ninjiroさんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

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ひみつの花園(1997年製作の映画)

3.6

「サバイバルファミリー」が絶賛公開中の矢口史靖監督の初期作。

子どもの頃からとにかく「お金大好き」な鈴木咲子(西田尚美)、所謂子どもらしい愛嬌など全く持たなかったが、ただ与えられた小遣いを数えて
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綿の国星(1984年製作の映画)

3.4

一瞬の夕映えが終わるまで、弱々しい朽葉色の光のなかに常盤木はその葉表を艶やかに光らせる。
遠き山に陽は落ちて、やがて真夜中ゆっくりと、冷えた空気はその山を越えて遥か遠くに澄み渡り、闇に針を通したような
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ハリーとトント(1974年製作の映画)

4.1

何かから逃げている訳ではなく、
ただ、出来るだけ何処か遠くへ。

のんびりと大事なく、ほのかに明るいタッチの中に控え目ながらも確実に、死の匂いは漂っている。
ハリーは愛妻を亡くし、育てた3人の子ども達
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インディアン・ランナー(1991年製作の映画)

3.9

ここもかつては広く、深い森だった。
密に生い茂った木々と草の中に大小よろずの生命は宿り、各々目に見えぬ領域を作り、語ることなく主張し合い命を循環させ続けた。その営みから離れて集落を作った人々はいつし
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海よりもまだ深く(2016年製作の映画)

4.5

夢みた未来ってどんなだっけな。

物書きになりたい訳じゃなかった。
たまたま他に取り柄がなくて、
たまたま運良く賞なんかに恵まれて。
少しはいい気にもなったかもしれない。
でもやっぱり紛れだったのか、
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BOY A(2007年製作の映画)

4.0

心が、激しく揺さぶられた。
いや、頭を抱えた、といった方がいいか。

私達は彼の表情を良く知っている。
彼の表情や一挙手一投足は未来に向かって踏み出す希望と期待と不安に満ちて、膨れ上がった前向きな感情
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バルスーズ(1973年製作の映画)

3.8

Les Valseuses=「睾丸」を指す隠語、と言われる。

突如フランスの片田舎の路上に現れた二人の若者、ジャン=クロード(ジェラール・ドパルデュー)とピエロ(パトリック・ドヴェール)。
道徳と
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イリュージョニスト(2010年製作の映画)

4.2

伯父さんにさよならを言ってなかった。

主人公がユロ伯父さんではなくタチの本名タチシェフ氏であることの意味は、ここで描かれる世界が生身のタチが例えば映画を撮らなかった別の並行世界とでも言うような、本作
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男はつらいよ(1969年製作の映画)

4.0

男には、流れて生きる訳がある。

つまらぬことで家をおん出た我が身の愚かと、相も変わらぬ心の故郷を想わぬひととせあるものか。
義理は返せやしないけど、鳴かぬ盆暗興無き盆暗、恥を忍んで一跨ぎ。

さらり
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リアリティのダンス(2013年製作の映画)

4.8

過去の自分だけではない。
自身の父や母は勿論、今に、未来に、家族という形式を持つ全ての関わりに。

映画の中には子供がいる、大人もいる、聖者や貧者、独裁者もいれば革命家もいる。
しかしこの色とりどりの
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サウスポー(2015年製作の映画)

4.0

男が背負うのは、「親」になるという大きな責務。
無敗のミドルヘビー級世界王者として君臨するビリー・ホープ。
天涯孤独にして物心が付くや付かずやの頃から施設で育ち、恵まれぬ生い立ちから常に運命に抗う
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シルビアのいる街で(2007年製作の映画)

4.0

「男」は探す「彼女」の痕跡。

ロマンティックな情感が無理強いのない程度に漂うフランスの古都ストラスブール。
「男」は昼日中のカフェテラスで、路面電車の駅のホームで、見も知らぬ物思う人や道を行き交う人
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コブラ・ヴェルデ(1988年製作の映画)

