ヘタクソだと思う。バランスもなにもない構成、工夫を欠いた撮り方(理路整然と台詞で心情を説明させるのではなく、むしろチープな音楽と寄り気味のカメラで説明しようとする素人臭い手法)。だが、それも慣れてくれ>>続きを読む
このホラ話の強度はどうだろう! ホラー&コメディとして実によくできた作品であると思う。黒沢清やシャマランを想起しながら鑑賞した。細かいところまで気配りが効いていて、それでいて説明過多になっていないとこ>>続きを読む
侮れないな、と思った。一見すると人生のキレイな要素だけを煮詰めたようなスタイリッシュな(それでいて、ギミックに頼っていない骨太な)映画のように感じられる。しかしその影では使われる音楽がちゃんと時代を反>>続きを読む
骨太なストーリーだと思った。悪く言えば「遊び」がない。話を面白くさせるための贅肉やムダ(例えば、サリンジャーにまつわるマニアックなトリビア)が存在しないので、サリンジャーという作家を密着したところから>>続きを読む
なんだ、このリアリティのなさは。いや「音楽を愛聴する凄腕のドライバー」という設定自体が無理の賜物なのでケチをつけるのは野暮というものだが、主人公が過去に負ったトラウマについても生々しく描かれるわけでも>>続きを読む
静かな映画だと思った。音楽を極力禁欲し、俳優たちの演技でこちらを引きずり込む。点がどうしても低くなってしまうのは、トルーマン・カポーティとは何者なのかをきちんと説明しようとしないその不親切さにある。い>>続きを読む
ウディ・アレンが知性派であることは言を俟たない。そして、この映画でもそんなインテリ好みのジョークや哲学はふんだんに盛り込まれていて、こちらを魅了させもするしやや辟易させもする(私は両方でした)。キーワ>>続きを読む
洒脱な映画だなと思った。年の功、というのだろうか。ギラギラした野心を漲らせてこちらにアプローチしてくる脂ギッシュなところがなく、それでいて枯れているというのとも違う、落ち着いたアプローチでこちらをスト>>続きを読む
ダニー・ボイル、リチャード・カーティス、そしてビートルズ。これだけ美味しくなる要素がありながら、できあがったのはどこかビミョーな作品だった……細かいところはよくできていると思う。セリフの中に溶かし込ま>>続きを読む
エドワード・ヤンの映画は瑞々しい。映像が綺麗というより、作品を貫く空気が新鮮に感じられるのだ。彼の映画は台湾の風俗や文化が刻み込まれているが、それは今観ても決して古びた印象を感じさせるものではなく、か>>続きを読む
死を前にすると、人は否応なくどう生きるかを考えさせられる。それはこの映画でも例外ではない。だが、この映画は何処か人の心理をフラットに描いているように感じられた。綺麗事がないと言えばそれまでなのだが、セ>>続きを読む
レディ・ガガの生歌の旨味を見事に活かした音楽と、卒がない映像は良いと思う。だが、それ以外はどうか? つまりこの映画をエンターテイメントとして楽しめるかどうかというと、私は疑問を感じてしまう。まずアリー>>続きを読む
ジョーカーとは本当に悪のカリスマなのだろうか。私にはこの映画のアーサーが「カッコ悪いやつ」の典型にしか思えてならなかった。精神疾患、機能不全家族での生育歴、ウケないジョークを延々と披露する等など。惨め>>続きを読む
処女作の中にその作家の全てが詰まっている、という説がある。なるほど、この『レザボア・ドッグス』の中にもその後のタランティーノを連想させる萌芽は色々あるように思う。裏社会を生きる男たちの哀愁。他愛もない>>続きを読む
諸行無常、栄枯盛衰……そんな言葉が思い出される。この映画で描かれるのはどんなヒーローたちもいずれは表舞台から退いていくという端的な事実なのではないかと思った。いつまでも華やかな時間は続かない、という…>>続きを読む
あまり点が高くならないのだが、悪い映画だとは思わない。上品で卒がなく、丁寧に人々を描いていると思う。この映画を観ながら、人は果たして変わる生き物なのだろうかと考えた。リリィは母親を死なせたことをずっと>>続きを読む
悪人がひとりも出て来ない、コミカルというにはやや湿っぽいけれどそれでいて暖かい気持ちにさせてくれる、そんな映画。ウェイン・ワンという人は変な人だ。どんな作品もひとつかふたつくらいは光るショットが存在す>>続きを読む
ホットな映画だと思った。理知的に詰めて考えていない(そんなことを言い出したら、この映画は御都合主義だらけだ)。伝えたい哲学があって、それをユーモラスにかつストイックに伝えることを目指している。だからス>>続きを読む
