これはまぎれもなく戦後だ。大義名分を失った戦後における男たちの戸惑い、挫折、虚無。堕落という名の、戦後派作家の述懐にも似た、戦後の男の罪禍を反語的に描く物語を小津監督は採用したのだ。戦後5年経っても戦>>続きを読む
なんと濃密な物語!訳のわからなさが後味として残る。明らかに正統派ヒーローにはなり得ないロバート・ミッチャムを主役にしたのは正解だし、彼の本気なんだかやる気あるのかわからない寝惚けまなこが意図された演出>>続きを読む
速い巧い。ジョン・ウェイン(若いな〜)が形勢有利な展開は、判官贔屓というよりこの国のポピュリズムの根強さを感じる。ジョン・ウェインとウォルター・ピジョンの形勢がコインの表と裏のように何度もひっくり返る>>続きを読む
予想外にミュージカル映画だった。全編通して動的な面白さに満ちている。超絶可憐なマリアンヌ・ドニクールが西陽に照らされたワンピースに長い脚の影を作りながら踊るショットで涙が出た。アンナ・カリーナ(!)が>>続きを読む
私の中では『セリーヌとジュリーは舟でゆく』『北の橋』が昔からワンツーフィニッシュで(リヴェット全作品を観てないが)『彼女たちの舞台』はそれらに比べるとDVD再生回数は少ないのだけど上映機会があるたびに>>続きを読む
観終わって、何というか、しんとした気持ち、沈思と言ったらいいのか、午前零時をまわった道を歩いてたらこの歌を思い出した。
パラソルをかざしてゆくよ有史より死者は生者の数を凌ぐに 佐伯裕子>>続きを読む
ジャック・タチのパントマイムと多重露光の至芸。犬も幽霊芸。同じ白い布を被っていても、選ばれる者と選ばれない者。異類婚姻譚は成立しない。タチ演ずる幽霊はカメオのブローチを摘み上げる。瞬くブローチを胸に、>>続きを読む
オープニングクレジットに連動する騎兵隊馬列シルエットの美しさ!
北軍大佐ジョン・ウェインと軍医ウィリアム・ホールデンの対照性と南軍支持で捕虜となったコンスタンス・タワーズらだけでなく、ロートル将校、酔>>続きを読む
面白ーい!命を賭けるのがスイカの収穫というブロンソンはたしかにアルドリッチ『北国の帝王』を思い出す。列車のタダ乗りとタダ乗り阻止に命を賭けるリー・マーヴィンとアーネスト・ボーグナインがタイマン勝負なの>>続きを読む
四半世紀ぶりに35㎜フィルムで観た。と言っても覚えてたのはチュルパン・ハマートヴァ演ずるマムラカットがはち切れんばかりに可愛い!ということくらい。
今観るとまんまクストリッツァだなー。全てのものがあら>>続きを読む
ダグラス・サークの演出はどうしてこうもすごいのか。大映ドラマの如く次々と用意された試練を経て改心し功徳を積んで救済されるご都合主義的な物語がこの上なく素晴らしく感じる。原作はルター派牧師によるものだそ>>続きを読む
リーリー・ソビエスキーとアルバート・ブルックスの芝居とビジュアルのコントラストがとても魅力的だし、もうひとつの『ゴーストワールド』といった風情のプロットに惹かれたのだけど、ちょっと残念な感じが拭えない>>続きを読む
この映画の中で、え?と思ったのは日本への原爆投下が決定するシーン。アメリカ一般市民に浸透しているいわゆる原爆神話そのままの「ここで原爆を投下しなければ日本は戦争を終わらせることができない・アメリカ国民>>続きを読む
嘘に嘘を重ねたら一人は殺人犯にされ一人は殺されたことにされてしまう。報道に踊らされる群衆は私刑に沸き立つ。本人らが出てきても誰も本人とは思わない、という脚本がよく出来ているスラップスティック喜劇で、皆>>続きを読む
年度末のがちゃがちゃで物事が始まる前に気ばかり急いて文句ばかり言ってぴりぴりしている。どこか期待していたものに裏切られ、考えなくても出来てたことが出来なくなる。丸腰になり何も無くなり地に叩きつけられて>>続きを読む
ミシェル・シモンを観る映画。神経質でいつもしかめ面の資産家役ミシェル・シモン(のはずが登場してすぐすれ違いざま女中の乳を鷲掴みに揉むというザ・セクハラムーブに驚く)。30年間訣別していた双子の弟ミシェ>>続きを読む
お父さん大好きサッシャ・ギトリの三代記(でも長台詞室内劇)。20年前に逃げた妻を盛大に悪役に仕立て、私生活で当時ギトリのパートナーだったジャクリーヌ・ドリュバックはしっかりアップで撮る。ドリュバックが>>続きを読む
序盤からうとうとしてしまった。ギトリ主演作品定番の長台詞室内劇だなーと思いきや、最初のシークエンスを終えたギトリの部屋がそのまま舞台セットとなるシークエンスがめちゃくちゃ面白かった。先程まで部屋にいた>>続きを読む
