田島史也さんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

ワンス・アポン・ア・スタジオ 100年の思い出(2023年製作の映画)

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This is Disney.

アニメからアニメーションへ。ディズニーの歴史が凝縮された傑作。昔の作品については、当時のタッチがそのまま反映され、近年のキャラクターとの交わりの中で、異様な雰囲気を醸
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ウィッシュ(2023年製作の映画)

3.5

これまでも、これからも、星に願いを。

夢を叶えるディズニーの、100周年にピッタリのテーマ。主題が完全に「星に願いを」であり、まさに集大成であると言える。

ストーリー全体は、メディアによる情報の隠
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マッチ工場の少女(1990年製作の映画)

3.1

ある意味ホラー。

肝座り過ぎなマッチ工場勤務の女。労働三部作独特の空気感。

あの仕事は何なのだろう。ほとんど機械的な作業の中に、彼女の自我は介在し得ない。男を、愛を求めるも、それは達成されない。幸
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枯れ葉(2023年製作の映画)

3.6

ステレオタイプな恋愛観を持つ、旬の過ぎた男女の、不器用でどこか愛おしい、秋風漂うラブストーリー。


喜劇でも悲劇でもない、なんでもない恋模様が、今日も世界のどこかで繰り広げられている。ラジオから流れ
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コントラクト・キラー(1990年製作の映画)

2.9

失業し、死のうと思ったが死ねず、殺し屋を雇って死のうとするも、生きる希望を見いだしてしまい、殺し屋から逃げる男の話。

異様なまでにセリフと音楽を抑制した本作。
音楽がなく、沈黙が多いため、リズムが生
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レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ(1989年製作の映画)

3.6

実写版ミニオンズ。
バカバカしさと愛らしさの協奏曲。


始まった瞬間から、尖ったリーゼントと革靴が目に飛び込んでくる。ようこそ奇妙な世界へ、と言わんばかりの幕開け。もうこの時点で大好きな作品だと確信
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真夜中の虹(1988年製作の映画)

3.5

隠蔽の魔術師、カウリスマキ。


パラダイスの夕暮れと同様、タバコが映像の軸となる。また、子供と夫婦を分かつ扉も登場。そして、最初は必ず仕事の様子から。その時一切のセリフは排される。これらは、カウリス
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パラダイスの夕暮れ(1986年製作の映画)

3.8

タバコと男女。そしてゴミ。

皆、何かに飢えている。その何かを満たすためにタバコを吸う。タバコが彼らの心を落ち着かせ、観客に対しても安定的な地平を与える。

恋愛に不慣れで不器用な男。待つ女と踏み出せ
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レッド・ドラゴン(2002年製作の映画)

3.0

羊たちの沈黙の前日譚。狂人レクター爆誕。

同シリーズの他作品に比べると分かりやすい展開。レクターに協力を仰ぎ、犯人の心理を探り、犯人像を特定していくという、羊たちの沈黙と同じ流れ。

核心的な部分は
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ハンニバル(2001年製作の映画)

3.1

前半は意味不明、後半は爽快。

本作は完全にハンニバル・レクターが主人公、といった感じで、前作よりもレクターの存在感が強かった。

前半は、セリフベースで物語が進み、ワンショットを見逃すだけで理解が出
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市子(2023年製作の映画)

3.3

ある女。

市子が失踪するところから物語が始まり、徐々に市子の過去が明かされていく物語。市子の過去を知る者から徐々に市子とは何者なのかが明らかになっていく。足りないピースが徐々に埋め合わさっていき、悲
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プーと大人になった僕(2018年製作の映画)

3.6

大人になるって悲しいことなのかな。
きっと、過去に戻れないから、過去を想うんだろうね。大人になるのが悲しいのではなくて、子供時代を失うことが悲しいんだ。大人になって、童心を持つことはできても、子供心で
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夢のチョコレート工場(1971年製作の映画)

