30年近く前のインターセクショナリティ映画だが既に猛烈に完成度が高い。戦前のハリウッドで歴史の闇に葬られた「スイカ女」の肖像を探っていくなかで本人も曖昧であったアイデンティティを確立させていく。黒人であるが故に小間使いの役すら与えられずなんなら役名すら付与されなかった女優、かつレズビアンでしかも白人女性との間に関係を築いていた彼女。その時代には「いなかった」と透明化されてしまう存在を炙り出す事で、いつの世にも自分の個性を自分で規定し他人に幸福を押し付けられず生きて来た存在がいた事を再認識する、って彼女は完全にフィクショナルな存在なのだが、本当に存在していたかの様にドキュメンタリーパートがしっかり作り込まれている。この映画の主人公も黒人でレズビアンで白人女性と異人種間の関係性を育む。結局は失敗に終わってしまうが、私は私、私は1人の映画作家であると力強く宣言してこの映画は終わる。むしろようやく時代が追いついた感すらある、アップリンク関連なのが玉に瑕と言いたくもなるが…今観ることでより説得力が高まるであろう作品。