純さんの映画レビュー・感想・評価 - 7ページ目

純

映画(603)
ドラマ(0)
アニメ(0)

霧の中のハリネズミ/霧につつまれたハリネズミ(1975年製作の映画)

5.0

「君がいなくちゃ、一緒に星の数を数えられないよ」生きていればたくさんのときめきに出会えるけど、私はハッと息を呑むほど心を掴まれる衝撃を受けて、その後に深くため息をついてしまうようなときめきが1番好きだ>>続きを読む

アオサギとツル(1974年製作の映画)

4.8

こんなにシンプルに、美しく、そして繊細に、恋のすれ違いを描いた作品はないかもしれない。浮世絵に影響された微細な画と淡い色彩が儚げでやわらかく、可笑しいようで愛おしく、哀しい人間臭さにありふれた、本当に>>続きを読む

キツネとウサギ(1973年製作の映画)

3.8

子ども向けとはいえ、100%可愛い画ではないことが逆に魅力的だと感じずにはいられないような作品だった。前半の2作品とは打って変わってザ・子ども向け!といった雰囲気はあるんだけど、はじめはあまりキャラク>>続きを読む

ケルジェネツの戦い(1971年製作の映画)

3.7

戦争に行く男たち。悲しみにくれる女たち。中世のフレスコ画をアニメーション化することで描かれる世界観が、今観ても斬新だった。

どの作品もだけど、動く静止画という印象がある。綿密に重なり合わされた切り絵
>>続きを読む

25日・最初の日(1968年製作の映画)

3.6

台詞はほぼなく、抽象化された灰色または黒色の世界で、激しく疾走する赤が映える。

旧ソビエトにより搾取された当時の労働者たちが生きる、陰気で無機質な灰色の街にぽつんとたたずむ十字架が映るところから本作
>>続きを読む

ダイヤルMを廻せ!(1954年製作の映画)

3.8

巨匠はいつまでも巨匠。ヒッチコック監督の無駄のないミステリーを公開当時の35mmフィルムでの劇場公開で堪能するという、贅沢すぎる贅沢に大満足でしかない。

古典作品としての見事なまでの完結性と単純明快
>>続きを読む

エル・スール(1982年製作の映画)

5.0

素敵な言葉を囁くだけが愛じゃない。スペイン内戦が生んだ父と息子の分裂、そしてその息子と孫娘の頼りない親子の形が、冒頭から最後まで繊細に美しく、退廃的なスペイン北部の景色の中で描かれる。光と影、時間、沈>>続きを読む

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)

5.0

名前はどうして存在するのか。私たちが名前を呼び合うという行為。それはあまりにも脆いけど、「私はあなたを必要としています」と強く相手に伝えられるかけがえのない希望なんじゃないだろうか。あなたの声が聞きた>>続きを読む

この世界の片隅に(2016年製作の映画)

5.0

それでも、生活は続いていく。戦争前も、戦争中も、戦争後も、毎日どこで生きていても、生きている限り生活は続いていく。おいしいごはんを食べること、安心して眠ること、好きなときに好きな場所に行くことができな>>続きを読む

サクリファイス(1986年製作の映画)

4.0

今まで観た中で一番圧倒された映画かもしれない。ある意味じゃこの上なく映画らしいのに、カメラワークや時の流れのスピードが独特で、まるで演劇のような作品でもある。内容は超越しすぎていて、そしてあまりに宗教>>続きを読む

ポンヌフの恋人(1991年製作の映画)

4.8

アレックス三部作の最後にふさわしく、鋭すぎるくらいの美的感覚がすべてのシーンに散らばっている。全体的に暗めのトーンで物語は進んでいくんだけど、その荒んだ、色褪せた世界の中で、あるときはその闇に溶け込み>>続きを読む

ボーイ・ミーツ・ガール(1983年製作の映画)

4.7

「ぼくらはこうして今も孤独だ」このモノローグから始まった時点で、私は心を鷲掴みにされた。退廃的な白黒の世界で美しく暴走する、あまりに不完全な若さが、確かにそこにあった。

