踊る猫さんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

踊る猫

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ホット・ガールズ・ウォンテッド(2015年製作の映画)

4.0

素人のように見せかけたポルノ女優たちの夢と現実を描いたドキュメンタリー。もっとひとりひとりの描き込みが欲しいとは思った。ただ単に「金のため」「セックスのため」「有名になりたい」というフィジカル/マテリ>>続きを読む

カセットテープ・ダイアリーズ(2019年製作の映画)

4.2

実に渋いところを突いてくる作品だと思う。プロテスト・ソングに目覚めて自分も創作を始めるというパターンならありふれているが、そのきっかけがボス(ブルース・スプリングスティーン)とは。時代背景も現実を無視>>続きを読む

mid90s ミッドナインティーズ(2018年製作の映画)

3.9

最初は肯定的な印象を抱くことができなかった。逆らえない兄との確執から不良グループに身を投じ、ストリートの「ワル」を気取る弟の成長物語と捉えるのが妥当かなと思ったのだが、そう捉えるならそれはそれで「ヌル>>続きを読む

ダウン・バイ・ロー(1986年製作の映画)

3.8

相対的に点が低くなってしまうのだが、むろん駄作や愚作と切って捨てるつもりはない。ただ『ストレンジャー・ザン・パラダイス』の路線を踏襲し、少しヴァージョンアップさせたかのような堅実さの「想定内」で収まっ>>続きを読む

パブリック 図書館の奇跡(2018年製作の映画)

4.0

最初は中途半端な印象を受けた。例えばケン・ローチの映画よろしく社会派のアプローチでホームレスへの冷遇を指弾する映画として読もうとすると、この映画はどうしたって弱い。それとはまた別の角度から、つまりエン>>続きを読む

甘い生活(1959年製作の映画)

3.9

「諸行無常」を感じた。どんな楽しいパーティも、どんな華やかな人生も、いずれ終わる。むろん終わるから全てが無意味だなんて子どもじみた悲観論を語りたくはないものだが、この映画を観ているとその「無意味」かも>>続きを読む

マイ・ベスト・フレンド(2015年製作の映画)

4.1

よく笑う映画だな、と思った。偏見丸出しで記すなら、アメリカ式のガハハと笑う笑いではなく、イギリスの上品な(悪く言えばスノッブな)笑いがふんだんに散りばめられている、というのか……基本的には闘病生活と女>>続きを読む

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実(2020年製作の映画)

3.7

なにが彼らをしてここまで語らせ、知的に振舞わせ続けるのだろうかと考えた。それはクサい言い方になるが、「情熱」ではないかと思った。それは論理ではない(三島の言葉を使うなら「意地」かもしれない)。論理を支>>続きを読む

好きだった君へのラブレター(2018年製作の映画)

3.9

当たり前の話として、マイノリティは数が少ないが故に「少数派」で普通ではないと見做される。この映画はそんな普通ではないマイノリティの使い方が上手いなと思わされた。主人公が韓国系のアメリカ人であり黒髪を楚>>続きを読む

フォレスト・ガンプ/一期一会(1994年製作の映画)

4.5

単純な人生讃歌のようにも受け取れる……だが、私はもっと深く読んでしまいたくなる。ボロボロの靴を映したショットなどひとつひとつから立ち昇るフォレストのキャラクターは、自分を取り繕わず嘘を吐くことのできな>>続きを読む

バーシティ・ブルース作戦 裏口入学スキャンダル(2021年製作の映画)

4.1

これは腐敗どころではない。暴かれたのはまさに「教育の機会均等」が理想でしかなく、名門校と立身出世のきっかけが金で買えるという現実だ。そしていたたまれないのは、子どもたちが自分の親とリックが結託して進め>>続きを読む

スタンド・バイ・ミー(1986年製作の映画)

4.3

この映画は単純で力強いプロットを備えている。真夏の死体探し。つまり、ささやかな冒険の旅。その旅は(それなりに)波乱に満ちていて、その波乱故に面白い。そこは流石スティーブン・キングの原作の巧さだと思うし>>続きを読む

