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秋のドイツ
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『秋のドイツ』に投稿された感想・評価

2015.07.25 アテネ・フランセ文化センター
rico
3.5
開場時に説明文の書いてある紙を渡して貰って、見る前に「ドイツの秋」の一連の事件の事を知る。
それがわからなければ全くもって訳わかめな映画になる。

事件を元にニュース映像、ドキュメンタリー映像、ファスビンダー自身がでてくるフィクションなどが入り乱れているので分かりにくい。

ファスビンダーの社会的な視点が見える二本立てだった。
さらっとみて理解できなかったのだけども、ただドイツってやっぱりナチという歴史を踏まえ向き合って生きているのだなって事だけは実感した、、
【全編通して再視聴】2024年10月27日
海外盤を輸入。最初に輸入したデジタルリマスター版は映画字幕すらなかったため、英語字幕付きの古いDVDを追加で輸入。

1. ハンス=マルティン・シュライヤーの国家追悼式
監督:アレクサンダー・クルーゲ

葬儀の様子を映す。参列する者たちの身なりは明らかにきれいだ。
frau wilde の「5人の母」からの引用文が映される。「残酷さがある段階に達すれば、もはや誰が責任を負うかは問題でなく、即座に止めなければならない」

2. ファスビンダーの話
監督:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー

アンドレアス・バーダー、グドラン・エンスリン、ヤンニ=カール・ラスペの3人の獄中自殺を受けて、ファスビンダー(以下、「フ」)の元妻(イングリッド・カヴェン)、愛人(アルミン・マイヤー、以下「ア」)、実母(リゼロッテ・エーデル、以下「母」)と議論する様を映す。全編自宅で撮影され、登場人物も皆本人、ドイツの秋当時の反応を再現してみせる。最重要なパートなので、母との対話を中心に、翻訳を記しておくことにする。

ニュースについて話すファスビンダーとアルミン。
ア「(犯人は)銃殺かな?絞首刑かな?」
フ「誰かが間違ったことをすれば、そのまた誰か、国家などの権威を持つものが正義を執行すれば良いと考えているのか?」
ア「そうだ」
フ「じゃあこのアパートは俺のだから出て行け!」

以降、母との対話が小分けにして差し込まれていく。

母との対話①
フ「議論の余地は無いというのか?」
母「あなたは知らないのよ。過度の緊張感のある今、その話題は控えたほうがいいって。ナチの時もそうだった。トラブルが嫌ならダンマリを決め込むのよ」

ベッドから全裸で起き上がり、元妻イングリッドと電話。「3人は獄中自殺した。うち2人は銃で。いったいどうやって持ち込めたんだろうね(半笑いで)」
ファスビンダーは局部を弄りながら電話をしている。

母との対話②
フ「何があったら話題にあげて良くなるの?」
母「権威や影響力のある者がそれを自覚して、、」
フ「それは誰?例えば?」
母「MitscherlichとかJung、Böllとか、、」
フ(遮って)「彼のせいで問題が起きてるって言ったじゃないか!」
母(言葉に詰まりながら)「今ここでなら分かることだけど、大衆は民主主義を作らない。彼らはそれが何か分からないから。国家を批判する人が…」
フ(また遮って)「でも母さんは、今は議論できる状況にないっていったじゃないか」
(少しの間)
母「ええっと、(議論、批判が)起きてほしいとは思ってるの、例えばメディアを通じて」

イングリッドとの電話
「おかしい。犯人捜査が行われているのは周知のことなのに、人々は他の都市からの知らない電話を取ろうとしない。互いを非難するように仕向けられ、電話は糾弾するためのものでしかないこの状況が変わるだろうか」
アルミンにコーラを注がせ、ご飯を食べるように言われるも、拒否。トイレに駆け込み嘔吐。アルミンに当たり散らす。

母との対話③
フ「母さんの信じる自由な体系は誰に託したいの?」
母「私が投票する人と政党ね。そしてその党が大義で勝利することを想定するわ」
フ「じゃあ大義が何よりも先立つワケだ」
母(言葉に詰まる)
フ「母さんの民主主義の理解ってのは、特に自分がThird Reich(ナチスドイツ)を生きたからなのか、少なくともそれは事実だから、いつも母さんは言うんだ、『組織が〜』って」
母(遮って)「私が言いたいのは、こんな難しい事態では、批判が起こることも必要で…」
フ「母さんは議論できないって言っただろう!」
母「今このタイミングではね…」
フ「母さんは民主主義を拒絶してるんだ!」