3.1

ウィリーウォンカの原型、此処にあり。

『チャーリーとチョコレート工場』に影響を与えまくった作品。登場人物も設定も基本的には同じ。チャリチョコは本作のリメイク版と認識しておけば良さそう。ティムバートン
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ウォンカとチョコレート工場のはじまり(2023年製作の映画)

3.1

多幸感満載なチョコレートミュージカル映画。

二項対置的な構図により度々逆境に追いやられるウォンカが、敵を打ち負かし、チョコレートで人々を幸せにするまでの話。良くも悪くも完全なる勧善懲悪。チョコレート
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チャーリーとチョコレート工場(2005年製作の映画)

4.1

我が青春。

久しぶりに観たら、あの時代が甦ってきた。チャーリーと同じ子供時代に、チョコレート工場を夢見て夢中になっていた自分。懐かしくて、温かい気持ちにさせられる。

世界観の作り込みが圧倒的なもの
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羊たちの沈黙(1990年製作の映画)

2.9

現代的サスペンスの教科書。

抽象的で鋭利なレクターの台詞は、クラリスの心理を見透かし、えぐりとるよう。いわゆる戦後のジャック・ラカンの精神分析を筆頭とした学説の中で生じたサイコパシックな描写の成熟を
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気まぐれな唇(2002年製作の映画)

2.8

沈黙の魔術師、ホン・サンスの初期作。

ギョンスが2人の女性に振り回されるだけ振り回されて、振られる話。

沈黙と会話のリズム、そしてロングテイクが生み出すテンポが心地よい。窃視症的な観客を創出し、永
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ナポレオン(2023年製作の映画)

3.8

ナポレオンがジョセフィーヌへの愛に溺れる物語。英雄か悪魔かの答えは出ず。

Appleお得意の資本の暴力による、大規模スペクタクル。精緻で大規模なセットやエキストラの数、VFXのレベル。血の描写も文句
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ブラックホーク・ダウン(2001年製作の映画)

3.6

米軍の対ソマリア戦をじっくりと描いた作品。タイトルのブラックホーク・ダウンは物語の始まり。戦々恐々とした世界への片道切符。

大胆なカッティング、動的なカメラワーク、鬼気迫る演技、そして凄絶な音響。こ
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マッチスティック・メン(2003年製作の映画)

2.8

ハリウッド版コンフィデンスマンJP。製作年的にはコンフィデンスマンよりも前の作品だから寧ろ逆なのだろうが、私的にはそれには及ばなかったと感じた。

終盤の怒涛の展開は鬼気迫るものであったが、それ以前の
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グラディエーター(2000年製作の映画)

3.5

古代ローマの狂乱の一時代を描いた大スペクタクル。

規模の大きさはあえて語るまでもない。何よりも台詞が良い。メタファーの散りばめられた台詞が、物語の重厚感を高めてくれた。

誰からも愛されなかった悲劇
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テルマ&ルイーズ(1991年製作の映画)

3.6

男に目がなく人を信じすぎるテルマと、感情的で理知的なルイーズが、暗黒面に堕ちていく話。夫に抑圧されているテルマは親友のルイーズと共に慰安旅行へ行くが、ある事件をきっかけに運命の歯車が狂い始める。

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ブラック・レイン(1989年製作の映画)

3.5

NY警察の荒くれ者ニックとお人好しチャーリーがジャパニーズマフィアの事件に巻き込まれ、正義感の強い日本警察のマツ(高倉健)と共に宿敵佐藤(松田優作)を追う作品。刑事ドラマとヒューマンドラマ、ヤクザ映画>>続きを読む

ブレードランナー ファイナル・カット(2007年製作の映画)

2.8

ハリソン・フォードがずっと追い、追われる作品。

せっかくの壮大な世界観を生かしきれず、コンパクトにまとまってしまったストーリー。ずっと追いかけっこしているだけなら、相手がレプリである必要はない。レプ
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女は男の未来だ(2004年製作の映画)

