【生と死のはさま／戦争を考える①】

※４Kリマスター・リバイバル上映

8月がまたやってきた。

8月、日本人の多くは戦争を考える。

映画「キャタピラー」を観た時に、この「ジョニーは戦場へ行った」を思い出した。

エンドロールの一文はとても皮肉だ。

「お国のために死すことは名誉だ」

何をもって生とするか死とするか。

生きているか死んでいるのか。

これは国家のためだろうか。

連合国は戦勝国だが、戦争によって翻弄されるのは戦勝国も敗戦国も関係なく戦争に駆り出された本来であれば一般の人々だ。

原作が書かれたのは第二次世界大戦の最中だが、反戦小説ということで、その後、廃刊復刊を繰り返し、映画化されたのはベトナム戦争の最中のことだ。

この作品を観て何を感じるべきか、僕たちの思考能力が試されているような気がする。

是非。

『野火 4K』と連結されたチラシがいい。
むかし見たときは知らなかったけど『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』のモデルであるダルトン・トランボが監督・脚本だったのか。どうりで…。

観ていて逃げ出したくなるような、悪夢みたいな映画だった。

主人公のジョーは、戦争で脳も含めて顔の大半を失い、両手両脚も切断されてしまっている。
目も鼻も耳も口もないから、他人とコミュニケーションを取ることも一切できない。
治療に当たる人たちも、そのことは承知済みだ。
というより、彼らはジョーが思考できるとは露ほども思っていない。
研究のために、ただ肉の塊を生かしている、だけなのだ。

でも、ジョーは思考している。
恋人や父親とのこと、戦場でのことなど、過去を思い出し、想像を巡らせている。
記憶のなかの彼は、当然だが五体満足だ。
生き生きと生活をする彼は、でも、ふと現実に戻ってしまう。

見た目はただの肉の塊。でも、映画は彼の心の声を描く。
誰にも伝わらないなかで、彼の叫びにも似た声が響き続ける。
これがもう、やりきれない。

過去の記憶と現実の姿が交互に描かれ、その度に観ているこっちにまで絶望が伝染してくる。
やがて、ジョーは記憶を掘り起こすだけでなく、妄想にも似た夢を見はじめる。
記憶と夢の境はとても曖昧で、何が真実なのかがどんどん見えなくなっていく。
が、その反面、肉の塊であるという残酷な現実だけは、はっきりと突きつけられ続けるのだ。

延々と終わらない悪夢のような時間と言っていい。
これは観ていて、相当にきつかった。
終盤間際になると彼に一条の光が差す。
でも、現実は変わらずに残酷で、彼を救いはしない。

ごく普通の青年がこうなり得るという戦争の残酷さ。
そして、終わりのない悪夢に、終わっても続く悪夢。
「S.O.S……Help me……」
彼が呟き続ける言葉が耳にこびりついて離れない。

二度と観たくない傑作だった。