アラシサン弐さんの映画レビュー・感想・評価 - 18ページ目

わたしは、ダニエル・ブレイク(2016年製作の映画)

4.0

隣人と手を取り合うことは人間として実は当たり前のことなのに、効率化されて淡々と歯車を回させる現代社会では、そうした生き方は黙殺されて虐げられることへのやるせなさを感じる。

人を生かす為の制度がデジタ
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ザ・ライダー(2017年製作の映画)

3.8

競争馬は怪我したら安楽死させられるけど人間はそうはいかない。

大怪我を負ったってそれを抱えて生きていかなきゃいけないし、その後に進む道も自分で選択していくしかない。
ブレディやレインとアポロの対比が
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燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)

4.2

画面から二人に不必要なものが削ぎ落とされて清潔感に満ちてる。ずっと綺麗。

同性愛を描く映画には当人達が色々言ってくる社会と対峙するような作品が多い中で、そもそも社会から隔絶された場所での恋愛が描かれ
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英雄の証明(2021年製作の映画)

4.0

現代社会における「英雄」の定義って何だろうかと考えてしまうな。

ネットでバズった良い話で有名人になった人が何かしらの不祥事で炎上して吊るし上げられる。
こういうある種「使い捨ての英雄」にされる人が現
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TITANE/チタン(2021年製作の映画)

4.7

化け物。

冒頭10分くらいで既に喰らいつくのに必死になるのに、その後もあまりに突拍子もない出来事が次々に起こる上に、一度見たら瞼から離れないような強烈な映像が連打されるから、飽きないどころか脳ミソの
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ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)

3.8

デルトロ監督と見世物小屋の相性が良すぎる。
電気出す女性とかホルマリン漬け胎児とか考えてるのめちゃくちゃ楽しんでやってそうだ。

堕ちていく系のノワールとしては割と王道で物珍しさは薄いのだけど、相変わ
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その手に触れるまで(2019年製作の映画)

3.5

イスラム教にとっての「手を触れること」は他文化とは特異な意味を持つからこその邦題。

純粋さ故に「これが絶対に正解」って一つの答えに傾倒した少年が、どうやってそこから逸脱するかの回答を一つ提示するよう
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ある過去の行方(2013年製作の映画)

3.8

この監督がただの離婚劇で終わらせてくれる訳がなかった。

監督の他作品と比べると不穏さで煽ってくるサスペンス要素は薄めに感じたけど、相変わらず人間関係の厄介な部分をこれでもかと投入してきて、何が正義な
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トム・アット・ザ・ファーム(2013年製作の映画)

3.8

冒頭の青ペンで書かれてる文章が、トムの気持ちにもフランシスの気持ちにも解釈できるようになってるのね。

ドン引きするような暴力が巻き起こった後に、抱擁的な男性らしさで優しくする典型的なDV現場の胸糞悪
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キカ(1993年製作の映画)

3.5

こんな馬鹿みたいな話で変態的な世界観なのに中盤くらいから引き込まれてる自分がいて悔しい。

何かぎりぎりアヴァンギャルドって言い包められそうな映像を、力技で「お洒落な悲喜劇」に危うくさせられそうになる
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ダウン・バイ・ロー(1986年製作の映画)

4.0

物騒な設定なのに愛くるしい人間たちがワチャワチャしてて楽しそう。
やっぱり会話劇にロベルト・ベニーニが投入されるだけで小気味良さが段違い。

全2作と比べると一応ストーリーも道筋立っててゆるいながらも
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ベルファスト(2021年製作の映画)

4.3

不穏と平穏が同居してるタイプの好きなやつ。

これある意味コロナ禍の状況と通ずるものがあるというか、滅茶苦茶ヤバい事態が身近で起きて自分たちも巻き込まれてしまう可能性が出てきても、それでも対策しながら
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幸福なラザロ(2018年製作の映画)

3.7

社会派なのにファンタジー要素ありで不思議な雰囲気。

どれだけ純朴で怒りも欲もない聖人みたいな人間だとしても、欲を使うことに無知では現代社会、ましてや不況真っ只中のイタリア経済の中では、生きていくこと
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ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)

4.2

暴力を芽生えさせるまでを描いているのに絶対に暴力を肯定しないという気概を感じる。

挫折や喪失が凶行に向かわせる構図はジョーカーやタクシードライバーと同じだけど、この映画は主人公の心理状態が不明瞭な上
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女は二度決断する(2017年製作の映画)

4.0

なんとなく「悪い奴を懲らしめる」こと=「正義」だと信じ切ってる価値基準にメスを入れられる。
これは17年の作品だけど、正義を不用意に振り回す人が台頭する今でこそ刺さると思う。

1~3章で法廷モノ→ス
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トーク・トゥ・ハー(2002年製作の映画)

3.8

難しいなあ。
「愛情の深さ」はあるところを超えると倫理の壁がぶち破られると思うのだけど、
同じ立場の二人があまりにも対象的な結末を迎える要因は、モラルや変態性ではなくて単純に愛情の深さだったのかな。
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セールスマン(2016年製作の映画)

4.0

「別離」が好きだったので。

この監督の映画で迷いなく正しさの判別をつけるのは難しすぎる。
ほんっとうに人間の嫌な感情への着眼点が鋭い。

「別離」でもそうだったように、観てる側が絶対に正義だと信じ切
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マイ・マザー(2009年製作の映画)

3.9

いがみ合いや憎しみ合いでしか対話が出来なくても、根底に愛情があるから結局は断ち切ることが出来ない親子関係のジレンマを19歳で映画に出来る監督がなによりも大人びてるよ‥。

主人公と対して変わらない年齢
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パーマネント・バケーション(1980年製作の映画)

