アラシサン弐さんの映画レビュー・感想・評価 - 21ページ目

浮草(1959年製作の映画)

3.8

冒頭の風景だけのカットで「あぁ、小津映画が始まったな‥」と身構えしてしまう。

自分が今まで観てきた小津映画の中だとワイルドな雰囲気で、男の秘密を嗅ぎ付けた女の嫉妬とかも出てきてかなり感情的だった。
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ボクたちはみんな大人になれなかった(2021年製作の映画)

3.9

原作未読で鑑賞。
かなり刺さる人を選ぶ内容だと思ったけど個人的には支持派。

「大人になれなかった」って言葉が言えることは、もう大人になっていることなんだな。
で、大人=普通であることも暗示してる。
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浅草キッド(2021年製作の映画)

3.8

若い頃のビートたけしを知らないのにたけしだと分かる憑依じみた柳楽優弥が優勝。

たけしは師匠の「普段ボケられねえ奴が舞台でボケれるか」って教えを今でも守ってるんだな。
たけしの突拍子も無いユーモアは師
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朝が来る(2020年製作の映画)

4.7

原作未読で鑑賞。
凄い疲れたけど観てよかった。

色んな種類の母親を提示された。
産んだ人、産めなかった人、どちらでもないけど育てた人。
そして、子供に愛情をこれでもかと注ぐ人もいれば、子供に自分のエ
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ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)

4.2

重厚。
色んな映画で「血の繋がりが無くても家族という繋がりは成立するか?」というテーマが証明されてきたと思う。
じゃあその繋がりが「ヤクザ」という犯罪組織だったら?

自分にとって唯一といっていい繋が
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悪なき殺人(2019年製作の映画)

4.2

こういう伏線が新しい伏線をつくっていくタイプの作品は大好き。
伏線回収する為の情報開示が怒涛で、混乱とカタルシスが同時にくる感じ。

「人は偶然に勝てない」ってまさにそのままだった。
映画の都合主義を
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復讐するは我にあり(1979年製作の映画)

4.0

倫理観がよく分かんなくなった。
笑っちゃうくらい不快でセンセーショナルで、本当に殺したい奴を探す人生、なんて誰も共感できない。はずなのに、どこか叙情的で刺さる。

主人公以外の人間も善良な奴が全然出て
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泥の河(1981年製作の映画)

4.5

キツめの現実の中で、子供たちの健気さと純粋さと残酷さみたいなものが輝いてる。
飯屋のテレビを窓から覗いたり、米櫃に手を入れて暖を取ったり、船での用の足し方を楽しそうに話したり。
貧乏の中での楽しさも哀
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仁義なき戦い(1973年製作の映画)

3.8

初鑑賞。

画面から終始溢れ出る顔面凶器たちの怒号と眼光の応酬。
どんなアクション映画よりもカロリーが高くて血生臭かったけど、特に人が殺られたときのシーンは、暴力的な感情とは別の、なにか形容しがたい哀
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乱れる(1964年製作の映画)

4.0

成瀬巳喜男の作品初鑑賞。
なるほど確かに「乱れる」だった。心が。

愛情の矛先は真っ直ぐなのに、阻む盾が強固過ぎて直撃出来ないような恋愛だった。

本心を知ってしまってからが良かった。
愛してはいけな
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無法松の一生(1958年製作の映画)

4.2

定期的に三船敏郎を摂取したくなり鑑賞。

ど直球に泣かせにかかってくるタイプの映画。
母子に出会ったが故に、「幸福」と「孤独」を同時に知ってしまったのが切ない。

車輪は前に進み続けているけど松五郎は
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時の面影(2021年製作の映画)

3.5

地面を掘るブラウンさんと星を眺めるロバート、過去の存在を現在に掘り起こす人々と存在そのものを壊してしまう戦争。
「発掘」という馴染みがないモチーフではあるけど、そこに関わる人達の信念や心情が、病気の未
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アンカット・ダイヤモンド(2019年製作の映画)

4.5

クソ野郎すぎて笑えるっていう新手のユーモア。F××Kって何回言ってたんだろう。笑

当初この映画、日々をギリギリで生きてる人の苦しみとか、ギャンブル中毒の貧困層の悲哀みたいなテイストでくるのかと勝手に
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ラストナイト・イン・ソーホー(2021年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

個人的にサイコ物とキラキラポップな物が組み合わさると物凄いシナジーがあると思っているんだけど、この映画はまさにそうで、映像を退廃的にし過ぎずに、でもゾワゾワ感がずっと残してくる映画だった。

現実と夢
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バスターのバラード(2018年製作の映画)

3.8

1話目からめちゃくちゃ不謹慎でアホな展開で、こういうブラックユーモアな雰囲気があと5話観れるのか、と何となく予想していると、かなりディープな話もくるから流石コーエン兄弟は油断ならない。

各話の人を喰
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ROMA/ローマ(2018年製作の映画)

3.8

モノクロに仕上がったメキシコの風景と生活音の美しさに、暴走する時代の不穏さがずっと付き纏ってくる。
メキシコの時代背景が頭に入っていればもっと入り込めたかな?と。

この映画は70年代が舞台のお話だけ
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パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)

4.2

ハラスメント義兄、愛を知る。

原作が60年代の小説らしいのだけど、こんな現代の価値観にもぶっ刺さりそうな話が半世紀以上も前に存在してたことに驚き。

愛情の形とそれに関する事柄のデパートみたいな作品
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シカゴ7裁判(2020年製作の映画)

4.2

個人的に60年代後半のヒッピーカルチャーが好きで、当時のムーブメントやベトナム戦争の背景を何となく心得てはいた気でいたけど、裁判がここまで無茶苦茶だったとは。

アビーの「窓の外だけで60年代が繰り広
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グッド・タイム(2017年製作の映画)

