地味なコロンビア🇨🇴映画ですが、実際に理不尽な運命に翻弄された人々を描いているヒューマンドラマ。
コロンビアは2016年まで約50年にわたって内戦が続いた国。
貧しい暮らしの中で、少年と少女の無垢な愛らしい姿が心に刻まれます💕


シモンの父親は致し方なく非合法栽培のケシ畑で働いていた。
ケシの花はカラフルな色で美しいのにその花からは麻薬アヘンが作られる。
ある日、父の後をつけてケシ畑に迷い込んだシモンは、一帯を取り仕切る麻薬カルテルのボスに見つかってしまうが、ボスは銃の撃ち方を教え練習させられる。

シモンは隣家のルイーサと仲良くなり、彼女が拾った犬が飼い主のもとに戻されたことを知り、その犬を連れだす計画を立てる。
そして、ルイーサの言う山の中の湖を一緒に見に行こうとするが...
突然、民兵によるゲリラ襲撃があり、一筋の明るさのある日常があっという間に消失されてしまう😰

ラストはシモンの頭の中で描かれる美しい湖が...✨



《豆知識》
ケシの花が落ちた後、子房が膨らんで種子が入った「ケシボウズ」と呼ばれる実になり、傷をつけて分泌させた白い液から"アヘン"が出来る。
ケシから採取される"アヘン"に含まれる"モルヒネ"を抽出して、科学的合成により作られたものが"ヘロイン"

「豚とママたちの血が混ざっていました」
内戦の続くコロンビアにて、少年シモンの視点から、麻薬カルテルの精製工場と町の人々、淡い恋心と無慈悲な死の世界を描きます。

私はこういう映画がわりと好きでして、見ていたら『ビヘイビア』を再鑑賞したくなりました。

印象的なシーンはかなりあります。
①ボスとシモンの会話では、カットバック+段階的な顔へのクロースアップというティピカルな撮影をしています。そんな撮影だからこそ、頭に残りやすいです。

②町がゲリラに襲われたとき、精製工場の小屋で待つシモンと、彼が恋している少女ルイーサのクロスカッティングです。
シモンのシーンでは、鏡の上でビー玉を転がし、映りこむ彼の顔を見せます。
そして、ビー玉のクロースアップとスローモーション撮影も交えます。
ルイーサのシーンでもクロースアップとスローモーション撮影を用い、場に漂う不吉なムードと緊迫感がグイグイと感じられます。

③地雷原の疾走シーン。
必死に走るシモンの顔と、疾走する脚の交互な撮影。彼の切羽詰まった感じがとてもわかりやすいです。

④シモンとルイーサと、エメラルドグリーンの湖
ルイーサが地雷原の先にある湖に案内してくれたのですが、このシーンはラストに配置されています。
ここでの2人はとても幸せそうで、美しい風景も相まってそれまでの陰鬱な雰囲気を忘れさせてくれます。
それでも、この湖は過去のこと。この後彼等の前には、避けられない無情な現実が立ちはだかります。


この寂しい街とコロンビアの辛い現実。
友情と恋心の裏側では、内戦と麻薬のシビアな世界。
「死んだらどうなるの？」というシモンの問いに、父は「天国へいくのさ」と答えます。
その後、シモンはルイーサの死に思いを馳せ涙します。
死は冷厳な現実。泣くシモンの姿が、とても虚しいです。

シモンと父がバスにのり旅立ちます。さながら、冒頭に戻ったかのようです。彼等の旅が終わることなく、コロンビア内戦の悲しみも延々脈々と続いていくように思わされました。

内線が続くコロンビア、少年シモンの父親は非合法栽培のケシ畑で働いている。隣の少女ルイーサと仲良くなり、彼女が見つけた犬を飼い主に返すが、悲しがる彼女を見て、毎日犬を盗んでは彼女の元に届け、家主が帰る前に返していた。ある日父のあとをつけて麻薬カルテルのボスにつかまるが、気に入られ、順調な暮らしが続いていたが・・

内戦、虐殺、麻薬、環境汚染、貧困・・運命に翻弄され、内戦と麻薬カルテルの狭間で、非合法栽培のケシ畑の仕事しかない。裸の豆電球がその生活のむき出し感を描写する。終始雲がかかる壮大な自然を目前にし、薄暗い映像が現実の生きにくさを暴く。シモンが淡々と涙一つ流さず、自分の家族が父以外全員殺されたことを話すシーンの彼の表情が印象的だ。そこには起動哀楽はなく、まるでニュースを伝えるように心ここにあらずの顔をしている。そんな彼に大切な友達ができる。こんな現状でも、ルイーザという友達ができ、彼女のために少年は犬を毎日盗む。二人の小さな恋物語が配置されるのは、地雷がたくさん埋まった森という現実。しかし辛い現状の中にも、ちゃんと生活があり、子供らしく生きてる姿は少しほっとしつつ、残酷に映るのだ。なぜならそんな生活も長くは続かないことを観客は知っているから。


麻薬カルテルも民兵組織も躊躇なく罪のない子供たちも残虐に殺していく。逃げた犬を捕まえることが大事に見えた二人の今が、あっという間にもっと大きなものに巻き込まれていく。シモンの切なさが揺らすビー玉と、泥の水たまり、揺れる稲穂に、ひしひしと痛みとして伝わってくる。二人の恋物語を対照的な絵として綴ることで、コロンビアの現状が与える人々への被害が浮き彫りになる。残虐な絵はないが、欝々とした色合いと生きるための選択の数々に、ただ逃げるしかできない切なさに、もどかしさと怒りを覚える。

しかしそんな現状の中でもルイーザと過ごした些細な日々は彼にとっては煌びやかで夢の世界だった。いやこんな現状だからこそ、それは輝いてみえるのだ。そんな小さな光をしっかり守っていかなければならない。