クスリをキメるファスビンダー。

母との対話④
フ「パイロットが撃たれたとき、(射殺ではなく)公開処刑すべきと母さんは言った」
母「言ったわ」
フ「本当に公開で?」
母「そう」
フ「それが民主主義的だと思うの?」
母「いいえ、でもハイジャックも反民主主義的よ。(機内で)一人一人殺していくぞ、って言うこともね。私やあなたがそこにいたら、どう思う?何もかも変わるわ。それぐらいは分からないと」
フ「『目には目を』なのか?」
母「それは違うわ。でも、そんな状況であなたは民主主義者としての振る舞いができないわ」

ファスビンダーはクスリをキメた後、独り言をブツブツと。「たしか843…フランツは…ドア越しに寂しそうで…」
(サイレンの音)
急いでクスリをトイレへ流す。
フ「警察が来た」
ア「どうしたんだ」
玄関ドアまで行き、耳を澄ますファスビンダー。
フ「上の階へ行った」
ア「警察が来たとして、なんなんだ」
フ「入ってきて、俺かお前がちょっとでも変な動きを見せたら、発砲してくるだろう」
ア「しないよ、そんなこと」
フ「なぜ想定しない?撃たれることは自分の責任だ」
アルミンをバカ扱いし、うんざりしたアルミンは飲みに出ていく。

母との対話⑤ (ファスビンダーはかなり熱くなっている)
フ「母さんは法律を考慮しないと言った、民主主義者を自称しといて!」
母(たじろぐ)「法律のことは考えているわ」
フ「しないって言った!」
母「でも、もし人々が…」
フ(遮って)「『でも』って言うな!考慮しないって言ってたぞ!」
母「でもそういう人は…」
フ「口答えするな!」
母「法を犯したのは私ではなく、テロリストたちよ」
フ「そうだ、一般的な犯罪者だ!」
母「テロリストが?」
フ「そうだ、殺人の他に特別犯罪は犯していない」
母「彼らを捕まえて、逮捕できたかしら」
フ「ただの悪意を持って犯された殺人じゃなくて、大義を持ったテロリストは悪くない、分かる?」
母「でも手段は間違いよ、ライナー」
フ「でも母さんは、法は気にせず無関係って言ったじゃないか、最初に」
母「そのときは憤っていたんだわ」
フ「母さんが考慮しない現状と、法律を作っている人、彼らがどんな人かはそんなに許容できることなの?」

ベッドで本を音読するファスビンダー。物音がし、アルミンが帰ってきたことを知り、叫んで呼ぶ。なぜ叫ぶのかと困惑するアルミン。アルミンはバーで家がない男を泊めてあげることにした、という。ファスビンダーはその男が眠る部屋に行き、男を見つめる。
フ「追い出せ」
ア「え、なんで?」
フ「いいから」
アルミンは男を追い出す。
泣き出すファスビンダー、慰めるアルミン、2人は抱き合う。

母との対話⑥
フ「民主主義は一番人間的な統治体系だよね?」
母「すべての悪の中で最小のもの、かな」
フ「最小悪だって?」
母「今この状況では悪ね」
フ「民主主義が?」
母「そうよ」
フ「権威主義の方がいいって?」
母「違うわ。今、この国ではってだけ」
フ「じゃあ何が良いんだ?民主主義が少なくとも悪なら、何か(他に)良いものがあるってことでしょう、それは何?」
母(初めて微笑む)「一番いいのは、権威主義的な統治者の類、慈悲深くて、親しみやすく秩序ある人」



ナチス時代の考えを色濃く残し、民主主義はテロリズム下では悪と言い、独裁者的な人間が必要と言ってのける母。熱くなり反発を繰り返すファスビンダーだが、母のことが大好きな彼は、見かけ上は母を責めてるようだが、母を説き伏せることはできず、代わりに自身の価値観を大きく揺るがす。同居する愛人アルミンの前では横暴な態度を取り、全てが感情任せな彼は、まさに独裁的である。獄中死した3人に疑惑と思いを馳せる彼は、パトカーのサイレンから権威への被害妄想に陥り、身近な人間とも上手く振る舞うことができない。涙を流し崩壊していく自分を映すことで、件のテロリズムと自分を重ねた。

