ラ・カチャダの作品情報・感想・評価

ラ・カチャダ2019年製作の映画)

Cachada: The Opportunity

製作国:

上映時間:81分

4.2

「ラ・カチャダ」に投稿された感想・評価

pherim

pherimの感想・評価

3.7
エルサルバドルで露店を商う、シングルマザー5人の演劇ワークショップ。

演技する中で、無意識化された記憶が直にからだへ蘇り、心が後追いする過程の映りでる様は驚異的。感情の振り幅大きく喜怒哀楽の彩度は高く、深刻でも最後には笑い飛ばすラテンの明るいノリが切なくも良い。
はやと

はやとの感想・評価

4.5

このレビューはネタバレを含みます

よかったなあ。
構成はシンプルで、女性のそれぞれの生活が間に入りながら、後は芝居の稽古、その中にはそれぞれが経験した過去の辛いことの独白。
派手さはないけどしっかりと人生がそこにあって、想像する部分もあって。

傑作だと思います。
みらい

みらいの感想・評価

3.8
とても良いドキュメンタリー。
ドキュメンタリーでしか味わえない発見と感動。
肝心の舞台本番を省く演出、素晴らしい。
あの拍手をみれば十分だから。

演出家の、すべての母親、すべてのこどもたちに向けて。という言葉、最高だった。
Moomin

Moominの感想・評価

4.8
めちゃくちゃ面白かった というか分かりやすかった まだまだ見るとこが浅いかも
エルサルバドルで家庭を育む主婦が立ち上げた演劇クラブでのお話
5人の役者さん達 各ひとりひとりに「家族」という永遠のテーマがある そのテーマに向かって演劇するものの、ぶち当たるのは自分の過去の「家族」について
・かつて虐待を受けていた 
・そもそも親の記憶がない…
・レイプ
・若年出産
そんな壁にぶち当たりながらも役を演じることによって成長を望む
現在いる「子供」の問題も含めて

題材が素晴らしく 更にしっかりと撮れている 話し手と受け手の構造が見え、観ているものの感情を揺さぶられる
バストショットが多めだからだろう
人間の感情が素に出ている それは「演劇」を撮ったからなのか 素直に題材が良いと思った
ストーリーとして観たら劇場公開しないのがもったいないレベル
何故こういった作品が世に出ないのかが不満だ
mingo

mingoの感想・評価

4.0
なんか賞ひっかかるかなと思ったがひっかからなかったのにめちゃ泣けるし、キュアロンの「ROMA」的でめちゃ良い。監督がエルサルバドルに住むトラウマをかかえたシングルマザーと劇団を立ち上げ公演するところまでを追ったドキュメンタリー。リハーサルを繰り返すうちに浮き彫りになる社会が許容している女性に対する不当な暴力のサイクルであった。自分たちの生活や状況に向き合い、普段は陽気に振る舞う彼女たちは哀しみを肥った肉体と共に植え付けられたトラウマを乗り越えることができるのか。ラストの劇をさらっと描くところにも好感が持てたし、あくまで彼女たちの過程を描くことに本当の意味がある。好きな人にはじめてをレイプされた女性が哀しい記憶を呼び起こされるけど何度も立ち向かう姿は脳裏に焼き付いて離れない。人は生きている限り、立ち向かえる力があるんだ!
2019/10/13
山形国際ドキュメンタリー映画祭
山形市民会館
KatoTomoko

KatoTomokoの感想・評価

5.0
山形国際ドキュメンタリー映画祭2019インターナショナルコンペティション作品。エルサルバドルのシングルマザーとともに行った演劇ワークショップの記録。

残酷なアプローチの先に見出される希望。なんとこの作品が長編一作目で、構想は学生時代から温めていたという監督さんの、知性と才能が溢れる真っ直ぐな瞳で射抜かれるティーチインも印象的でした。
暴力の顕在に対して、悪循環を断ち切ろうとする当事者の苦痛。

こういう作品に出逢うために、わたしは映画を見続けたいと思いました。
CHEBUNBUN

CHEBUNBUNの感想・評価

3.0
【YIDFF2019:演劇は自分を客観的に見るツールだ】
台風の影響で延期になったエルサルバトル映画『ラ・カチャダ』。香味庵の打ち上げまでの丁度良い時間に延期されていたので挑戦してみた。

『別離』のエクタ・ミッタル監督もそうだが、山形国際ドキュメンタリー映画祭の国際的知名度はやはり高いらしく、本作のマレン・ビニャヨ監督も学生時代に本祭のことを知って、初長編作品を出品している。また『エクソダス』上映時には、イラン映画の大御所アミール・ナデリ監督も参戦していたり、そもそも海外からの参加者も多かったりするので、ひょっとすると東京国際映画祭や東京フィルメックスなんかよりも知名度高いのでは?と思ったりします。

『ラ・カチャダ』のマレン・ビニャヨ監督について少し書いていこう。彼女はエルサルバドルを拠点とするプロデューサーで2016年に制作会社La Jaula Abiertaを設立しています。そしてPBS Frontline、BBC News、CCTV Americas Nowなどで働いたキャリアを持っている。今回、デビュー作となった『ラ・カチャダ』は製作に14年の歳月がかけて作られた作品だ。《カチャダ(Cachada)》とはスペイン語で「逃げることのできない特別な状況」を表しており、心に傷を負った者たちの挑戦を描いている。

DVや貧困で心理的傷を負った女性たちのセラピーワークショップが発展して《カチャダ》という小さな劇団を作るところにまで発展する。本作は、その劇団が公演を行うまでを密着取材したものである。

本作に登場する女性たちは、皆DVや幼少期の虐待、貧困によって心に傷を負っている。それを演劇の中で即興的に吐露していく。DVを行う者、虐待をされていた頃の自分、子どもに暴力を振るう自分を子どもの視点で演じるといった演技をすることで、客観的に《自分》を捉えていく。そして、周りの仲間たちの受け入れの心によって心の膿を少しずつ出していくのだ。

しかし、このセラピーには倫理的危うさがあり、当事者とセラピスト双方も、その綱渡りな状況を理解しつつ、手探りで癒しを求める。

ウェンディはこう語る。
「自分が経験したものは人に見せられない」

またセラピストはこう語る。
「専門家じゃないのに、人のプライベートゾーンに立ち入って良いものなのか?」

こういった後ろめたさや、前に踏み出せない気持ちは、長年かけて培った信頼関係でもって打破される。ハグ等の肉体的ふれあい、どんな演技も褒めることで承認欲求を満たしていく様が説得力をもって《癒し》の手法を提示している。

そう、これは心理療法士や学校の先生、医療関係者にとって目から鱗な作品である。虐待されていきた者が、暴力は振るいたくないと思っていても自分の子どもたちに手を上げてしまう様子や、日々15$という僅かな日銭をやりくりして生きる女性たちの貧しさを井戸端会議的に話し、それを演劇に取り入れることで客観的に物事を笑い飛ばし、心を軽く豊かにしていく手法には唸るとこがあります。

ただ、そういった人の心理的変化を描いている作品にも拘らず、また14年の歳月をかけて製作されたにも拘らず、映像構成がとっ散らかっているように見えてしまったのが残念。

それこそ濱口竜介の『親密さ』のように稽古シーンを2時間描き、そこで形成された心理的変化を後半2時間で紡ぎ出すといった作りの方が説得力を持てたのではと思ってしまうところがあります。

と言う訳で、個人的に面白かったものの、惜しい!と思う作品でありました。