運動靴と赤い金魚(1997年製作の映画)

4.1

キアロスタミももちろん優れた映画監督だが、この映画も侮れない。子どもたちを取り巻くのどかでヒューマンタッチなホームコメディ、と思わせておいてその影に大人たちの社会の歪さ(社会的地位や収入の不平等、等な>>続きを読む

テイク・ユア・ピル: スマートドラッグの真実(2018年製作の映画)

3.9

当たり前の話になるが、飲まなくていい薬なら飲まない方がなにかと望ましい。コストを考えても副作用を考えても。だが、本人に異常がなくても社会が飲むようにけしかけているとしたら? このドキュメンタリーではそ>>続きを読む

アメリカン・ミーム(2018年製作の映画)

4.1

これが承認欲求の奴隷の末路だ! というような単純で力強いドキュメンタリーと思っていたが、蓋を開けてみると違っていた。むろん、ここに登場するインフルエンサーの行動は常軌を逸したものである。私生活を切り売>>続きを読む

FYRE: 夢に終わった史上最高のパーティー(2019年製作の映画)

4.7

こんなからくりに騙される人も居るんだ、と呆れたのだがもちろんそれは「たまたま」騙されていない私だから言えることである。もし自分が参加するプロジェクトが(それが単なるカスタマーとしてであっても)こんな夢>>続きを読む

宇宙でいちばんあかるい屋根(2020年製作の映画)

3.8

やや生煮え感があり。星ばあの気ままなキャラクターはよく出ていたので、彼女が生み出すマジックをもっと観たかった。だが、そんなないものねだりかもしれないことを考えるということはこの映画に魅了されたからなの>>続きを読む

スパイの妻(2020年製作の映画)

3.5

1940年を舞台に重厚なスケールで描かれているようで、矛盾するかもしれないが描かれていることは意外とシンプルだ。つまり、時代の中において人が正気を(優しさを、と言い換えてもいい)保つとはどういうことな>>続きを読む

ボヘミアン・ラプソディ ライブ・エイド完全版(2018年製作の映画)

4.2

ウェルメイドな映画だと思う。不躾な言い方になるが、テンポがいいので退屈はしない。だが、裏返せば深みが足りないとも言える。全てがフェイクに感じられる、というか……もちろん本物のフレディ・マーキュリーを召>>続きを読む

映画と恋とウディ・アレン(2011年製作の映画)

3.7

ウディ・アレンの映画を初めて観たのはいつだっただろう。子どもでも笑えるような単純で力強いギャグではなく、知的な素養がないと笑えないジョーク(アイロニー、かもしれない)を繰り出す人として自分とは無縁な存>>続きを読む

オリーブの林をぬけて(1994年製作の映画)

4.2

陳腐な言い回しになるのだが、真実と虚構の間の壁が溶けるような感覚を味わった。映画を撮ることに言及した映画である本作は『友だちのうちはどこ?』や『そして人生はつづく』にサラリと触れつつも、決して悪い意味>>続きを読む

そして人生はつづく(1992年製作の映画)

4.4

当たり前のことを書くと、地震は突発的に起きる災害である。地震が起きることは想定はできても、それを厳密に織り込んで生きることなど出来はしない。その不意のアクシデントである地震を体験しても、それでもなお生>>続きを読む

友だちのうちはどこ?(1987年製作の映画)

4.3

映画を撮るのはいつだって大人である。子どもがカメラを回す、なんてことは考えにくい。なのに、アッバス・キアロスタミはどうしてこんなにも子どもたちの視座に寄り添えるのだろう。珍道中を描いたこの映画でも描か>>続きを読む

桜桃の味(1997年製作の映画)

4.5

思い切り自分語りをしてしまうと、私自身自殺願望を抱えて苦しんだことがある。それ故にこの映画が放つメッセージは沁みてくるように感じられる。ストレートに自殺を止めるメッセージを全面に打ち出してわかりやすく>>続きを読む

