同年に公開された『アレグロ・バルバロ』、及び終ぞ完成しなかった『コンチェルト』へと連なる三部作"Vitam et sanguinem"の第一作。ハンガリー近代史を一人の人物の目線から展開するヤンチョー・ミクローシュ的叙事詩であり、三部作は順に1910年代(一次大戦期)→1940年代(二次大戦期)→1950年代(スターリン時代)を描いている。1910年代はハンガリーにとって激動の時代だった。1867年以来オーストリア=ハンガリー二重帝国による平和が続いていたが、枢軸国側として参戦した一次大戦の戦果は悪く、ロシアでの11月革命の厭戦感が強まり、アスター革命による共和国樹立と崩壊、翌年のハンガリー革命による共産主義国家樹立と崩壊、そしてホルティ・ミクローシュを中心としたハンガリー王国の成立、これが10年間に起こっているのだ。それは端的に言えば支配階級の崩壊であり、豪農の息子として横暴に振る舞う主人公ジャダーニ・イシュトヴァーンは、その変化に順応せざるを得なかった。