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アイ・ワズ・ア・ストレンジャーの作品紹介

アイ・ワズ・ア・ストレンジャーのあらすじ

独裁政権が続くシリアで、政府軍と反政府組織との内戦が激化。シリアの医師アミラは娘と共に安全な国へ逃れるため危険な国境越えを決意する。国境を守るシリア兵ムスタファは、残虐な政府軍に不信感を抱き、命令に従う兵士であるべきか、心ある人間でいるべきか苦悩する。一方、トルコの密航業者マルワンは病弱な息子とアメリカで暮らすため、難民をギリシャ行きのボートに乗せて荒稼ぎしようとする。ファティは妻子を連れてそのボートに乗り込むが、死の危機に直面。そして嵐の海を航行する難民を発見したギリシャ沿岸警備隊のスタヴロスは、人命救助に全力を尽くすのだが──。

アイ・ワズ・ア・ストレンジャーの監督

ブラント・アンダーセン

原題
I Was a Stranger/The Strangers' Case
製作年
2024年
製作国・地域
アメリカヨルダンパレスチナ
上映時間
104分
ジャンル
ドラマ
配給会社
ハーク

『アイ・ワズ・ア・ストレンジャー』に投稿された感想・評価

kuu
3.8
『アイ・ワズ・ア・ストレンジャー』
原題または英題 I Was a Stranger
製作年 2024年。上映時間 104分
映倫区分 G
製作国 アメリカ・ヨルダン・パレスチナ合作

シリア内戦の長きにわたる戦禍を逃れるため1400万人が国外避難を余儀なくされたという現実に着想を得て、紛争により引き裂かれた家族と彼らを取り巻く人々の姿を多角的に描いた群像ドラマ。シリア、トルコ、ギリシャ、アメリカの4カ国を舞台に、5つの家族の人生が交差する物語を5章構成で描き出す。

今作品は、過酷な戦時下の人間模様を冷徹かつドラマチックに掬い上げた作品でした。今作は単なる戦争アクション映画の域を超えた深遠な人間ドラマとして感銘をもたらしてくれました。キャスティング面においては、派手な大物スターの存在感のみに頼るのではなく、圧倒的なリアリティを醸し出す実力派の俳優陣が集結した感じかな。極限状態における人間の微細な表情の変化や、揺れ動く感情を体現した演者たちの迫真の芝居は、胸を強く打った。映画の背景にある製作陣の意図を考察すると、特定の歴史的・政治的文脈を過剰に際立たせるのではなく、普遍的な戦場に置かれた人間の倫理観に光を当てようとする明確なビジョンが見えてきます。

戦争をモチーフにした作品において、政治的なイデオロギーや国家間の対立構造に焦点を当てすぎると、往々にして、どちらの陣営が正義であり、どちらが悪なんか?っていう泥沼の二元論に陥りがちやけど、今作が提示する視点はまったく異なるかな。国家ちゅう巨大な枠組みを剥ぎ取り、そこに生きる個の人間の葛藤に焦点を絞り込んでいるからやと。
作中には、敵味方の区別なく眼前で傷ついた人々の治療に奔走する医療従事者や、上層部からの残虐な命令と自らの内に残る人間性との間で激しく苦悩する兵士たちが登場します。戦火っていう異常事態において、軍服の色や所属に関わらず、誰もが固有の生活や感情を持った一人の人間として苦しんでいる様子が淡々と描写され、国家の立場を越えた不変の人間愛と極限の葛藤こそが、今作の真の骨組みと云えるかな。

また、この映画が突きつける最もリアルな恐怖は、爆風や銃声といった物理的な戦闘シーンの迫力そのものではなく、それまで当たり前のように存在していた穏やかな日常が、ある日突然一瞬にして破壊されるって非情な現実。
昨日の夕食の風景や家族との会話といった身近な安全が根こそぎ奪われ、命からがら逃げ惑う避難民、ディスプレイスド・パーソンズとならざるを得ない絶望。この不条理な変容こそ、戦争ってイカれた事象がもたらす最大の悲劇であり、本質的な罪深さやと思う。当たり前の平和を維持することがいかに奇跡的で尊いものであるかを、映画は視覚的・心理的な説得力をもって痛感させてくれる。

