1996年に起きた遭難事故を映画化。
世界にその名をとどろかせるエベレスト登頂を目指し世界各地から集まったベテラン登山家たちは、参加者の体調不良などトラブルが重なり下山が大幅に遅れる。さらに天候が急激に悪化し、命の危険性が劇的に高いデスゾーンで離れ離れになってしまう。ブリザードや酸欠などの極限状況に追い込まれた一行は……。
最初のノンビリほんわかムードから後半は命の危機。死にたくないという気持ち。
何故、山に登るのか？理解はできないな。

　1996年、ある旅行会社が1人65,000ドルでエベレスト営業公募隊を募集した。探検家のロブ・ホール（ジェイソン・クラーク）が引率し、世界中のアマチュア登山家と共に5月10日に登頂を果たすというツアーで、ガイド3名に対し、顧客9名が集まった。9名の内訳はダグ・ハンセン（ジョン・ホークス）、難波康子（森尚子）、ジョン・クラカワー（マイケル・ケリー）、ベック・ウェザーズ（ジョシュ・ブローリン）、スチュアート・ハッチスン、ルー・カシシケ（マーク・ダーウィン）、ジョン・タースケ、フランク・フィッシュベックであり、スタッフはマイク・グルーム（トーマス・Ｍ・ライト）とアンディ・ハリスによるチームは、商業登山の一環として、エベレスト登頂の準備を開始する。今作は実際にエベレストで起きた1996年の大量遭難事件を基にしている。この事件は山岳ファンでなくても、一度は聞いたことがあるはずの悲劇である。当時、名ガイドとして有名だった男と、数々の山々に登頂経験のある登山隊が、エベレスト登頂に成功するも、下山時の判断を誤り、8名が死亡したエベレスト史上最悪の遭難事故である。つい最近もネパール地震の影響で発生した大規模な雪崩により、18名が死亡した事故があったが、天災ではなく、人間の判断ミスで起きた悲劇としては、映画の基になった96年の事件が過去最悪の遭難事件として記録されている。

　5,364ｍのベースキャンプを拠点に、第１、第２、第３とキャンプ地を徐々に高い所に上げていき、サウス・コルの下に第４キャンプ(7,951m)を設けると、そこから一気に8,848ｍの頂上まで登っていく。アタックの日は真夜中に出発し、明るくなる頃、頂上直下の難所にさしかかり、登頂してもしなくても午後の早い時間には引き返して、陽のあるうちにテントに戻らねばならない。サウス・コルから先はデス・ゾーンと呼ばれ、人体は高所順応せず、酸素が補充されるよりも早く酸素の蓄えを消費する。 酸素ボンベなしでデスゾーンに長時間滞在すると身体機能の悪化や意識の低下が起こり、最終的には死に至るとされる。導入部分の省略により、幾分不親切に見えるが、この第4キャンプから頂上までの道のりを描き方はなかなか丁寧で迫力がある。 最初はフィッシュベックが身体に変調をきたし、出発後すぐに引き返す。続いてベック・ウェザーズが「バルコニー」と呼ばれる場所まで登ったところで、前年に手術した視力障害が悪化し、ほとんど視界がなくなったため、隊長であるロブにそこで待つよう指示される。幾ら高所順応したところで、デスゾーンに入ったことで次々に身体の不調を訴える。まるでエベレストという巨大な山が、登山者を拒むかのように過酷な運命に彼らを追いやっていく。先ほどまで頂上からの美しい眺めを見せていたエベレストの山が、一瞬にして彼らを襲う凶器となる。そのくらい自然というのは残酷で美しい。

地球上で最も危険な場所へ。

バルタザール・コウマウクル監督、ジェイソン・クラーク、ジョシュ・ブローリン等の共演による実話をベースとしたアメリカ、イギリス製作の山岳ドラマ。
1996年、エベレスト登山に挑む人々の姿を描く。
登山ガイド会社によるAC隊の隊長、ロブ・ホールをクラーク、AC隊の客、ベック・ウェザーズをブローリン、ロブの親友でMM隊の隊長、スコット・フィッシャーをジェイク・ギレンホールが演じているほか、ジョン・ホークス、ロビン・ライト、エミリー・ワトソン、キーラ・ナイトレイ、サム・ワーシントン等が登場。
物語は、1996年5月、エベレスト登頂を目指す登山家等の様が中心となり、もはやこの一点を描いているのみと言っても過言ではない。
前半では、世界最高峰であるエベレストに登るために、どのような準備や訓練が必要かが丁寧に示されるため、そこだけでエベレスト登頂の過酷さが伝わってくるものとなっている。
何より、既に9年前の作品であるものの、リアリティを追求した監督により、実際にエベレストで撮影された映像は、観ているだけで寒さや辛さが伝わってくるため、半分ドキュメンタリーのようであり、キャストはもとより、その裏にいるスタッフには頭が下がるばかり。
そんな中、ジャーナリスト役でヴァネッサ・カービーが登場していたり、はたまたベックの娘を、眉毛が薄い子が演じているなと思っていたら、まだ新人の頃のミア・ゴスであったりしたのも見逃せないポイント。
本作品の背景には、エベレストの商業登山化があるのだが、商業登山だろうが、一個人の登山だろうが、登頂に対するリスクを把握したうえで、綿密な計画と引き際が大切であり、これは自己責任との兼ね合いも含め、登山に限らず、お仕事ムービーとしての教示も感じられるとともに、寒々とした映像は猛暑に観るにはピッタリで、豪華キャストが共演しているなか、チョイ役とも言えるゴスの眉毛のインパクトが忘れられない一作。

決定権は、いつも山が握っている。