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歓待
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『歓待』に投稿された感想・評価

5.0
【異物の侵入】

深田晃司監督×古舘寛治主演の2010年の作品

〈あらすじ〉
東京の下町で「小林印刷」を営む小林幹夫は、若い後妻の夏希、前妻との娘であるエリコ、そして離婚して出戻ってきた妹の清子とともに、どこにでもあるような平凡な毎日を送っていた。一見すると仲睦まじい家族だが、それぞれが小さな不満や秘密を抱えていた。そんなある日、幹夫のもとに加川と名乗る見ず知らずの男が突然現れ…。

〈所感〉
個人的に今年見た映画の中でもトップクラスに面白かったので、なんか悔しいがフルスコア。こういう超気まずい雰囲気の映画大好きなんですよね。なぜなんだろう。ただレビュー数見る感じ、あまり多くの人に見られてないのようで惜しい。深田晃司監督特集で発見した珍作。私は先に『淵に立つ』を見ていたのだが、本作はそのプロトタイプに当たる設定なので、既視感こそあるものの個人的にはこちらの方が悪趣味なブラックコメディで断然好きだった。勿論『淵に立つ』はサスペンスとしてちゃんと仕上がっていたので、完成度はそちらに比べて劣っているとは思うのだが、理屈を超えて好み。社長の小林と若い後妻の夏希が営むこじんまりとした下町の小林印刷が、一人の男を歓待してしまった結果、いつの間にかどんどん人が増えていって収集つかなくなっていく様が地獄絵図でしかなく、これまで感じたことの無い言いようのない恐怖を感じた。この災いは山内健司演じる社長・小林の根底にある事なかれ主義の性分に起因するものだとは思うが、杉野希妃演じる若妻・夏希にも実は後ろめたい秘部があり、古舘寛治演じる謎の男・加川がそんな夫婦の間隙を上手く突いて、彼らの弱みを握り揺することで、家庭を完全にコントロールしていくのが不気味で常に頭が冴え渡っていた。『淵に立つ』の闖入者の浅野忠信からは狂気の中にもまともさも感じられたが、本作の古舘寛治からは基本的にずっと常識から外れている思考・発言ばかりで、人間のOSがそもそも周りと違うんだろうなぁと感じさせられる。でもマジでこういう人、その辺を彷徨いてそうな気もする。あっぱれの怪演だった。終盤の狭い家の中での得体の知れない外国人達のありえない人口密度でのトイレ待ち行列、列車ごっこ、ダンス、パーティのどんちゃん騒ぎ…家主からすればめちゃくちゃ最悪なはずなのに、もはや夫婦もヤケクソで一緒にバカ騒ぎに混じり合うのが最高だった。東京スカイツリーが見える下町の小さな町工場が舞台とあって、外国人労働者をバンバン受け入れていくであろう、この先の日本の縮図を見たようだ。この国の良き美徳であり悪しき慣習でもある「おもてなし精神」、それと国の重要な収入源である「インバウンド」という耳馴染みの良いワードが組み合わさった時の隠されたデメリットを明るみに出していた。本作を見てると、こないだ見た『オデュッセイア』に登場した「ゼウスの掟」という「客人はどんな人であれ平等に饗さなければならない」ルールを思い出す。それが招かれざる客だったとしても、表面上は笑顔で温かくおうちに迎え入れる、その結果はプラスでもマイナスでも考慮しない。やっぱおもてなし文化って百害あって一利なしだよなと思う。フランスの哲学者ジャック・デリダ は『歓待について』という著作の中で、「本当に他者を受け入れるとはどういうことなのか?」と問うたそうだ。「歓待」とは、単に家を開けば成立するわけではなく、あなたは誰か?日本語は喋れるのか?何が目的なのか?といった客の属性をある程度知ることで、初めて条件付きの歓待というものができる。だが、本当の歓待とは、相手が外国人だろうが犯罪者だろうが、誰であろうと喜んでどうぞどうぞ!と迎え入れる無条件的なものだろう。条件付きの歓待は一見理性的に思えるが、根本に相手を選別し支配しようとする不合理な意思が働いている。夏希も加川の嫁と名乗るアナベルのことを日本語がまともに話せないからとどこか下位の存在として見下しているような素振りが象徴的だった。そういうのを踏まえて、現実の社会(VISAの取得、パスポートの提示を求めるなど条件付きの受け入れ)との間で、私たちはどう他者と向き合うべきか?という大きな問いを投げかけられていると思う。本作の撮影期間はわずか8日間、編集は3日間という超短期の突貫作業で製作されているという事実に驚きだ。地味に嫌な後片付けだけが残る余韻も堪らない。輪転機がカタカタと踊る平穏な日常に「異物」が入り込むことで、家族や日本社会の脆さを炙り出す圧倒的な演出力と、ブラックユーモアの鋭さが光る傑作だと思います😄