この映画、本当にいつ観ても「
>>続きを読む

すれ違いのダイアリーズ(2014年製作の映画)

4.0

タイトル通りまさにすれ違いが多くてひたすらむず痒く、でもものすごくピュアなほっこり癒し映画だった。

タイの田舎では水上学校なる、湖の上に浮かぶキャンプ小屋のような学校があるようで、今回の舞台はこの水
>>続きを読む

神のゆらぎ(2014年製作の映画)

4.8

人間なんて結局弱いんだよ、と残酷な現実を突きつけてくる容赦のなさと、それでも苦しんでもがいて生きる人間への慈しみ、その両義性が相殺されずにダイレクトに届いてくる作品だった。

今作は、それぞれに闇を抱
>>続きを読む

ブルーに生まれついて(2015年製作の映画)

4.3

青、空、海、憂鬱、物悲しさ、哀愁、孤独、失望、ブルース。似通ってはいても微妙に違うそれぞれのblueが、すべての場面に様々な形で散らばっていて、途切れないblueのもどかしさ、断片的なBlueの危うさ>>続きを読む

ニュースの真相(2016年製作の映画)

3.9

真実を求める報道陣の表面化した闘いと知られざる闘いの両方を濃密に描いた、そう遠くない過去の実話。ジャーナリストたちの闘いを扱った映画だと、夏に観た『スポットライト 世紀のスクープ』が1番記憶に新しいけ>>続きを読む

オマールの壁(2013年製作の映画)

4.5

よく、映画は非日常を体験できる娯楽と言われる。だけど、これは間違いなく現実に起きているパレスチナ問題のひとつで、決してお遊びじゃない。

現実問題をベースにした映画としては、心理戦の要素も加えたしっか
>>続きを読む

スタア誕生(1954年製作の映画)

3.6

人生の成功と破滅というテーマを、ハリウッドを舞台にエンターテイメントとして描いた大作。いつ終わるんだろう、と思ってしまうくらいには3時間弱という尺は長すぎたように思うけど、キャストの魅力を最大限に引き>>続きを読む

ボビー・フィッシャーを探して(1993年製作の映画)

3.5

どうして、チェスというゲームにはこんなにも魅力が詰まっているんだろう。あの白と黒で分けられた空間と、それぞれの駒の勇敢さ、孤高さ。どれをとってもため息が出るくらい魅力的だ。チェスというと愛読書である小>>続きを読む

ソフィーの選択(1982年製作の映画)

4.8

ずいぶん前からずっと観たくて、1ヶ月前にようやく鑑賞できた作品。メリル・ストリープ出演作ではダントツに好きだった。

若者が、過去と共に生きる隣人について語る形式が『グレート・ギャツビー』を思い起こさ
>>続きを読む

ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気(2015年製作の映画)

3.7

「愛」ではなく「平等」を手に入れるために闘った、同性愛者の実話。自身が同性愛者であることをカミングアウトしたエレン・ペイジがキャストとして、またプロデューサーとして参加している点に、胸が熱くなる。>>続きを読む

湯を沸かすほどの熱い愛(2016年製作の映画)

4.1

オダギリジョーに涙一筋持ってかれてしまった。ザ・余命ものって感じの大筋の展開はありきたりなんだけど、ひとりひとりが抱える過去の重みや「失ったもの」が一味違う魅力を生み出していたように思う作品だった。>>続きを読む

処女の泉(1960年製作の映画)

3.5

ものすごくシンプルな話だけど、神を信仰して生きるということの重みが伝わる重厚で濃い映画だった。復讐に信仰という要素が入ると独特の悲しみややり切れなさ、いたたまれなさが生まれるんだなと、無信仰ながらに感>>続きを読む

読書する女(1988年製作の映画)

4.7

好き嫌い分かれるだろうけど、読書も朗読も大好きな私にとってはものすごくタイプの作品だった(朗読に関しては上手くはないから聴く側だけど)。私の好きな要素がたくさん詰まっていて、まさに発掘良品といった感じ>>続きを読む