トランスジェンダーとハリウッド: 過去、現在、そして(2020年製作の映画)

4.4

政治的イシューについてはさほど言及されず、ハリウッドやその他映画・映像業界の内側からトランスジェンダーに関する差別(噴飯物とすら言える描写や設定等など)が告発される。それはトランスジェンダーに関する誤>>続きを読む

「A」(1998年製作の映画)

3.9

麻原彰晃とは一体何者だったのか。このドキュメンタリー映画に麻原は現れない。彼がなにかをコメントすることはない。だが、登場するオウム真理教の信者たちは彼の声を代弁し、彼に忠実であろうとする。そんな彼らに>>続きを読む

ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ(2019年製作の映画)

3.9

悪く言えば散漫な映画だ。もっとストーリーを整理して骨太なヒューマン・ドラマとして語れる話ではあるだろう。だが、肯定的に評価すればその分この映画はサンフランシスコのリアルを描いているとも言える。汚染され>>続きを読む

よこがお(2019年製作の映画)

4.1

深田晃司監督はいつもながら生真面目に社会派のテーマを盛り込んで映画に独自の彩りを添える。今回のテーマは介護業務の現場と少年犯罪、そして加害者と被害者の関係性についてだろう。加害者とされてなじられる人間>>続きを読む

晩春(1949年製作の映画)

4.7

芥川龍之介『侏儒の言葉』に「人生の悲劇の第一幕は親子となったことにはじまっている」とあるが、親子関係は悲劇のみならず様々なドラマの源泉でもあるようだ。この映画でも父を慕い傍に居たいと思う一人娘と、その>>続きを読む

スペシャルズ! 政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話(2019年製作の映画)

3.9

これはまた難しい映画を観てしまったものだ。骨太のストーリーが芯を貫いていて序破急/起承転結がしっかりしている、そんなわかりやすい映画ではない。取り敢えず語れるところから語っていくと、ブリュノという支援>>続きを読む

アメリカン・ファクトリー(2019年製作の映画)

4.1

よく言えば多彩な声を盛り込み、多角的な角度から捉えられる切り口を備えたドキュメンタリーだと思う。悪く言えばその分なにを伝えたいのかわかりにくい。もう冷戦の時代は遠い昔のことで今では中国の企業がアメリカ>>続きを読む

未来を乗り換えた男(2018年製作の映画)

3.9

例えば(敢えて小説を喩えに出すが)ポール・オースターがかつて描いた、主人公/語り手の孤独が身に沁みるような不条理な小説を思い出す。もしくは安部公房やカミュ。寓話的と言えるし、それ故に多様な読み方を許す>>続きを読む

希望の灯り(2018年製作の映画)

4.1

静かな映画だ。そして無骨でもある。そしてその無骨さは、丁寧な職人間で支えられていると見た。今でいうマックジョブというか、昇給も昇進も「希望」として持てない職につく男が人妻と恋をして、ささやかな幸せを手>>続きを読む

ヘイト・ユー・ギブ(2018年製作の映画)

4.2

敢えてイヤミな言い方をすると、「ウェルメイド」な作品だと思った。黒人の主人公スターを多様性(!)が保証された学校に通わせ白人の友だちやボーイフレンドを設定することで、彼女が黒人としてのアイデンティティ>>続きを読む

真実(2019年製作の映画)

4.0

この世にあるのは事実である。それを私たちは「真実」として認識する。だが、私たちはしばしば事実を偽る。意図的に嘘をつくこともあるし、記憶違いや錯覚をしてしまうこともある。だとすれば、なにかが「真実」であ>>続きを読む

秋刀魚の味(1962年製作の映画)

3.8

むろん、この映画が公開され受け容れられた時代と今は決定的に価値観が異なる。だがそれを割り引いても、この映画で体現されているのは実は一種の「男たち」だけのファンタジーではないかという疑念が拭い去れなかっ>>続きを読む