"いいんじゃない?忘れるわよすぐ"

《2026年 671本目》
nana
3.8

深田ワールド全開のブラックサスペンス✨

にこやかで人あたりが良くあつかましい。

こんな人、身の回りにいるんじゃないかな?
関わるか、関わらないかだけで。

最初は小さな親切から。
断りきれない。
人の良さと気の弱さから踏み込まれた夫婦。
…相手はとても怖い人だった😰😓


下町の印刷工場に現れた、オーナーの亡くなった父親の知り合いだと言う男。
居座り、住み込みで職人として働らく事になるが男の妻も同居する事に。
それから次々に訪れる望まない来訪者。

徐々に家庭を侵略され、親切〜怯えに変わって行く夫婦。

「断る」事が出来ない状況に追い込まれる

いつの間にか揺すられるネタをそれぞれ掴まれ、支配される立場に😰

この住み込み職人を演じる古舘寛治の怪演。
中盤から立っているだけで恐い。
笑ったらもっとコワい😫😨

家を乗っ取られるだけじゃなく、二人の根底を吐き出させられ、穏やかだった夫婦の本当の姿をあぶり出し合う😰

本当は言いたかった?
何も無ければ知らずに生きていけただろう。
それぞれの秘密。

望まぬ歓待
来訪者よりもお互いの本質をさらけ出す事?


自爆装置。
「淵に立つ」を思い起こさせるサスペンス。
人の心理を操作する悪者の使い方がやはり深田晃司監督ならでは。
大人のノワール。


深田晃司映画祭にて鑑賞
一
3.5
『淵に立つ』『よこがお』『本気のしるし』の深田晃司監督作品

下町で印刷所を営む一家のもとに突然流れ者の男が現れ、一家の平和な日常が崩壊していく様を描く

レンタルも配信も対応していないのでDVDをわざわざ購入していたのに、1年以上すっかり忘れてしまっており、ようやく鑑賞
小さなパンフレットくらいの厚めのブックレットが付属していました

一見すると下町のほのぼのとした日常を切り取ったような作品かとおもいきや、どんどんぶっ飛んでいく展開で、これは間違いなく『淵に立つ』の原点でしょう
弱点につけ込む感じは『冷たい熱帯魚』っぽさもある

見知らぬ男が徐々に家を乗っ取り、家庭を破壊していくというプロットはほとんど同じ
しかも古舘寛治に関しては『淵に立つ』で被害者側だったのに、本作ではその不気味な乗っ取る側を演じているのも非常に興味深い

ただ『淵に立つ』ほどの重みはなく、そこはかとない気持ち悪さも薄めで、どちらかと言えばコミカルに描かれているので、シリアスさを求めるよりも不条理コメディとして楽しむ作品かと
幕切れすらも何とも言えない不条理さで癖になる

配役も素晴らしく、古舘寛治の怪演はもちろんのこと、杉野希妃や山内健司はまさにそこで暮らしているようなリアリティ

間違いなく深田晃司監督のファンであれば必見の一本でしょう☝🏻🔥🔥

2021 自宅鑑賞 No.168 DVD

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