しゅんまつもとさんの映画レビュー・感想・評価 - 9ページ目

イット・カムズ・アット・ナイト(2017年製作の映画)

3.8

自粛要請、外出禁止、感染、分断、そんなワードが日常的になってしまったわたしたちにとって一番「恐怖」を与えられるどぎつい一本だった。
果たして人は混乱の時代に誰かを疑わずに生きていけるだろうか。何より恐
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天国はまだ遠い(2015年製作の映画)

5.0

カメラを挟んで向き合って会話をする。それは映画を撮る人と見る人にも当てはまる。騙されているかもしれない。そうじゃないかもしれない。でもそれでいい、そこにしか生まれない何かがある。それを形として、音とし>>続きを読む

スケアリーストーリーズ 怖い本(2019年製作の映画)

3.9

とにかくいろんなシチュエーションで、いろんな趣向&手法で怖がらせてくれるので全く飽きないしワクワクする。ひとつとして同じ襲われ方をしない感じ、当たり前だけど良いよね。青白い女のビジュアルは最高に怖いん>>続きを読む

レ・ミゼラブル(2019年製作の映画)

4.3

中盤に2度繰り返される追いかけっこの緊迫感。ライオンが出てきただけで猛烈にかき立てられる嫌な予感。挿し込まれるドローンによる俯瞰ショットの持つ意味。

特筆すべきはすべて終わったかのように思えた夕方の
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初恋(2020年製作の映画)

3.3

日本のアクションも捨てたもんじゃない。とかそんな寒いこと言うつもりはないっす。
ホームセンターでの三つ巴の合戦、逃走する車から撒かれる覚醒剤という今までまったく見たことのない良いシーンが撮れるのに、前
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架空OL日記(2020年製作の映画)

4.9

映画とはなんなのか、と終わらない問いを繰り返す。それは秀逸な脚本によるものなのか、巧みな撮影・編集によるものなのか、役者による演技なのか。きっとその全部が不可分な関係で映画は出来上がって、見る人それぞ>>続きを読む

1917 命をかけた伝令(2019年製作の映画)

3.6

2人の正面にカメラが回って背後に光る照明弾を捕らえる瞬間、廃屋の2階で目覚めた主人公が窓から眺める闇の中の戦火、カメラがその窓からゆっくり降りていくとその先を歩く主人公の背中、川に流される主人公の顔に>>続きを読む

ミッドサマー(2019年製作の映画)

4.5

冒頭と終盤で対になる「火」と「雪」の象徴、部屋に飾られる絵、鏡を使った断絶。
序盤に示されるあらゆるものから、すでに決まった悲劇的な結末に繋がることが予想される。『ヘレディタリー』には心底やられたもの
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37セカンズ(2019年製作の映画)

3.4

脚本やこの映画の意義についてはもちろん素晴らしいことだと思う。役者陣も軒並みいい。渡辺真起子さん、芋生悠さん、石橋静河さんの配役が見事。ただ、だから映画が面白いかと言われると自分はそうは思えなかった。>>続きを読む

ハスラーズ(2019年製作の映画)

3.7

振り返ること、というのは人間の最も誇れるべきところであると思っている。自分のこれまでを振り返り、反省したり後悔したり、もう手の届かないものに想いを馳せたりすることほど人間くさいことはない。文字通りそん>>続きを読む

犬鳴村(2020年製作の映画)

2.9

これを見るなら、上映終わりそうな「シライサン」を観に行くのを個人的にはお勧めします。というかまじめに、怖いシーンってあった???
新鮮だなあと思った恐怖描写は鉄塔からの連続飛び降りのところくらい。びび
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mellow(2020年製作の映画)

3.7

この映画をおれが好きと言わずにどうするんだ、こんなの100点満点!と内心はそういう気持ちなのだけど、とても大事な部分の映画的な魅力がすっぽり抜け落ちていて、そこをどうしても見逃せずスコアは今泉力哉監督>>続きを読む

シライサン(2020年製作の映画)

3.9

個人的にここ数年の日本のホラーでは断トツで良かった。やっと新鮮なホラー映画が見れた嬉しさが溢れる。

「承認欲求」と「死」をシライサンに込めて、かつ「目を逸らさないこと」が唯一の対処法という映画の鑑賞
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ラストレター(2020年製作の映画)

3.4

広瀬すず、森七菜、松たか子が同じスクリーンに収まるという異常事態。そのなかでも、まなざしや所作のひとつで何かを訴える森七菜、まじで凄すぎる。
誤配に注ぐ誤配が繋ぐ物語と人。予告をあれだけ見ていたのに、
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his(2020年製作の映画)

3.6

瞬間的におおっ!となるところはあったけど全体としてはかなり冗長に感じてしまった。卵を使った演出はちょっとくどすぎるし、絶対もっとスリムに描けるはず。120分がかなり長く感じた、ということは自分にとって>>続きを読む

ジョジョ・ラビット(2019年製作の映画)

4.8

序盤、街を駆けるジョジョをを捉えるカメラは横方向に動く。とても平面的。

そんなジョジョに靴紐を結ぶ、イスに上ってダンスを踊るという動作でもって上下に空間の広がりを与えるのが母親(ときに父親)のロージ
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リチャード・ジュエル(2019年製作の映画)

3.8

流石のイーストウッド、良質なヒューマンドラマに思わせながら実のところかなり狡猾で意地の悪い映画だなあと思わされた。しかしそんな描き方をしなければならない2020年の現代だということも事実。

おそらく
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音楽(2019年製作の映画)

4.0

大学のサークル内ライブで先輩から「音作りがだめだ」「聞いてる人のことを考えろ」と言われたとき、素直に「はい」と言えなかった。自分たちが良い音だと思ってつくった音なのに、自分たちが良いと思ってつくった音>>続きを読む