3. ドイツ歴史教育の話
監督:アレクサンダー・クルーゲ

歴史教育の信条に悩む女性教師。マイエルソング事件、ドイツ軍鉄道、スパルタシストの蜂起、ナチス政府によるエルヴィン・ロンメルの毒殺などの記録映像とナレーション。

シュレイヤーの葬儀。ベンツを映すカメラ。工場では生産を止め、黙祷。葬儀後の会食の料理人、ウェイターもカメラに収める。

4. 道で殴られた女性と助ける女性の話
監督:ベルンハルト・シンケル、アルフ・ブルステリン

治癒するシーン、ヴォルフ・ビアマンの歌が流れる。「傷は癒えない…友よ何が起きたのか…出て行ったほうがマシ…」。

RAF共同創始者、ホルスト・マーラーの見解。戦後以降ファシズムが残り続けた、左翼テロリストの矛盾等を指摘する。

5. 頭に血を流した男の話
監督:ハンス=ペーター・クロース、カーチャ・ルーペ

頭に血を流した男が女性宅を訪れる。「入っていい?」。この建物の前で自動車事故を起こしたという男性。「医者はいらん、シナプスもいらん。水を一杯くれ」。男は机の上の新聞、手配された男の写真に似ている。

6. 検問
監督:エドガー・ライツ

カップルが検問にかかる。
検問官「空軍になりてえな」ぼやく。
彼女の方を見て、「お前手配犯に似てるな」、冗談めかす。カップルの車は通過する。

7. ドキュメンタリー
監督ペーター・シューベルト

記録映像によるドキュメンタリー。ローザ・ルクセンブルクの死の直前の言葉「ドイツのあるべき姿は一つ。社会主義か野蛮主義のどちらか」。

8. 『延期されたアンティゴネ』(『カタリーナ・ブルームの失われた名誉』の日本盤でも特典映像として付属しているこの本作。そのため邦題あり)
監督:フォルカー・シュレンドルフ
脚本:ハインリヒ・ベール

埋葬が題材に関わる『アンティゴネ』は今放送するにセンシティブである。テレビ局で上層部とスタッフが会議する。視聴者に配慮をする文言の挿入は、どの映像にすべきか、3パターンの候補を見る。すぐに議論は放送中止の方向に傾き、最初から結論は出ていたかのようである。

9. 獄中死した3人の埋葬
監督:アレクサンダー・クルーゲ

埋葬を見物にくる行列。若者が多く、ラフな格好をしている。冒頭の埋葬とは対照的。ちょっとした抗議・暴動が起き、警察が鎮圧。

冒頭の引用文がそっくりそのまま映され、「この映画の止めどころはここ」とでも言うように幕になる。


ーーー以下、部分的に初視聴した際の感想文ーーー

2021年12月16日視聴。

プロローグ、ファスビンダーパート、エピローグのみ鑑賞。

ドイツの秋と呼ばれる一連のテロ事件を受け制作された、学生運動を擁護していた映画人らによるオムニバス作品。

まず、プロローグとエピローグ、それらは異なる「埋葬」が映し出される。前者は重役が参列し、しんみりとした葬式であり、後者は若者が多数集まり、その主義に共鳴し、テロリストたちがおくられる様子が映される。

本題のファスビンダーパートについて。全編自身の自宅で撮影、ファスビンダーが本人役で演技、同居人(男性)と実の母をそのままの役で起用、電話をしながらの自慰行為など、すべて生のままで撮られている(ファスビンダー作品は監督自身が投影されまくっているため、新鮮味はないが…)。

作品が作品なため、ファスビンダーの政治的立場が反映されている。

ファスビンダー映画では度々テーマに組み込まれてきたことだが、ファスビンダーはその親世代がナチスドイツを支持していたことを強く意識している。母の発言を聞き、あれから親世代の考え方は何も変わってないことに、強いショックを受けただろう。しかし、なおも彼はたった一人の大切な母親を愛し続ける。

そういったファスビンダーのマザコンの面も感じられる、超私的な映画であることは間違いない。本来はテロ事件への思うところを描くというコンセプトだったはすだが、ファスビンダーを理解する上で重要な映画として、非常に価値のある作品であった。

日本語字幕があれば全パート鑑賞するのにな。残念。

メモ:類似作品『鉛の時代』いつか見たい。(追記︰ちゃんと観た)

追記:フォルカー・シュレンドルフ監督の『延期されたアンティゴネ』も観た。

「ドイツの秋」直後では、『アンティゴネ』の映画版をテレビで放映するのは、よろしくないとテレビ関係者が話し合い、延期が決定する。

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