびっしり。
夫がかつての不倫相手ヴェロニカに未練たらたらであることも知ってしまう。
そんな折に男爵から城への招待。
そこでアルマが見るのは狂気と嘲笑と退廃の晩餐会。それから夫が描いたヴェロニカの絵。

ここでヴェロニカの絵は映さないんですよね。
アルマは見たはずなのに。
ここ結構フラストレーションが溜まるシーンですが、あえて観客に見せないのでしょう。
全編でユーハンの描く絵がどんなものかは不明なままです。

夫の苦悩を共有したいと望むアルマ、それをはねつけるユーハン。
何度も繰り返し出てくる「夫婦は似るもの」の言葉。アルマの理想。
しかしユーハンは不眠や過去のトラウマ、スランプなどから幻覚が進み人格が崩壊してゆく。

狼の時刻、病人が亡くなり赤子が産まれる時刻、日本でいう丑三つ時。
暗闇の中のユーハンの表情が何とも言えない。
闇にぼぅと浮かび上がる彼の表情が狂気一歩手前のようで異様さが際立つ。

海に沈んでゆく少年の姿。
目まぐるしく回るカメラや、影だけを写したショットなど、魔術のような絵。
グラスに目玉を浮かべるカット。
ハトが舞う(ジョン・ウー並に)廊下を通ってかつての不倫相手ヴェロニカへ会いに行くユーハンの顔は死人のごとく真っ白(ちょっぴりお化粧)
死体のように横たわるヴェロニカの笑い声、呼応するように城にいる人間達も魔物のような姿で2人を笑う。じわじわ怖いです。

そしてクライマックス。
"人食い""吸血鬼"どちらともとれる描写。
暗闇に浮かぶ顔、顔、顔、そして血。
バキバキにエッジの効いたモノクロ。
闇が漆黒。暗い、冥い。

何故ユーハンがこんな狂気に陥ったのか。
比較されるのが晩餐会での人形劇モーツァルトの魔笛。
モーツァルトとユーハンの芸術家としての差を見せつけ、追い詰める。
片や天才、片や凡人。
自分の凡才を認めることが出来ず、最終的に幻覚の世界へ呑まれてゆく、人格が崩れ落ちるのを止められない彼。

夫と幸せに暮らしたかったアルマ、覗いてしまった夫の深淵。
共有したいと望んだことが間違いだったのか、暗闇の中に浮き上がるアルマの表情は途方に暮れています。

芸術家であろうという男の心が折れて自滅した話なのですが、荒唐無稽な話でも圧倒的な映像に何も言うことがありません。
さてラスト。森に消えたユーハンはどうなったのでしょう。
アルマ視点でしか語られていないこの話。
本当は…とも思うのです。ひやりと怖いです。

レンタル待ちに待ってやっと観れました!
観て良かったー!!めっちゃツボです!!
おすすめ感謝!!😆
観たよ



キューブリックの「シャイニング」はたまたリンチにも影響を与えたとされる本作は信頼できるヲタ友達の勧めで鑑賞!

冒頭、小島で暮らす画家が行方不明になった事を告げるテロップ
そして先の撮影開始の掛け声
これから始まるのは"映画ですよ"アピールのメタ構造(この部分や、画家の絵を敢えて見せないあたりはハネケっぽい)

現実と幻想入り混じる独特の世界観
酔うほどに凄まじく押し寄せてくる奇妙な闇に、観るものは幻想的で悪夢的な魅力に取り憑かれてしまう
独特なカメラワークにトリッキーな手法、古典的ホラー要素までどれをとっても面白い!
後可愛らしくお化粧したマックス・フォン・シドーが拝める貴重な映画です←いらん

画家のユーハンにより日記に書かれた、妄想、不安、画家としての苦悩、過去の恋愛への熱い想い…
そこに日記を見た妻アルマの不安も重なりストーリーはさらに複雑に

"愛する人の苦悩に同化しては危険"
本作のテーマはここにあると思う

劇中に何度も「長年一緒に暮らした男女は似てくる」と語られる
精神的に不安定なユーハンに寄り添うアルマもその不安な妄想を共有していく

アルマの独白に始まり終わるラストは一体何が真実なのか?

幻想を現実と受け止めているであろうアルマの純粋な愛が痛々しくとても切なかった
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