3.5

本作はコブラ・ヴェルデという「架空の人物」の半生を描くと共に、彼が生きたその時代、貿易として奴隷売買が公然と行われていた時代のアフリカを切り取った年代記的な一面を持っており、作品全体のトーンとして明ら>>続きを読む

フィツカラルド(1982年製作の映画)

4.8

「船を引っ張って山を登らせてみた。」

映画とはただ「そこにある物」を撮るばかりのものではない。
寧ろ映画はその歴史の中で、それを回避しながらも如何にそれらしく見せられるか、という創意工夫によっ
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カスパー・ハウザーの謎(1974年製作の映画)

4.3

旅の夢は永遠に終わらない。

早朝のとある広場、その手に手紙を持って佇む汚れた身なりの少年が発見される。
少年は10代半ばと見られるその姿容にして言葉を殆ど知らず、身許を示す物の一切を持たなかったため
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素晴らしき哉、人生!(1946年製作の映画)

4.4

クリスマスが近づくと、子供の頃の夢を思い出す。
願いを掛けて、と言われても何も欲しい物なんてないと困らせて、でも実際は願いを掛けて夢を見て。
それは大きな夢じゃなく、でも途轍も無く難しい夢で、ただ明日
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バッド・チューニング(1993年製作の映画)

3.5

大人になったら忘れちゃうことばっかりだ。

良いことも悪いことも、だいたいそれぞれの半分も覚えてれば良い方で、仮にガキの頃に起こった事件を全部覚えてたとして、その時々に抱いた気持ちや熱量、今となっては
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愛すれど心さびしく(1968年製作の映画)

4.4

愛しても、愛しても、伝わらない。

知った風景、知らない場所、すれ違う人、愛する人、何処でも誰の前でも構わず変わらず愛を抱く人はいつも弱い。
弱い立場に甘んじながら誠実に、同じく弱い人を愛する。
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チキンとプラム 〜あるバイオリン弾き、最後の夢〜(2011年製作の映画)

4.8

その音色にも、溜め息にも、煙草の煙にも、煮込んだチキンとプラムにも。

心は破れて初めてその魂の出口を見つける。
永遠に癒すことの叶わない心の瑕から沸々と想いは湧き出し絶えることを知らず、注ぐ宛てを見
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マン・アップ! 60億分の1のサイテーな恋のはじまり(2015年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

平凡な大人が生きていく中で、自らをありのまま曝け出せる機会というのは実は少ない。

建前上、誰にでも存在とその存在を表現する自由が認められている社会の中にあっても、多くの人は大人になればなる程に萎縮し
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デビルズ・ゾーン(1978年製作の映画)

2.8

マネキン野郎繁盛記

古来より、世の中には様々な種類の性的嗜好が溢れている。
近年ではインターネットの一般化がそれぞれ個別の嗜好を抜け目なく丁寧にフォローする市場形成の動きを加速し、今こうしてい
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じゃりン子チエ(1981年製作の映画)

3.8

授業参観かぁ…。うち、ああいうの好かん。

何でやろ、お母ちゃんと会うの嬉しいのに、帰りはいっつも元気なくなる…うち、なんでぇ?

子が思うほどに親は強くはない。
親が思うほどに子は弱くはな
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ジャージー・ボーイズ(2014年製作の映画)

4.8

こんなにも感動させられるとは!