さらに今作は、巨大な時代のうねりを前にした無力な個人の存在に光を当てて、戦争という巨大な暴力を前にして、一人の一般市民や個人の兵士にできることには限りがあり、構造そのものを止めることは叶わない。しかし、この作品は無力さに打ちひしがれて諦めるのではなく、それでもなお、目の前にいる誰かのために何ができるのか?って切実な思惟を投げかけている。
目の前の負傷者に手を差し伸べること、一杯の水や温かい言葉を分かち合うこと。システムや国家の理屈に飲み込まれず、一人の人間として目の前の他者に温もりを差し出す小さな一歩にこそ、暗闇の中の希望が宿る。

政治的な勝敗や陣営の正当性という不毛な議論を脱ぎ捨て、どこまでも個人の尊厳と日常の尊さを謳い上げる今作品は、混沌とした時代を生きる者にとっても、深く静かに心に残り続ける一作であるに違いない。


独裁政権が続くシリアで、政府軍と反政府組織の内戦が激化した。シリアの医師アミラは娘とともに安全な国へ逃れるため、危険な国境越えを決意する。国境を守るシリア兵ムスタファは残虐な政府軍に不信感を抱き、命令に従う兵士であるべきか、心ある人間でいるべきか苦悩する。トルコの密航業者マルワンは病弱な息子とアメリカへ移住するため、難民をギリシャ行きのボートに乗せて金を稼ごうとする。詩人のファティは妻子を連れてそのボートに乗り込むが、死の危機に直面する。ギリシャ沿岸警備隊のスタヴロスは嵐の海を航行する難民を発見し、人命救助に尽力するが……。映画プロデューサーで人道支援活動家でもあるブラント・アンダーセンが、2020年に手がけた短編映画「Refugee」を原点に自ら長編初監督・脚本・製作を手がけ、丹念にリサーチを重ねて撮りあげた。短編映画「Refugee」でも同役を務めたヤスミン・アル・マスリーが医師アミラ、オマール・シーが密航業者マルワンを再び演じた。
第74回ベルリン国際映画祭正式出品作品。
2014年頃のシリア。内戦に巻き込まれた人々の避難の道を軸に、軽々しく人の命を奪く権力者や軍隊、避難する人々を助ける人。実話を元に構成されたエピソードの連続です。ただ、実際に起きていることは、もっと残酷で無慈悲な出来事だと考えているので、少しヒューマンドラマに寄せてしまっていて、内戦の酷さ、喪失感が弱く感じてしまう。

ただ、空調の効いている映画館なのですが、最初から最後まで、緊張感で汗をかいていた。

『LOSTLAND』や『オールド・オーク』、『シラート』など、観た作品が、同じ世界で繋がっている感覚に捕らわれる。もう少し平和な世界にならないものか。そして、今の日本の動向は、この世界に近づいていて、他人ごとではない。
2026年6月28日@京都シネマ
2011年から続いたシリア内戦をベースに、紛争によって引き裂かれた家族と彼らを取り巻く人々の姿を多角的に描いた群像劇。
誰しもが、一見“善人”のように見えても“悪どい”部分があったりするし、非情に見えても他への思いやりを持っていたりする。内戦・紛争の極限状態の中で、そんな人間の持つ“多面性”を切れ味鋭く描いていく。
一本のストーリーラインを、登場人物それぞれの目線から見た内容で綴る連作オムニバス的な構成で、敢えて時系列を前後させたり、そのパートの重要なシーンをバツっと切ったりと、“繋ぎ”の部分の見せ方が非常に巧い。
前半の爆撃にさらされた街の描写が「どうやって準備して撮ったんだ⁈」と、思わせるほどリアル。そして冒頭のシェークスピアの一節と、その後シカゴの遠景から映り込んでくる“トランプタワー”が非常に象徴的で印象に残った。
決して“他人事”ではない。

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