省略が効いているし割と正攻法というか破綻なく進行していく感じがある。17世紀の出来事がシームレスに現前するのが面白くわかりやすい。幻想的な物語だけどダニエル・シュミットとしては不可解さや頽廃美は薄めの>>続きを読む
ダニエル・シュミットのアマルコルド。「子どもでいるのは大変でしょう」イングリット・カーフェンが昔話とともに語りかける。甘美な過去、過ぎた美しい時間を思い出すだけの時間。
四半世紀前に関わった人が渋滞>>続きを読む
うわぁぁ…大変見応えある大作だった。衣裳がすごくて主役も脇役もなく煌びやかなんだけど、その衣裳の豪華さに負けないくらい撮影も演出も素晴らしかった。
イザベル役のジャッキー・モニエ登場シーンはルーカス>>続きを読む
粒子粗めのファーストショットは長谷川潔のメゾチントのようで美しい。可愛らしいアールデコ調のセットデザインや人形に扮したギミックな役者が魅力的で、ほんの少しだけコマ撮りアニメーションが入る。ほとんどスタ>>続きを読む
昔観た時のしみじみとした好さをあまり感じられなかった。こういう初期ジム・ジャームッシュぽいオフビートな映画(なのに色々贅沢)はこの時代までしか作れないものだったのかもなと思った。日本人がエグゼクティブ>>続きを読む
ふと思い出してDVDを引っ張り出してきた。奇想に溢れた素晴らしい美術と物語全体に漂うなんとも物哀しい感じが好きで初見以来時々観返している。老いたバロンがやっぱり哀れなんだよな。
この物語のバロンは、>>続きを読む
プロットだけ聞くと結構好きかもしれないと思った。普通の映画としても十分成立するはずだが、じゃあ普通の映画って、映画として成立する条件って何なんだと。監督は「映像作品」にするつもりだったとのことだが、映>>続きを読む
地道で静かな積み重ねを経て、不意に涙が込み上げてくる。およそ外連味とは無縁な地道さ。誰でも出来ることではない。『夜明けのすべて』でも感じたことで、本作の主人公ケイコ自身のありようとも重なる。
『夜明け>>続きを読む
オンラインで映画の切符買って開始ギリギリに映画館へ行ったら発券できない。スクショしか撮ってなくてメールも届いておらず窓口で確認してもらいながらスクショを見たら購入確定を押してなかった。その場で切符買い>>続きを読む
染み入るようによかった。これもスタンダードサイズ16ミリでとても美しく瑞々しい撮影。序盤の暗闇と薄明のロングショットも印象的だった。
ほとんど空っぽの冷蔵庫から出てくる野菜も思いのほか生き生きしてい>>続きを読む
固定長回しの部屋がじわじわと明るくなっていく冒頭はアピチャッポンかと。一夜ものということでアケルマン『一晩中』も想起するものの、バス・ドゥヴォスは深夜にこそ浮かび上がる社会構造に焦点を当てている。とは>>続きを読む
映画館で映画を観ることは、出自も年齢もばらばらの人たちが、ひとつの目的をもって同じ場に集まるということだった。
映画内映画を観る彼らを私たちは観ている。正面ショットの彼らがスクリーンからまっすぐ視線>>続きを読む
IMAXの音圧が苦手だが『ストップ・メイキング・センス』なら観たい。しかしじっと座って観るのは拷問でしかない!
ビッグスーツはこのライブの象徴だけど、This Must Be The Placeでデ>>続きを読む
オープニングシーンの躍動感。鶴を見上げた次に鶴視点の超ロング俯瞰。これはすごい…と思ってたらその後もずーっと、仰角、俯瞰、広角、クローズアップ、移動、クレーン、コマ落ち、マッチカット、光と影、ありとあ>>続きを読む
小津監督カラー作品のような鮮やかで鄙びた赤と新橋色、赤を引き立たせるためのショウウィンドウからの万華鏡ショットはにわかにタルコフスキーとは思えないが若く美しい。とにかくこれが卒制とは…
否が応でもラ>>続きを読む
自分の中でずっと『鏡』が最重要作品になっていた。イタリアで撮られた『ノスタルジア』はヨーロッパの艶っぽさが感じられることに違和感があり、くぐもったロシア語で国内で撮られた作品こそタルコフスキーなのでは>>続きを読む
こちらも『クィア・シネマ』で取り上げられていた作品。随分昔に観てあまり印象が良くなく(というかオードリー・ヘプバーンもシャーリー・マクレーンもあまり好みでないというのもあり)、ヘイズ・コード下でもそれ>>続きを読む
こちらも『日本侠客伝』などとともに『クィア・シネマ』で引用されている作品。これがあの有名な健さんの唐獅子牡丹か〜。助監督に降旗康男の名がある。プロットはほとんど『日本侠客伝』と同じだけど、要所要所の見>>続きを読む