はじまりのうた(2013年製作の映画)

4.5

原題『Begin Again』の“Again”が大事なんだろうなと感じる映画だった。これは単に何かを新しく始める話ではなくて、再生の話だろうと思うから。

主人公は歌手の恋人に裏切られた美声のソングラ
>>続きを読む

永い言い訳(2016年製作の映画)

4.8

ひとが持っている、他人に見せたくない嫌な部分を無理強いして見せるのではなく、ひとは誰しも決して綺麗な感情だけでは生きていられないよね、って優しく語りかけてくれる雰囲気のある、深くて沁みるような作品だっ>>続きを読む

イングリッド・バーグマン 愛に生きた女優(2015年製作の映画)

3.8

特別なファンだから観に行ったというよりは、このドキュメンタリーを観てファンになった。あんまりドキュメンタリーは見慣れてないし、起承転結があるわけでもないからって、鑑賞中に退屈しないかななんて心配した私>>続きを読む

男と女(1966年製作の映画)

5.0

こんなにお洒落で上品な映画観たことない。すべてのシーン、音楽、台詞が洗練されていて美しい。どのシーンを切り取っても、構図も色彩も芸術的でうっとりしてしまうくらいだった。美しいと言っても眩しいキラキラし>>続きを読む

ランデヴー(1976年製作の映画)

3.7

『男と女』と同時上映された、10分にも満たないショートムービー。ひたすら低い視点からハチャメチャな運転をする様子が撮られているだけなのに、飽きずにドライバーと一緒に車に乗っているような臨場感と、なんと>>続きを読む

怒り(2016年製作の映画)

4.5

ひとを信じることの弱さと強さを濃厚に描いた、重い1本だった。

鑑賞前は殺人事件の犯人は誰かという点に焦点を置いたミステリーものかと思っていたけど、全然違った。東京、千葉、沖縄という3つの舞台でのそれ
>>続きを読む

シンデレラ(2015年製作の映画)

3.5

またもや可愛らしい映画のチョイス。ディズニーの魔法の世界を最大限に味わえる不朽のファンタジー映画で、ひとを純粋にする作品だった。

ストーリーは皆が知るロマンティックなもので、実写化するにあたって配役
>>続きを読む

ヒロイン失格(2015年製作の映画)

3.4

自分でもビックリのピックアップで今作を鑑賞。せっかく女子大生なんだしこういうのも観ておいていいだろう、金曜ロードショーで見逃した私は自分からこの作品を観に動いた。

率直に言うと面白かった。いつも観る
>>続きを読む

めぐりあう日(2015年製作の映画)

3.7

原題の意味は「あなたが狂おしいほどに愛されることを私は願っている」。フランス映画らしい重さがありそうだなとこの日3本目の鑑賞作品としてチョイス(私もまだなんとか疲れ知らずで若い)。後半に物語のまとめと>>続きを読む

リトル・ボーイ 小さなボクと戦争(2014年製作の映画)

3.9

『ライフ・イズ・ビューティフル』『リトル・ダンサー』に続く戦時下の父子物語!との前評判に素直に惹かれて観に行った作品。予告の雰囲気からも上記の作品から匂うタイプの悲しさ、切なさ、暗さっていうのはあまり>>続きを読む

アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲(2015年製作の映画)

3.5

原題の『UN+UNE』がフランスらしく(というかこの監督らしく)洒落たタイトルだなと思う。数日後公開のデジタルリマスター版『男と女』を観る気満々勢として、見逃すわけにはいかないなと思い立って鑑賞。>>続きを読む

ハドソン川の奇跡(2016年製作の映画)

4.0

近年、アメリカは自国を讃える映画だけでなく、自国の闇をあえて包み隠さず公表する映画をよく作るなという印象がある。ハドソン川へ飛行機が不時着したのは私が中学生の時で、同じ頃にTV「奇跡体験!アンビリーバ>>続きを読む