3.8

内容があるようでないようでやっぱりあるのか‥?笑

ゆるいようで意外と真意を突いてくる。
「漂流してれば孤独を感じなくて済む」って、自己を確立しきれずにフラフラしてる若者達の核心を吐いたような言葉だと
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RAW〜少女のめざめ〜(2016年製作の映画)

4.5

ちょっと涙出そうになるくらい感動した。

人肉への目覚めが少女から大人になることへのメタファーになってるのが秀逸すぎる。

大学生あるあるだと思うけど、大人だか子供だかの境界が曖昧で、周囲に流されてパ
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ピアノ・レッスン(1993年製作の映画)

3.7

浜辺にドレスとピアノ、の綺麗さだけに留まらない、人間の塞ぎ込んでいる内にある綺麗さが開放されていく様子を見せられてるよう。

この監督、説明が限定的で登場人物の心理を初見で全て理解しようとすると集中力
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ブルーベルベット(1986年製作の映画)

3.8

好奇心で入り込んでいった未知の世界で酷い目に合う、って展開だけなら汎用なのにデヴィットリンチはその「未知」が不穏極まりない。

草原で耳拾うって導入から変態性全開だけど、それを容易に乗り越えてくるデニ
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羊たちの沈黙(1990年製作の映画)

4.2

圧迫感が他のサスペンスとは段違い。
楽しい場面はほとんど無くて、あらゆる要因で生理的嫌悪感を与えられる。
ミスリードも鮮やかで、前情報無しで鑑賞したのだけれど、何度か完全に「してやられた」。

死体・
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猫は逃げた(2021年製作の映画)

4.0

夫婦の行く末を見つめたり繋ぎ止めたりする妖精のようなカンタ。
カンタの存在が男女関係のメタファーにもなってるんだね。

繋がりそうになったり離れそうになったり夫婦のターニングポイントにはカンタの存在が
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まともじゃないのは君も一緒(2020年製作の映画)

3.9

カジュアルなラブコメだけど要所でグサグサ刺してきてハッとさせられる。

「普通」に挑戦をしていく中で、逆に世の中の「普通」が内包してる間違いや倫理観に牙を剥かれて、それでも「普通」の持つ良い面と悪い面
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南瓜とマヨネーズ(2017年製作の映画)

3.7

原作未読。
ダメな奴らばかりで共感を呼ばせない突き放したような話だけど、痛々しさと同時に細やかな優しさも感じてしまうんだよな。

絶対やめたほうがいいのにクズ男ばかりに惹かれてしまう女性を見たときの「
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スパイの妻(2020年製作の映画)

4.0

暴走する軍事国家の混沌として正気を失った世界の中で疑惑や嫉妬が非情に作用していて、反戦作品としてだけでなくサスペンスとしても楽しめた。

同時に、どの要素も無駄なものが無くて、結末も表面上ではなくそこ
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真実(2019年製作の映画)

3.7

是枝監督が描く「微妙な関係の家族」は、舞台が日本からフランスに変わっても卓越した雰囲気があって根底にあるものに変わりはないなと思う。

ただし、監督特有の社会性のあるメッセージとか家族関係のエグみとか
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林檎とポラロイド(2020年製作の映画)

4.0

パンデミックで記憶喪失者が続出してる世界なのに、どことなくユルくてユーモアに溢れて、悲壮感はない。

というかこのちょいイカツめの中年男性が子供用自転車で転んだり、飛び込みプールでビビりまくったり、り
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シャッター アイランド(2009年製作の映画)

3.8

謎が溶ける前はミステリー。
溶けた後は真実を知った主人公がどうなるかのスリラー。

変態映画を観た後とかに丁度いい、適度な脳味噌の稼働率で楽しめた。

見返すと序盤からかなりの伏線が散りばめられてたん
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クラッシュ(1996年製作の映画)

3.7

ジュリア・デュクルノー監督が死ぬほど影響受けた監督ということで気になってた変態映画。

確実に稀有な性癖の文字通りぶつけ合いで観てる方が感情移入が出来る隙間は皆無なのだけれど、珍しい趣味の同志が集まる
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消えない罪(2021年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

贖罪に他人の悪意がひたすらぶつけられて、いつ悲劇が爆発するか分からない緊張感のあるサスペンスとして楽しめた。
クライマックスへの無理矢理感を許せるかどうかで好みが分かれるかと。

個人的に、「罪を犯し
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17歳のカルテ(1999年製作の映画)

4.0

「カッコーの巣の上で」よろしく、世間的な「普通」から逸脱した人達への世の中の辛辣さとの戦いではあるけど、こちらは患者達が自分自身とも向き合っていく要素が強かった。

個人的には、主人公が自分のマイノリ
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スカーフェイス(1983年製作の映画)

4.0

のし上がったチンピラが調子こいて自滅していく170分、だけなのに面白い。

序盤のモーテルでの一件で「これは凄まじい血生臭い描写が来るぞ‥」と身構えていたら、意外とシュールな場面が多かった。

タラン
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マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)(2017年製作の映画)

4.0

この監督が描く家族はどこかぶっ飛んでいて関係も複雑なのに、会話も行動も何となくゆるくて馬鹿馬鹿しい雰囲気を纏っているから、重すぎず軽すぎずに観れるから好きだ。

この手の親族たちが一堂に会してワチャワ
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ジョン・F・ドノヴァンの死と生(2018年製作の映画)

3.6

ジェイコブ・トレンブレイ君がやばすぎる。
理不尽な状況への悲痛を叫ばせたら抜群だね。

ミステリー映画というよりも人生哲学の側面が強かった。
老人との厨房での会話が深い。

ジョンとルパートはどことな
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