途方もないノスタルジアを感じた。寂寞とした感覚、と言っても良いかもしれない。アジアの映画ならではの……例えばイ・チャンドンや黒沢清の映画にも通じるような要素を勝手に感じ取ってしまったのだった。人は何処>>続きを読む
私もまたQなのかもしれない。いつか電話が掛かって来て、世界の真理を教えてくれると思っている。そして、心にブラックホールを抱えたままクソゲーみたいな仕事をこなしている。その意味ではこの映画は「未来」なん>>続きを読む
もっとベタに感動に持って行こうとする(あざとい)作品かと思って観たのだけれど、そうではなかった。この映画は老人たちがヒップホップダンスを踊るというムチャをやってのけるコメディと言うよりは、ダンス/ヒッ>>続きを読む
吉田健一の卓抜な比喩を援用すれば、例えば桜の花びらが樹から地面へと落ちるその事実それ自体に有難味を感じたくなるような、そんな映画だった(褒めてます。念の為に)。原作を読んで感銘を受けたので楽しみにして>>続きを読む
予想を裏切られる私の中での高評価に結実したのは、あるいは私の弱さからだろうか? この監督ならポップなものを撮るかな、という予測を裏切るようにして映画は「2人のローマ教皇」のシリアスな対話を切り返しを用>>続きを読む
バリー・ジェンキンスの映画は『ムーンライト』しか観ていないのだけれど、『ムーンライト』の美点でもあった手堅さと上品さはこの作品でも確かに息づいているように感じられる。一見すると黒人差別として手垢がつく>>続きを読む
素朴な映画だと思った。素材をレアなまま提出することに腐心している。悪く言えばひねりがない。田舎町の小さな教会がそのまま全世界の縮図となり、スケールの大きな宗教的論争が展開される……というほどキレッキレ>>続きを読む
正直に言えば、自分の言葉に自分で笑ってしまっているようなこの映画のノリは苦手ではある。だが、遺作だからといって過度に構えて観る必要もないだろう。メッセージ? むろん最後の「先生」の言葉も余韻を残すが、>>続きを読む
やや期待外れ。まあ仕方がない。デヴィッド・リンチ自身がカメラを回しているわけではないのだから(その意味では、リンチ自身が撮った実験的映像及び『イレイザーヘッド』が浮き上がって見えるのは「風格」の違いか>>続きを読む
デーハーな演出は見られない。手堅く、そして渋く。感情のぶつかり合いを軸にして(なにしろ法廷劇も展開されるのだから)丁々発止のやり取りでワンシーンを長く引っ張り、こちらを釣っていく。これは相当な俳優陣の>>続きを読む
ホットな映画だと思った。そのまま人の肌の熱さが伝わって来るように思ったのだ。それでいて汗臭くない。不勉強にしてスパイク・リーの映画を観るのはこれが初めてなのだけれど、冒頭の司会者のキレッキレの演説と末>>続きを読む
ソフィア・コッポラなりに試行錯誤しているのかな、というのは伝わる。キューブリック『バリー・リンドン』を思わせるような薄暗い幽玄な映像(相当自然光で撮ったのか?)。それはハッタリに堕してはおらずこちらを>>続きを読む
無粋な観客なので、この映画は「ストーカーを扱った、新感覚のホラー」としか受け取れない。近年の黒沢清が撮りそうな、洗練された映像と奇妙に性欲や暮らしの匂いがしない清潔な男女に纏わる怪異譚、というように。>>続きを読む
私はゴダールは確かな知性の持ち主だと思っている(言うまでもないが、だからといって彼の作品や発言を全肯定はしない)。この作品でも彼は極めて冷徹に他者の映画やこの世界の現実を記録し、それをコラージュとして>>続きを読む
『クレイマー、クレイマー』に似ていると噂の本作だが、あいにく私は観ていないのでなんとも言えない(恥ずかしい話だ)。私が想起したのはダルデンヌ兄弟の映画だった。音楽に過度に依存しない。回想シーンを挟まな>>続きを読む
感じたのは、これまでのイ・チャンドン作品では影に隠れていた印象がある「哀切さ」だった。それは原作が村上春樹の短編であることと無関係ではないだろう。ハルキ・ワールドのエッセンスを散りばめて(男ふたりと女>>続きを読む
基本的にこの映画は、閉鎖された部屋の中で出来事が展開する。だから自ずと雰囲気は演劇的になり、あるいは閉鎖的になる。背景の美しさで魅せるという類の作品ではなく、俳優陣の丁々発止のやり取りや表情で魅せるも>>続きを読む
如何にもジョン・カーニー作品の亜流で売ろうとする雰囲気をナメて掛かってしまったからなのか、嬉しい期待の(もちろん良い意味での)裏切りを感じたように思った。とはいえ、「私の中の」次第点には達しているが評>>続きを読む