既存舞台の映画化という情報、ミュージカルというジャンルに対する苦手意識から少なからず本作を敬遠していた自分の浅はかさを悔いた。
本作を観るに際し、例えフォー・シ
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カラテNINJA/ジムカタ(1985年製作の映画)

1.2

ジムカタ。

説明しよう。
それはつまりgymnastics(体操)と空手のkata(型)を組合わせた造語。そんな居酒屋での悪ふざけから産まれたようなワガママなフレーズにニンジャとカラテを闇鍋の如くに
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さざなみ(2015年製作の映画)

4.0

信頼と疑念

雨は降り、地を割り、果て無く長い悠久の流れを創り出す。
流れは向きを変えずただ一つ所を目指し、遂には鏡の如き水面と相なり、残すは穏やかに畢竟に帰するのみ。

急崖を成した別れ路
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クロールスペース(1986年製作の映画)

3.2

毎度!大家のガンサーです!
趣味は人間観察と殺人です!

タイトルの「クロール・スペース」とは、直訳すれば「人が這い入ることができる空間」。
一般的に居住又は業務等の用に供する建築物に機器・配
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マジカル・ガール(2014年製作の映画)

4.1

その額は異世界への入口。

両の眼の中心点、鼻筋から上へと伸びる線の何処かにその這入口はある。
集中線が目線を誘うように、抱えた激痛から逃れんと浮遊する魂は向かう先を知らず吸い込まれ、
叫ばず押さず、
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真夜中のカーボーイ(1969年製作の映画)

4.2

確かな夢は、見付からない。夢はあっても、叶わない。

都会には見も知らぬ者を顧みる者はなく、故郷にはその群れの意に沿わぬ者を笑う者ばかり。
「アメリカン・ドリーム」は誰の目にも触れるように、しか
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フレッシュ(1994年製作の映画)

3.8

「フレッシュ」、それは12歳のマイケルに付けられたあだ名。
若造、ちびっ子、なんとでも。
フレッシュは学校への道すがらドラッグを仕入れ、それを帰り道に売り捌く。
抜け目なく肝の座った彼はディーラーとし
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アントニオ・ダス・モルテス(1969年製作の映画)

3.8

荒い画用紙に融ける程に柔らかな色鉛筆で擲り書きされた様な彩り溢れる雑多な世界を、圧倒的な歌声と足踏みは揺さぶり続ける。

意図や想いは葛折りを行き来して、其々目を伏せながら忙しなく、その眼が通づる処は
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レッツ・ゲット・ロスト(1988年製作の映画)

4.0

チェット・ベイカーは1988年、宿泊先のアムステルダムのホテルの窓から謎の転落死を遂げる。
その胸にはトランペットが抱かれていたという。

本作はカメラマンとして名高いブルース・ウェーバーが、自身が幼
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バンデットQ(1981年製作の映画)

4.0

かつて日曜洋画劇場で初めて「バンデットQ」を観た日、まだ鼻水どころか流れ出る涎すらも止められない程ボーっとした餓鬼だった私。
そんな私はその翌日から、録画したビデオテープが擦り切れる程、夢中で何度も
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リップヴァンウィンクルの花嫁(2016年製作の映画)

4.2

やっと、生まれてきたけど、

あなたはふわふわと生きて、なんとなくいつも息苦しく、
小さな頃から母の愛には縁遠く、父には理解を遠慮して、
人はあなたのことを見知っていても、誰もあなたを知ろうと
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恋人たち(2015年製作の映画)

4.5

「恋人たち」の想いが飛んで向って行く先には、
それを掴んで抱き締める誰かの胸は存在しない。

鬱屈した社会には、自ら緩やかな絶望を選んで生きる人で溢れている。
その日暮らしの生活、満たされない
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ハッシュ!(2001年製作の映画)

4.0

「強いよな」なんて簡単に言わないで。

もし強く見えるとすれば、弱い僕が傷つかないように偽ってる姿に君が気づいてないってこと。
君も僕も弱いからこうして今、一緒にいるんじゃないの?

僕と君との間の絆
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赤い影(1973年製作の映画)

3.8

霧の中、底知れない闇と背筋の凍る恐怖。

砕けるガラス、剥げ落ちたモザイク。
運命と時間が交差するまで、散らばった過去や未来は置き去されたままに。
"Don't look now"。その戒めは何時誰が
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