フォードvsフェラーリ(2019年製作の映画)

4.2

終盤、アドレナリンが出切って死んでしまうんじゃないかってくらい興奮した。最高の映画体験。"乗り物が動く"それだけで物語にしてしまうジェームズマンゴールド、流石としか言いようがない。

vsの本当の意味
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ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋(2019年製作の映画)

4.8

エンドロールの流れる劇場で「最高すぎる…」思わず口にしてしまうくらいには打ちのめされた。
帰り道に余韻に浸りながら、ちらちらここで感想を見ていたのだけどあまりに軽視されすぎじゃないですか???軽いタッ
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パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)

4.7

2020年1本目。味気のない言い方をすれば、映画と呼ばれる装置の力を改めて思い知らされた。
希望や絶望は決して形として目にすることは出来ないけれど、映画にはそれが出来る。人は決して誰かの視点で生きるこ
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ハッピー・デス・デイ(2017年製作の映画)

3.8

めちゃくちゃ面白い。なぜか主人公が死ねば死ぬほど生き生きとしていくのが新鮮。鐘楼を登るとこなんて興奮しっぱなしだった。からのサスペリア!!!なオマージュ!
なんでこういうスプラッタホラーが日本では撮れ
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失くした体(2019年製作の映画)

3.6

めっちゃ変な映画。変な映画なのに感動してしまっている自分もいる。言葉通りの物語の飛躍でもって身体は解放され、手は喪失する。掴んだと思ったものはすべからく落ちていく。帰るべき場所を失った手は果たしてこれ>>続きを読む

スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け(2019年製作の映画)

3.9

(2回目を観たのでコメント欄に追記しました)

なんかもうありがとう…!としか言いようがない。これは彼の物語だったんだと気付かされた瞬間からグッと好きになってしまった。
と、瞬間的には全部褒めたくなっ
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家族を想うとき(2019年製作の映画)

4.4

高いところから世界を見下ろすとき人はここではないどこかを想うのかもしれない。セブがペイントをするシーン、リッキーとライザが配達の途中で昼食を食べるシーン。
シーンの繋ぎのフェードアウトも無造作なようで
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映画 ひつじのショーン UFOフィーバー!(2019年製作の映画)

4.0

フリスビー、ピザ、ドーナツ、ボール、UFOと冒頭から執拗に反復される"円"のイメージ。それに倣うように物語もまた円を描くように閉じて、変化し、繰り返されていく。
「ぼくだけのひみつのともだち」イズムに
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さよならくちびる(2019年製作の映画)

3.3

理由なんて後から追いかけてくるもんだ。ハルがレオを誘った理由はその後のふたりがカレーを食べて涙するシーンを見れば想像ができる。なんであのときレオが涙したのかってこともそう。そのあとのふたりを見れば、そ>>続きを読む

アラジン(2019年製作の映画)

3.4

奪う/与えるの反復で物語が進んでいく序盤からランプを手に入れるまではめちゃくちゃ手際良くて惹かれた。しかし、踊り歌い始めると物語が停止してしまうのはちょっときつい。終盤のジャスミンのSpeachles>>続きを読む

アイリッシュマン(2019年製作の映画)

4.0

これ、自分はNetflixでの鑑賞ではきっと耐えられなっただろうなあ。3時間30分という上映時間もそうだし全体の反復構造に耐えられたかというと劇場じゃなきゃ無理だったような気も。

たしかに長いのだけ
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i-新聞記者ドキュメント-(2019年製作の映画)

3.7

ラストに入る森監督の語りが「私は〜」であることがこの映画のすべてだと思うのだけど、あの語りが"語りかけ"になっていやしないかと思う。それを意図している部分もあるかもしれない。デモや選挙演説の合間に挿し>>続きを読む

マリッジ・ストーリー(2019年製作の映画)

4.8

自分は誰かが恋に落ちる瞬間や二人の間に愛が生まれる瞬間を捉えた映画に弱い(とても好きという意)。その理由をこの映画に教えてもらった気がした。生まれた愛はいつか消えてしまったり、もしくは形を変えてしまう>>続きを読む

ドクター・スリープ(2019年製作の映画)

4.5

天晴れ。全然シャイニングじゃないのに(正しくはキューブリックのシャイニング)、シャイニングの続編以外の何物でもない一本。

縦横無尽に回転しまくる画面よろしく、とにかく前作に縛られないオープンワールド
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ひとよ(2019年製作の映画)

3.6

確かに何回も擦られたようなありがちな話ではある。それでも2時間近く見られるのは本当に役者陣の好演のみによるものだろうか。これもっと別の人に撮らせたらもう目も当てられないようなものになってた気がするんで>>続きを読む

わたしは光をにぎっている(2019年製作の映画)

3.3

きっとこの作り手は映像を信じているんだろうなと思った。土地を愛しているんだということも伝わってきた。実際心を奪われるショットが沢山あった。
でもそのショットを束ねて、貫くのが物語(つまりは脚本と演出)
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殺さない彼と死なない彼女(2019年製作の映画)

3.9

こんな世界で生きてれば死にたい理由なんていくらでもある。でも死ねない理由だって簡単だ。好きなものや好きな人がいればそれだけでいい。今日あった絶望の話は未来の話に変わるだろう。それは誰かと結ばれるという>>続きを読む

最初の晩餐(2019年製作の映画)

3.6

「目玉焼き」の卵にはじまり、赤味噌/白味噌の味噌汁、ツナの種を包む餃子、ラーメンの紅生姜、すき焼きのラー油、フード演出は見事である。脈々と連なる日本映画としての「家族」の描き方も多少古臭くはあるが良い>>続きを読む