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  • まなぶ 通信制中学 60年の空白を越えての感想・レビュー

まなぶ 通信制中学 60年の空白を越えて(2016年製作の映画)

上映日:2017年03月25日

製作国:
  • 日本
  • / 上映時間:92分
    監督
    太田直子

    「まなぶ 通信制中学 60年の空白を越えて」に投稿された感想・レビュー

    おっちゃん
    おっちゃんの感想・レビュー
    2017/04/09
    4.3
    現在全国に2校しかない通信制中学の物語。通信制中学とは、戦後、学校教育が6・3制になったときに中学未修了者を対象に作られた制度である。基本は通信なので、登校は月2回程度スクーリングが行われるが、映像の中心に据えられるのはそのスクーリングの場面であった。最盛期には全国に80校近くあったようだが、現在は東京・大阪に2校で一学年2~3人程度となっていて、教科によっては学年合同で授業を行っている。対象者の高齢化もあるようだが、私のようにその存在を知らない人も多く、もう少し需要があってもおかしくないようだ。実際に私の義母も小学校しか出ていない。
    70才前後の人たちが学ぶ姿は本当に楽しそうで、青春そのものといった感じがある。授業の内容はともかくも、高齢になって数学や理科などに取り組み、答えを一生懸命導き出そうとする姿勢は頭が下がる思いである。「81.4÷10」という問題が解けないおじいちゃんに勉強を教える先生も必死である。当時中学にいけなかった理由は戦後の混乱期の貧困や障がいがあったということだが、少なくとも映像に出てくる方たちは家を構えていたり、子を大学までやったりと一見不自由さは感じられない。しかし、これまでの人生の中で中学を卒業しなかったことが精神的な負い目になってきたと皆一様に話されている。
    私たち戦後世代は「普通ってなんだよ。普通ってあるわけないじゃない」などと簡単に語ってしまうところがある。とりわけ「個性」の重要性を植え付けられた世代はそう思ってしまうのかもしれない。でも、それはあくまでも「普通」を保障され、無難に通ってきたからこそ言えることで、傲慢な考えなのかもしれない。この映画からは「普通」を通ることができなかった人たちの苦しみが伝わる思いがした。ただ、卒業式の晴れやかな笑顔に本当に救われる思いがしたのも事実である。
    そして昨今、貧困問題を背景に学習面で苦労している子ども達がたくさんいる。そのような意味では社会のひずみはいつも子ども達にまわされるのかもしれない。少子高齢化が経済面だけで語られることが多い中、私を含めた社会の中心世代はいろんな視点で物事を掘り下げていかなければいけないと改めて考えさせられた良作だった。
    yu
    yuの感想・レビュー
    2017/04/08
    4.5
    戦後の混乱期に義務教育を受けられなかった高齢者たちのために設置された、公立の通信制中学校のドキュメンタリー。
    夜間中学は知っていたけれど、通信制中学というのは初めて知った。
    自宅での学習に加え、月に2回、学校に集い授業を受ける。生活環境や体調など様々な理由で、学びたくても夜間中学には通いきれない高齢者たちが通う中学校。

    どの生徒さんも、授業を本当に熱心に、楽しそうに受けている。
    義務教育を受けられなかったことにより、幼い頃から劣等感を抱き続ける人。周囲から蔑まれ、職を点々とし、悔しい思いをしてきた人。
    「学んだことが私の土台になる」「勉強すると心が豊かになる」というのは、本当にその通りだけれど、その言葉の重みが心にずしっときた。
    卒業式を迎えたその表情は、とても晴れやかにも、強い意志を持ったようにも見え、胸が熱くなった。

    義務教育制度が開始してなお、十分に教育を受けられなかった人たちがこんなに大勢いることに驚き。
    教育を受ける権利を奪われていたことにも気づかなかったり、知らないが故に様々な社会保障制度から抜け落ちてしまったり。
    子どもだった彼らには何ら責任がないのが、余計に辛い。

    登場する生徒の皆さんは、この学校で学ぶことで青春を取り戻し、人生を変え始め、輝いて見える。けれど、やはり失った数十年という時間はあまりにも大きく、後から取り戻せるものではないと感じた。
    「学校の勉強なんて大人になったら使わない」と思う人に是非一度見てみてほしい作品。
    スコアをつけるのも畏れ多いのですが…本当に観てよかったです。