3.0

欲情と酩酊、別れと再開の物語。
醜くも愛おしい人間味溢れる登場人物達が織り成す、至極のヒューマンドラマ。

特徴的なロングテイクは、隙だらけのように見せかけて、実は計算され尽くされた構成となっている。
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(2023年製作の映画)

3.0

アドリブ戦国喜劇。

圧倒的な規模で描かれた戦国スペクタクルは見応えあり。北野武独特の画作りは本作でも遺憾なく発揮されていた。キタノブルーとして評価された監督の作品なのだから、やはり映像には期待をして
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翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~(2023年製作の映画)

3.4

このレビューはネタバレを含みます

地元ノリを全国へ。
地方プロモーションの最上級。

今年の邦画の中ではブッチギリの大問題作。製作にフジテレビが入ってるもんなぁ。フジの肝入りの企画だと聞けば納得のクオリティ。

パロディが多すぎて、大
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アメリ(2001年製作の映画)

3.2

デリカテッセンやロストチルドレンに登場した要素や画作りを踏襲しつつ、ジャンピエールジュネの新たな境地を魅せた作品。性行為からリズムが生まれる一連の流れはデリカテッセンのそれだし、霧がかかったような描写>>続きを読む

アメリ デジタルリマスター版(2001年製作の映画)

3.5

ユーロスペースにて公開時の35mmフィルムで鑑賞。所々入るノイズが良い。あぁ、映画観てるなぁって感じる。20年以上前に上映されたものを、今観られたことが嬉しい。ほぼ私と同じ年齢のこの作品には、観る前か>>続きを読む

天才スピヴェット(2013年製作の映画)

3.2

10歳の天才科学者TSが永久機関を完成させて、賞を受賞し、1人で大陸横断という大冒険をし、終盤は「天才」と囃し立てる大人に振り回される話。序盤と中盤と終盤で主題が変化していくのが面白い。

これまで奇
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ロスト・チルドレン(1995年製作の映画)

3.0

とりあえず、怪力男ワンがずっと弟を探し、追いかけられ、逃げる映画。ストーリーも撮影手法も、どれをとってもカオスでクレイジーな作品。ただ、そういう便利な言葉で形容してしまうのは勿体ない作品。

ものが連
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デリカテッセン(1991年製作の映画)

3.0

ジャン=ピエール・ジュネの初監督作品らしい。初にしては、らしさ全開の作品で、既に完成されている感。
斜めの構図が印象的。ひとつのアパートの中で繰り広げられる軽快なコメディ。シリアスなコメディって新感覚
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水の中で(2023年製作の映画)

3.8

決して実験的な作品では無い。ピンボケが世界を作り、ピンボケが世界に飲み込まれていく。蓋を開ければ王道のヒューマンドラマだが、その手法と細部のディティールに驚かされる。
3人の人間模様が主軸となるが、直
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逃げた女(2019年製作の映画)

3.3

印象的なズームインは視線による独白である。一貫したロングテイクは本作のリズムを作り出す。俳優はとてつもなく大変だろうが。かなり奇異な手法であるが、案外慣れてしまえば違和感を感じない。それどころか、次は>>続きを読む

人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした(2023年製作の映画)

2.7

穐山茉由さん特有の温かい世界観だなぁと感じた。音の描写がひとつひとつ丁寧で、観客を包み込んでくれるような。

ストーリー展開自体は相当ベタ。タイトルで全てを明かしているから、なにか意外なことが起きる訳
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前科者(2022年製作の映画)

3.2

悲惨な幼少期を過ごした人間は、悲劇的な人生を歩む。犯罪者は犯罪を犯すまでに多くの苦痛を味わい、生きるために法を犯す。正義を気どる警察官や裁判官のような恵まれた環境で育った人間には分からない、壮絶なバッ>>続きを読む