4.2

切羽詰まってる人間って何やっても上手くいかないモードに入るときありますよね‥。

目の前の問題を片付けたいのに、このモードに入っちゃってるから次々に問題を作り出してしまう。
この主人公も、どんどん目的
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マリッジ・ストーリー(2019年製作の映画)

3.8

これ離婚劇ではあるんだけど、裁判の結果とか離婚の理由とかよりも、夫婦から他人になる男女の心情を見せてくる感じが好きだった。

お互いに穏便に話し合って済ませたいのに、周囲の弁護士達がデリカシー皆無で進
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ファイト・クラブ(1999年製作の映画)

4.0

映画の世界で下品とスタイリッシュが混ざると非常にアイコニックな映像になる現象に名前をつけたい。
画面に映るのは終始、男のむさ苦しい集団、痛々しい暴力、サイコな台詞、それでも目が離せない。何だこれ。
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彼女がその名を知らない鳥たち(2017年製作の映画)

4.0

クソ女、愛を知る

原作未読で鑑賞。
ポスターの「あなたはこれを愛と呼べるか。」という文句。呼べるでしょう。
ただ、博愛でも狂愛でもない、分類不能の愛情ではあった。

いや〜な詰め方をしてくるというか
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佐々木、イン、マイマイン(2020年製作の映画)

4.5

一言で表すなら「佐々木ィィィッ」という映画で、後ろに(笑)がつき、(泣)もつき、(汗)もつく。

「青春」って言葉は、冷静に見ると残念で汚くて馬鹿馬鹿しいことが、思い出補正やらで輝いて美しく見える瞬間
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洲崎パラダイス 赤信号(1956年製作の映画)

4.5

こんな爽快な哀愁ある?

まず、売春防止法が施行される直前の遊廓の入り口にある屋台が舞台、っていうプロットだけでもう期待が膨らむ。

男女の価値観の違いが描かれてるけど、あんまり悲観的なすれ違いに感じ
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家族ゲーム(1983年製作の映画)

3.8

オフビートだなぁ‥。
ずっとシュールなんだけれどその中で、どこの一般家庭もが抱えていそうな思惑の錯綜を皮肉っているんだろうな。
子供の意見を聞かずに進路を勝手に決めちゃうお父さん、その方針に抗えないお
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ミツバチのささやき(1973年製作の映画)

3.5

のどかな風景で過ごす純粋な少女から、どうしても生と死の気配が漂ってきてしまう。

フランケンシュタイン、踏まれる毒キノコ、首を絞められる猫、それに引っ掻かれる少女。
個人的には、かなり生と死へのメタフ
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山椒大夫(1954年製作の映画)

4.2

残酷な世の中に対しての抵抗としてのヒューマニズム。
他者への慈悲を忘れずに生きて、成功者となって皆に辛酸を舐めさせる悪者をこらしめても、全てがハッピーに着地する訳ではない人生の残酷さ。

溝口健二監督
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切腹(1962年製作の映画)

4.7

凝り固まった価値観は美学ではなくて虚栄なんだな、と感じさせられる。
武士たるものとか武士らしくとか、思想と価値観に依存して、他者に上っ面を飾ってしまう人間の残酷さが痛烈。

現代にも、偏見に囚われて虚
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コーヒー&シガレッツ(2003年製作の映画)

4.2

正直、観る前は「11話は多くない?」とか思ってたのに、終わってみればもっともっと観ていたい気持ちの自分がいる。

コーヒーブレイクだけで11シチュエーション。
休憩中の他愛もない会話が、その日で一番面
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ソナチネ(1993年製作の映画)

4.2

どんなに凄い役者を揃えて高額なセットを用意したとしても、この「死の匂い」を感じることは出来ないと思う。

落とし穴も花火の撃ち合いも拳銃遊びも、たけしがバラエティで馬鹿やってることの延長で変わらないの
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アンテベラム(2020年製作の映画)

3.8

アメリカにとっての「黒歴史」をモチーフとしたトリッキーなドッキリ、という感じ。

冒頭の「過去は死なない、過ぎ去りさえしない」という言葉がそのままテーマの根幹ではあるけど、個人的には黒歴史をめちゃくち
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インセプション(2010年製作の映画)

3.8

難解なのに娯楽映画。
設定がブッ飛んでて集中してても置いてけぼりにされるけれど、アクション含め問答無用で楽しい。
死んだらやばいっていうのもスリル。なんか仮面ライダー龍騎のミラーワールド思い出した。
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ファーゴ(1996年製作の映画)

3.9

何やっても上手く運ばれなくて悪い方向に進んでしまう男を見せられた後に、何もかも上手くいって充実してる女性の「人生は良いもの」っていう台詞は、もはやユーモア。

エクス・マキナ(2015年製作の映画)

4.0

思ってたより何倍も作家性強めだった。
なんか「A24節」みたいなの分かってきたな‥。

終盤にかけてほぼセリフ無しで進むシーンが本当に綺麗。露出描写わりと強めだけど、アンドロイドっていう設定も相まって
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9人の翻訳家 囚われたベストセラー(2019年製作の映画)

3.9

「この中に、犯人がいる」系のミステリーくらいの情報だけで鑑賞したけど、シンプルに面白くて見入った。
観客側に推理させる作りの作品で、時系列での揺さぶり方とか「メメント」に近いと思った。

優先するべき
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ゲット・アウト(2017年製作の映画)

4.5

人種差別に対するド級のアイロニーだと思った。批判とか抵抗ではなくて、皮肉。

一応ホラーなんだけど、幽霊もクリーチャーも登場させず「居心地の悪さ」でこの圧迫感と薄気味悪さを感じさせるのには舌を巻く。
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